表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拙者、お客様は神様だと申したはず! ~令和のバイトリーダー、うっかり江戸で天下泰平(主に接客面で)を目指す~  作者: ストパー野郎
第一部 ~バイトリーダー、城下を騒がす! おもてなし改革と七転八倒の毎日~
2/30

第二話 お客様の笑顔を追求する一介のサービスマンの巻

「目安方筆頭、栗田謙信、ただいま着任いたしました! 皆様、よろしくご指導ご鞭撻のほど、お願い申し上げます! 本日より、当藩の『顧客満足度向上』と『業務効率化』のため、全力で邁進いたします! 目指すは『日本一お客様を大切にする藩』でございます!」


 新設された「目安方」の小さな執務室(という名の、元物置を掃除しただけの部屋)で、謙信はただ一人の部下となった岩田権左衛門を前に、高らかに所信表明を行った。ちなみに藩主からは「目安箱の管理と領民の声の吸い上げ、及び藩政への具申」という真っ当な職務を与えられている。勝手に「顧客満足度向上」などとつけているのは謙信自身だ。


「……栗田。その『こきゃくまんぞくど』とやらは分からんが、お主の言いたいことは『民の声を聞き、藩を良くする』ということだろう。それは結構だ。だが、その妙ちきりんな言葉遣いはどうにかならんのか。聞いているこっちが疲れる」


 権左衛門は、どっかりと胡座をかきながら、新しい肩書――目安方次席心得(仮)――が書かれた札を眺め、深々とため息をついた。完全に巻き込まれ人事である。


「岩田先輩、いえ、権左衛門殿。言葉は『ブランディング』でございます! 我々『目安方』の先進性と革新性をアピールするためには、キャッチーなフレーズが不可欠なのでございます! 例えば、『目安方――あなたの声が、明日を創る。』なんていかがでしょう!」


「却下だ。それより、具体的に何をするつもりだ。まさか、毎日城下で大声で挨拶回りをするだけではあるまいな」


「もちろんでございます! まずは『現状分析アズイズ』から! 藩の財政状況、各部署の業務内容、そして何より『藩士及び領民の皆様のニーズ』を徹底的に調査いたします!」


 謙信はどこからともなく、大量の筆と紙(もちろん藩の備品)を取り出し、目を輝かせた。その姿は、新規プロジェクトに燃える意識高い系社員そのものである。


 最初のターゲットは、藩の財政であった。勘定方の帳簿を借り受けた謙信は、数日間にわたり部屋にこもり、数字と格闘した。令和のコンビニ店長代理として、売上データ分析や在庫ロス計算、人件費管理などを嫌というほどやらされた経験が、ここでまさかの形で活かされる。


「むむむ……これは……『機会損失』と『不要在庫』の山でございますぞ!」


 帳簿を睨みつけていた謙信が、ある日突然叫んだ。


「どうした、栗田。また腹でも下したか」


 書き物の練習をしていた権左衛門が、顔を上げる。


「権左衛門殿! 大変です! 当藩の財政、いわば『店舗経営』に、改善の余地が山ほどございます! 例えばこの『武器購入費』! ここ数年、大きな戦もないのに、毎年同じ量の矢や鉄砲玉を購入しております! これは過剰在庫! 『デッドストック』でございます!」


「馬鹿者。武士たるもの、いつ何時戦が起きても良いように備えるのは当然であろうが」


「もちろん『リスクヘッジ』は重要です! しかし、適正な『在庫回転率』を考慮せねば、限りある予算が圧迫されます! 使われない矢は錆び、鉄砲玉は湿気る! これは『品質劣化』であり、結果的に『廃棄ロス』に繋がります! 定期的な棚卸と需要予測に基づいた『発注計画』こそが、賢い『コストマネジメント』なのでございます!」


 早口でまくし立てる謙信に、権左衛門は頭が痛くなるのを覚えた。しかし、言っている内容は、何となく理解できる気もする。


 謙信は止まらない。


「さらにこちらの『修繕費』! 城壁の補修、武家屋敷の修繕……どれもこれも場当たり的! 定期的な『メンテナンス計画』を立て、予防保全を行うことで、結果的に大きな出費を抑えられるはず! 『PDCAサイクル』を回し、継続的な『業務改善』を行うのです!」


「ぴーでーしーえー……もうよい。で、お主は何がしたいのだ」


「はい! まずは各部署への『ヒアリング調査』を実施し、業務の『見える化』を行います! そして、無駄な『プロセス』を徹底的に洗い出し、『業務フローの最適化』をご提案申し上げます! 目指すは『スリムで筋肉質な藩経営』でございます!」


 その日から、謙信は勘定方、普請方、武具方など、藩の各部署を精力的に回り始めた。もちろん、最初は門前払い同然の扱いだった。


「目安方だ? 聞かんな。新参者が何を嗅ぎ回っておる」


「我らの仕事に口出しするでないわ、若造が」


 しかし謙信は、コンビニで鍛えた不屈の精神と、相手の懐に入り込むのが妙に上手い「接客術」で、徐々に情報を引き出していく。


「皆様の日頃のご尽力、誠に頭が下がります! いやあ、この帳簿の緻密さ、まさに職人技ですね! ところで、この『予備費』の項目、もう少し具体的に『費目の細分化』をすると、より『経費の透明性』が増すかと思うのですが、いかがでしょう? あ、こちら、拙者特製の『肩こり解消ツボ押し棒』でございます。どうぞお使いください!」


 おかしな言動と妙な贈り物、そして何故か的を射た指摘に、古参の武士たちも徐々に心を開き(あるいは諦め)、謙信の調査に協力し始めた。


 謙信の「業務改善提案」は、藩内に小さな波紋を広げた。


 例えば、納屋に山積みになっていた古い武具や使途不明の道具類。「これは『不良在庫』です! 『整理・整頓・清掃・清潔・躾』の5Sを徹底し、『スペースの有効活用』を図るべきです!」と叫びながら、自ら率先して片付けを開始。埃まみれになりながらも、「先入れ先出しの徹底! ロケーション管理の導入!」と指示を飛ばす。結果、納屋は見違えるように綺麗になり、埋もれていた貴重な品が発見されたり、作業効率が上がったりした。


 また、藩の特産品である「相馬焼そうまやき」の販売不振に対しては、「もっと『マーケティング戦略』を練るべきです! 『ターゲット顧客層』を明確にし、『ブランドイメージ』を構築するのです!」と熱弁。


「例えば、『相馬焼~あなたの食卓に、武士もののふの魂を~』というキャッチコピーはいかがでしょう! そして、江戸の富裕層向けに『限定生産・シリアルナンバー入り・藩主の御墨付き』といった『付加価値』をつけるのです!」


 さらに、「江戸の百貨店…いえ、大店おおだなでの『実演販売イベント』も効果的です! 藩主自ら絵付け体験などを行えば、『メディア露出』も期待できます!」


 藩主・昌胤は、謙信の奇抜な提案に目を丸くしつつも、「…面白い。やってみるか」と意外にも乗り気になった。結果、江戸での相馬焼の知名度は若干上がり、注文も少し増えたという。ただし、藩主が慣れない絵付けで腰を痛めたのはご愛敬である。


 藩士たちの「福利厚生」にも、謙信は斬り込んだ。


「藩士の皆様の『モチベーション向上』なくして、藩の発展はございません! まずは『職場環境の改善』から!」


 謙信は「藩士意識調査アンケート」と銘打った(もちろん手書きの)質問状を配布。内容は「日々の業務で困っていること」「藩政に対する要望」「上司に言いたいこと(匿名可)」など、かなり踏み込んだものだった。


 集まった意見の中には、「昼餉の握り飯が小さい」「休憩時間がもっと欲しい」「岩田権左衛門殿の小言が長い」といったものから、「もっと給金を上げてほしい(切実)」というものまで様々だった。


「ふむふむ、皆様、様々な『ストレス要因』を抱えていらっしゃるようですな。これは『メンタルヘルスケア』の観点からも重要案件です!」


 謙信は、藩の厨房に「栄養バランスを考慮した献立の提案」を行い(「カロリー計算とPFCバランスが重要です!」などと説明したが、料理人には全く通じなかった)、足軽たちの訓練場に「簡易休憩所の設置(麦茶飲み放題付き)」を提案し、さらには「月間MVP(Most Valuable Samurai)制度」の導入を具申した。


「毎月、最も活躍した藩士を表彰し、『インセンティブ』を与えるのです! 副賞は『殿との晩酌権』や『温泉旅行券(藩内限定)』などでいかがでしょう!」


 古参の家老たちからは「武士の誉れをなんだと思っておるか!」と顰蹙を買ったが、若い藩士たちからは「面白そう!」と意外な好評を得た。特に「殿との晩酌権」は、出世の糸口を掴みたい者たちにとって魅力的だったらしい。


 そして極めつけは、謙信が企画した「相馬中村藩・第一回藩士大運動会~汗と涙とチームワークの祭典~」である。


「藩士間の『コミュニケーション活性化』と『チームビルディング』を目的とします! 競技は『借り物競争(お題:殿の兜)』『玉入れ(敵は隣藩の藁人形)』『二人三脚リレー(上司と部下ペア限定)』など、盛りだくさんでございます!」


 準備段階から、「借り物競争のお題が過激すぎる」「玉入れの藁人形がリアルすぎて怖い」「二人三脚で上司と足がもつれて転倒、負傷者続出」など、トラブルが頻発したが、当日はなぜか大いに盛り上がり、藩士たちの間に奇妙な一体感が生まれたという。岩田権左衛門は、部下の謙信と二人三脚に出場させられ、ゴール直前で派手に転倒し、数日間腰をさすっていた。


 そんな謙信の「目安方」としての活動が軌道に乗り始めた矢先、新たな騒動が舞い込んできた。


 隣接する磐城平藩いわきたいらはんとの間で、かねてから係争中であった山林の境界線を巡る問題が再燃したのだ。雪解け水の水源地にも関わるため、両藩にとって譲れない問題である。


 磐城平藩から、高圧的な態度の使者が数名、相馬中村藩に乗り込んできた。


「此度の件、相馬藩側の明らかな越境行為である! 速やかに非を認め、当該山林の権利を放棄されよ! さもなくば、幕府に訴え出るも辞さぬ!」


 使者の一人、見るからに切れ者の郡奉行・片桐主膳かたぎりしゅぜんが、冷徹な目で藩主・昌胤を睨みつける。評定の場は、凍り付いたような緊張感に包まれた。


 家老たちは蒼白になり、昌胤も厳しい表情で押し黙っている。下手に刺激すれば、本当に幕府沙汰になりかねない。そうなれば、外様である相馬藩の立場は非常に危うい。


 その時、末席に控えていた謙信が、すっと立ち上がった。


「お待ちください、皆様! そして磐城平藩の使者の皆様! まずは、遠路はるばるお越しいただき、誠にありがとうございます! この栗田謙信、目安方筆頭として、皆様を心より『歓迎』申し上げます!」


 いつもの調子で、深々とお辞儀をする謙信。


 片桐主膳は、眉をひそめた。


「何だ、この小童は。今は真剣な外交交渉の場ぞ。ふざけておるのか」


「滅相もございません! 拙者は、いかなる時も『お客様』への感謝の心を忘れないのがモットーでございます! 片桐様、皆様、長旅でお疲れでございましょう。まずは当藩自慢の『薬湯』と『地酒』で、旅のお疲れを癒していただきたく存じます。交渉事は、それからでも決して遅くはございません。ささ、こちらへ!」


 謙信は、有無を言わさぬ笑顔と巧みな身振りで、あっけに取られる片桐主膳一行を、評定の間から別室の接待用の広間へと案内してしまった。広間には、すでに湯気を立てる檜風呂(もちろん藩の施設)と、美味そうな酒肴が用意されている。全て、謙信がこの日のために「おもてなしプラン」として事前に準備していたものだった。


「さあさあ、ご遠慮なく! こちらの湯は、当藩の秘伝の薬草を数十種類配合したもので、神経痛、腰痛、肩こりに効果てきめん! まさに『究極のリラクゼーション』でございます! そして湯上りには、キンキンに冷えた『地酒・夢幻むげん』をどうぞ! フルーティーな香りとスッキリとした後味で、いくらでも飲めてしまうと評判なのでございます!」


 片桐主膳は、あまりの展開に言葉を失っていた。他の使者たちも、目の前の風呂とご馳走に、ゴクリと喉を鳴らしている。


「……我らは、そのような歓待を受けに来たのではない。あくまで交渉に……」


「もちろんでございます! ですが片桐様、『良い仕事は、良い休息から』と申します! まずは心身ともにリフレッシュしていただき、最高のコンディションで交渉に臨んでいただくことこそ、お互いにとって実りある結果を生むと、拙者は信じております! さあ、まずは一献!」


 謙信の勢いに押され、そして目の前の魅力的な誘惑に抗えず、片桐主膳一行は、結局その日は風呂に入り、酒を飲み、美味いものをたらふく食べて、ぐっすりと眠ってしまった。もちろん、謙信はその間つきっきりで、「お酌サービス」「肩揉みサービス(オプション)」「相馬藩の歴史と文化に関する面白トーク(ただし、時々令和のネタが混じる)」を繰り広げ、彼らの警戒心を徐々に解きほぐしていった。


 翌日。すっかりリフレッシュし、二日酔い気味の頭で再び交渉の席に着いた片桐主膳だったが、どうも昨日のような気迫が出ない。


「……さて、昨日の続きだが、あの山林の件は……」


「片桐様! その前に、本日は当藩の『目安方』の取り組みについて、ぜひご説明させていただければと! 我々は『領民ファースト』を掲げ、徹底的な『業務効率化』と『CS向上』を目指しております! こちらがその『活動報告書(月次)』でございます! ぜひご一読を!」


 謙信は、分厚い報告書の束(もちろん内容のほとんどは「コスト削減」「在庫最適化」「クレーム対応事例集」など)を片桐主膳に手渡した。片桐は訳も分からずそれを受け取り、パラパラとめくる。


「む……これは……何かの帳面か? 数字が多いな……」


「はい! 全て『エビデンス』に基づいた『ファクト』でございます! 当藩では、このように『データドリブン』な藩政運営を心がけており……」


 謙信の謎のカタカナ語と、やたらと具体的な数字(「前月比15%の経費削減を達成!」など)に、片桐主膳の頭はだんだん混乱してきた。


(この男は一体何を言っているのだ……? 昨日はやたら丁寧だったが、今日は何やら小難しいことばかり……。だが、悪い人間ではなさそうだ……)


「……それで、山林の件だが」


「はい! その件につきましては、まず『両藩にとってのWin-Winの関係構築』を最優先に考えるべきかと存じます! 争いは何も生みません! むしろ、この機会に『共同管理体制』を構築し、将来的には『観光資源としての共同開発』なども視野に入れてはいかがでしょうか! 例えば、『秘境!二つの藩にまたがる神秘の森ハイキングツアー(特製弁当付き)』などを企画し、収益を折半するというのは!」


「うぃんうぃん……? かんこうしげん……?」


 片桐主膳の思考は完全にキャパオーバーだった。目の前の若者は、何を言っているのかさっぱり分からないが、とにかく熱意だけは伝わってくる。そして、提案されている内容は、よくよく聞けば、必ずしも悪い話ではないような気もしてきた。


 数日間にわたる謙信の「おもてなし交渉術(という名の情報過多とペース撹乱作戦)」の結果、磐城平藩の使者たちは、すっかり毒気を抜かれ、「まあ、一度持ち帰って殿にご相談しよう。共同管理というのも、一つの手かもしれん……。それにしても、相馬藩の酒は美味かった……」と、やや腑抜けた顔で帰路についたのである。


 境界線問題は、その後、両藩の間で何度か協議が持たれ、結局謙信の提案した「共同管理」に近い形で穏便に解決したという。


 藩主・昌胤は、この予想外の成果に驚きつつも、謙信の得体の知れない能力に改めて舌を巻いた。


「栗田……お主、一体何者なのだ……」


「はっ! 拙者はただの『お客様の笑顔を追求する一介のサービスマン』でございます!」


 謙信は胸を張った。その隣で、権左衛門は「こいつは本当に恐ろしい奴だ……」と心底戦慄していた。敵に回したくないタイプナンバーワンである。


 謙信の型破りな活躍は、藩内に様々な影響を与え始めていた。


 岩田権左衛門は、相変わらず謙信の奇行に眉をひそめ、口うるさくツッコミを入れる日々だったが、内心ではその行動力と結果を出す能力を認めつつあった。謙信が突拍子もない提案で暴走しそうになると、「おい栗田、それはいくらなんでも無理があるだろう。まずは足元を固めろ」と現実的な視点から釘を刺すこともあり、いつしか名コンビ(主に権左衛門が苦労する方で)のようになっていた。時には、謙信の護衛として、その太刀筋で物理的な問題を解決することもあった。


 藩主・相馬昌胤や、若君の徳胤、季胤は、謙信の報告や提案を面白がり、積極的に採用するようになっていた。特に若い徳胤と季胤は、謙信の使う「りすくへっじ」「もちべーしょん」といった言葉を覚え、こっそり使っては家臣たちを困惑させていた。「父上、この政策は少々『こすとぱふぉーまんす』が悪いのでは?」などと進言する始末である。


 謙信を気に入る、城代家老の酒井忠助は、謙信の最大の理解者として、古参の家老たちとの調整役を一手に引き受け、彼の活動を陰ながら支えていた。「栗田のやることは型破りだが、藩のためを思ってのこと。長い目で見てやってくだされ」というのが彼の口癖だった。


 若い藩士たちの間では、謙信は一種のカリスマとなりつつあった。「栗田様に続け!」「俺も目安方に入りたい!」といった声が上がり、謙信が時折開催する「業務改善ワークショップ(という名の雑談会)」には、多くの若者が集まった。彼らは謙信の言葉を熱心にメモし、自分の仕事に取り入れようと努力した(結果、さらに混乱が広がることもあったが)。


 もちろん、古参の武士たちの中には、謙信のやり方を快く思わない者も少なくなかった。「武士の風上にも置けぬ」「あんな小僧の言いなりになるとは情けない」と陰口を叩く者もいたが、謙信が着実に成果を上げ、藩が良い方向に変わりつつあるのを目の当たりにするにつれ、そうした声も徐々に小さくなっていった。


 謙信自身は、そんな周囲の変化にあまり頓着せず、今日も今日とて新たな「改善案」の企画に余念がなかった。


「権左衛門殿! 次は『領民向けポイントカード制度』の導入を考えております! 藩の御用達の店で買い物をするとポイントが貯まり、一定数貯まると『年貢ちょっぴり割引券』や『藩主と行く!城下町散策ツアーご招待(抽選)』などと交換できるのです! これで領内経済の活性化と領民の忠誠心アップの一石二鳥を狙います!」


「……もう何も言うまい。好きにしろ。ただし、俺を巻き込むな」


 権左衛門は遠い目をして茶をすすった。


 謙信の頭の中には、さらに「相馬中村藩ゆるキャラコンテストの開催」「藩士対抗お料理バトルのテレビ中継もちろんテレビはない」「城下町BGMプロジェクト(領民の精神安定のため)」など、奇想天外なアイデアが次々と湧き上がっていた。


 その一つ一つが、新たな騒動の火種となるのか、それとも藩をさらなる高みへと導く起爆剤となるのか。それは神のみぞ知る、いや、元コンビニバイトリーダーのみぞ知るところなのかもしれない。


 彼の口癖「お客様は神様です!」の精神が、この戦国の世を生き抜く一つの指針として、相馬中村藩に(奇妙な形で)根付いていくまでには、まだ数々の試練と、それ以上の笑いが待ち受けているのであった。


(ふふふ……次は『目安箱ご意見投稿キャンペーン!採用者には豪華賞品プレゼント!』で、領民の皆様の潜在的ニーズを掘り起こすぞ! ああ、忙しい忙しい! だが、この充実感こそ、バイトリーダー冥利に尽きるというものだ!)


 令和の知識と江戸の常識が交錯する中で、栗田謙信の「おもてなし道」は、今日も新たな伝説を刻み続ける。その行く末を、藩の誰もが(期待半分、不安半分で)見守っているのであった。

ブクマと評価を頂けると作者が喜びます。本当に喜びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ