第32話 リハーサル
「プッ! プハハハハ! ヒーッ! ヒーッ! お、おかし……プヒヒ、ヒヒハハハ!」
アルフレッドの冒険を撮影するためのダンジョンにソルとレナがやってきたが、試しに「ダンジョンマスターS」の格好に着替えると、弟子が大爆笑していた。
「レナ、コレがそんなにおかしい恰好なのか?」
「す、すいません。でもおかしくて……ウププフハハハ! いや、大丈夫です、大丈夫です。慣れてきましたから。ふー」
アルフレッドのファンで、この服を見ただけで大爆笑してしまう。どうやらレナは普通の町娘と比べて、どこかズレてる部分があるらしい。
「くれぐれも撮影中は俺と師弟関係なのはばらすなよ。そりゃ安全を考えて撮影したフィクションだとは言ってるけど、知られたら露骨なヤラセを疑われるからな」
「はい、そこは分かっているつもりです」
「じゃあ入り口に行ってくれ。アルフレッドと打ち合わせやリハーサルをしてくれないか?」
「分かりました。じゃあ行ってきますね」
レナはダンジョンの入口へと向かう。もちろん今回の撮影の主役であるドラゴン2匹も一緒についていく
(レナの奴、本番では爆笑しねえだろうなぁ?)
ソルにはほんの少しの不安があったが、まぁ彼女の事だから何とかなるだろう。とは思っていた。
「本番では傭兵と一緒にダンジョンに潜るんだ。そしてダンジョンマスターSとの戦いでドラゴンを前面に出して戦わせる、っていう予定だ。
レナちゃんは前線に出なくていい。安全な場所から高みの見物みたいな感じになっちゃうけど、万一にも傷つけるわけにはいかないからね」
「一応私も戦えますけど、今回の撮影ではしなくてもいいんですか?」
「ああ、大丈夫だ。後ろからドラゴンに指示を送るだけでいいよ」
レナは本当は勇者「双剣のディラス」仕込みの、並の傭兵では歯が立たないほどの剣技の使い手なのだが……。
ドラゴンを使役しているのを見ているとテイマーが本業だと思われても仕方のない事だ。
2人は入り口からソルことダンジョンマスターSと戦う予定の部屋までの道のりを実際に歩いて確認する。
「この道を歩いて……ここを曲がって……この部屋だ。この部屋でソルと戦う事になる。大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です。この部屋に来ればいいんですね。ドラちゃん、ゴンちゃん、分かった?」
「「ガァッ!」」
「分かった。って言ってるみたいです」
「そうか。んじゃあ明日本番に入っても大丈夫かな?」
「ええ。大丈夫です」
打ち合わせはバッチリだ。話を終えてアルフレッドはレナを連れてソルの部屋まで向かう、その途中……。
「多分レナちゃんはそろそろ嫁に行ってもおかしくない年齢じゃないの? 行き遅れると大変なことになるよ? ボクみたいになっちゃうから。
ボクなんて25過ぎても嫁が来ないし、領地も爵位も無い「穀潰し」だよ? 花の命は短いんだからキレイなうちに嫁さんになった方が良いぞ」
「お父さんみたいですねアルフレッドさんは。お父さんも最近見合いをしないか? っていろいろ言って来るんですけど、これだ。って決めた人は既にいるので」
「教えてはくれないかい?」
「……今は言う勇気がないので内緒にしてくれませんか? それにしてもアルフレッドさん、色々と気遣いしてくれるおじさんみたいですね」
「!! そ、そうか。まぁレナちゃんの年からしたらそう見えてもおかしくないかなぁ」
アルフレッドは何ともないそぶりを見せたが、まだ26なのに「おじさん」と言われてショックを受けたのは内緒だ。
リハーサルを終えた夜……ダンジョンを守る召喚獣の寝床に、彼らはいた。
(明日は撮影か。ソルの奴をボコボコにするいい機会だな)
(ああ。マスターに好かれてるけどちょっと痛い目に遭わせて調子にのってる所を再教育しないとな)
ダンジョン内に設けられた召喚獣の寝床および待機部屋。そこでドラとゴンが話をしていた。
話、といっても口で会話するのではない。人間には感知できない能力で直接頭の中に意思を流し込む。という「会話」だった。
(言っとくけど殺すのは無しだからな。あくまでちょっと痛めつけるだけだぞ)
(分かってるって。殺しちゃったらマスターにどう言われるか分かったもんじゃないからな。まぁいいや、明日のために早く寝ようぜ)
(オッケー分かった。お休み)
明日は面白い1日にしようぜ。という共通認識の元、2匹は眠りについた。




