第5話 ダンジョンマスターの仕事
倉庫部屋からソルの部屋に戻って来た2人は、早速ソルによるダンジョンマスターの仕事内容の説明が始まった。
「レナ、お前は『マナ』というエネルギーについては知ってるか?」
「ええ、知ってます。魔法を使う時に必要なエネルギーですよね?」
「そうだ。そのマナエネルギーは正確に言えば生命エネルギーの一種だ。
人間や動物、植物でもいいが命が産まれると同時に大地や空気中から生き物に吸収され、
生命が生きている間生産され続け、死ぬと大地や空気中に戻るという循環が行われているんだ」
「へぇ、そうなんですか。でもそれとダンジョンマスターと何の関係が……?」
「焦らなくても良い。ゆっくり教える」
ソルは話を続ける。
「で、このマナエネルギーの循環が途絶えると大地が死んでしまう。水は涸れて作物は収穫できなくなり、放置すれば草木1つ育たない死の大地となってしまうんだ」
「マナエネルギーの循環が途絶える、ですって? そんな事があるんですか?」
「ああ。それには大抵マナエネルギーを奪う事しかしない魔王が原因だったりする。そいつを倒すと同時に大地にマナエネルギーを戻してやらなければならない。
そこで俺たちダンジョンマスターはダンジョンを造るんだ」
「大地を復活させるためにダンジョンを造る……?」
「そうだ。ダンジョンの部屋の中には大地からのマナエネルギーを増幅させて地中に返す部屋がある。それを使って大地の力を復活させるんだ。
ちなみに、その部屋から得られるマナエネルギーの結晶体がこの前渡したマナ結晶ってわけさ。他の部屋を機能させるために使ったり、結晶にして持ち歩いてカネに換えたりもするけどな」
そこでソルの話はひと段落ついた。
「何か聞きたいことはあるか? レナ」
「先生、ダンジョンマスターのお仕事は分かったんですが、そんな大事な仕事なのに何で世間の人は分からないんですか?
お父さんもダンジョンマスターは世界征服をたくらんでいる悪党だとハッキリ言ってましたし……」
「それか……地中に潜ってダンジョンを造り、魔物を召喚している。って書くと何かあくどい事をたくらんでるって思われても仕方のない事だろ?
それにダンジョンマスターが悪の道に転がり落ちた成れの果てが魔王さ。あいつらがいる以上、ダンジョンマスターも魔王と同じと思われるものさ。
事情を知らない、いや知ってたとしても首に賞金をかけてでも排除したい、って思うだろうよ。
『悪の芽は早めに摘むべし』ってわけさ」
レナは先生の話を聞いていたが、あまりいい気分ではなかった。先生の言う事が本当なら、こんなにも大事な仕事なのに周りからここまで理解されないなんて……。
「……なんか、報われない仕事ですね」
「まぁな。出来れば君みたいな子には就かせたくない仕事さ。ダンジョンからとれるマナ結晶なんかが高額で売れるから裕福な暮らしはできるけどな」
「確か緑色のマナ結晶は大金貨になりましたからね」
「まぁそれ位にはなるだろ。何でもマナ結晶やエーテル……エーテルってのもダンジョンで採れる資源だが、
それらをエネルギーにして動く機械があるらしくてその動力源として高値で取引されているそうだ。
だから冒険者は一獲千金目当てでダンジョンに侵入してくるんだよな。一発当てる事が出来ればでかいからな」
そんな感じで、ソルはレナにダンジョンマスターというのはどういう仕事なのかの説明に徹した。
「よし、そろそろ時間だ。今日の給料だ」
そう言って彼はカネをレナに渡す。酒場でウェイトレスとして働くのよりだいぶ多めの額だった。
「お給料……渡してくれるんですか? 普通弟子入りだったら私が月謝を払わなくてはいけないのに」
「俺がお前に要求するのは習い事じゃなくて、しっかりと仕事をしてくれることだ。研修期間中もしっかりと給料は払うよ。
明日から朝9時を告げる教会の鐘が鳴る前にここへ来てくれ。お前は既にこのダンジョンのサブマスターとして登録してあるから、中に入っても召喚獣も部屋も攻撃してこないから大丈夫だ」
「分かりました。では明日からもよろしくお願いしますね。先生」
そう言ってレナはダンジョンを去り、自宅へと戻っていった。




