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大地のためのダンジョン運営  作者: あがつま ゆい
ダンジョンマスターと魔王
21/70

第21話 直接対決

火鼠(ひねずみ)の構え』


 彼女が念じると両腕から炎が燃え出し、拳を包む。

火鼠(ひねずみ)の構え』は決して燃える事の無い皮を持つ「火鼠」の力を授かる能力で『炎拳のレイラ』という2つ名の由縁だ。


「行くぞぉ! ソル!」




「!! 速い!」


 ソルは相手の動きが前よりも俊敏になっているのが分かる。火鼠の構えは肉体を熱し、活性化させる効果もあるのだ。単純に炎をまとった攻撃が繰り出せるだけじゃない。


「レナ! 10秒だけ支えられるか!?」

「はい! やってみます!」


 ソルはレナを最前線に立たせ、自分は奥義を繰り出す。


虚無きょむの構え』


 直後、戦場からソルの気配が消えた。





(!? ソル!? どこだ!?)


 レイラは急にソルの気配が消えたことに戸惑うが、目の前に桃色の髪をしたダンジョンマスターの片割れがいる事に瞬時に頭を切り替え立ち向かう。

 自分と同じ両手で戦うのだが動きが速く、なおかつ繰り出す攻撃の1つ1つが急所を的確に狙ったもの。かなりの手慣れだ。


(可愛い顔してやるじゃないか……)


 この後戦いが思いもよらない形で終わることなど、知らぬまま彼女は戦っていた。




「シャアアアア……」


 レナが召喚したドラゴンは硬くてしなやかな鱗に覆われていたが、それでも剣で切られ攻撃魔法を食らうとそれを貫いて肉体にダメージが入る。

 特に魔術師の冒険者はドラゴン相手だと魔法ぐらいしか有効ではない、と判断したのか集中的に攻撃魔法を当てていた。

 彼が次弾を放とうとした、次の瞬間!




「ぐえっ!」


 ソルが『虚無きょむの構え』で気配を消し、後ろにいた魔術師に深々とした傷を負わせる。鮮血が噴水のように噴き出た。


「!!」


 イリーナが気づくも遅すぎた。致命傷で魔術師を治療することはもうできない事と、ソルの接近に気づけなかった。この2つの意味で。

 彼女が身構えるよりも先にソルは『虚無きょむの構え』を解除し、彼女の背後に回り、首筋に刀を当てた。




「!! 姉さん!」

「イリーナ! ソル、貴様!」


 さすがに最愛の妹を人質に取られるとなると、あまり強気に出ることは出来ない。


「何が目的だ!?」

「別に、何かするつもりもない。ここを去って2度と俺のダンジョンに来ないと誓えるなら追撃も何もしない。妹さんも返すよ」

「なんだと!? 情けをかけるつもりか!?」

「そうじゃない、俺とお前らとは同類だからな。親の仇を追う人間の気持ちはよく分かる。俺だって両親を魔王に殺されて、その復讐旅の最中なんだ」

「!!」


 そこでレイラの身体がピクリ、と反応する。俺とは同類……その言葉がプスリと心に刺さる。




「どうするんだ? 引き下がるか? それとも妹さんが死んでも良いのか?」

「……わかった。もうここには来ないよ。それでいいんだろ?」

「ああ。それでいい」


 そこまで言うと、ソルはイリーナを開放した。




「姉さん!」

「イリーナ、無事でよかった! ソル、アンタまさか……」

「早く去れ。じゃないと今度こそ本当に殺すぞ!」


 命あっての物種、とでも言うべきか? 冒険者一行は引き上げていった。




 ダンジョンを出てしばらくして……


「イリーナ、何か姉さんに言いたい事でもあるのか?」

「うん。あのダンジョンマスター、姉さんと同じ目をしてた」

「……分かるの?」

「私は産まれた時からずーっと姉さんの妹をやってるんだよ? それ位分かるわ」

「そうか……そうだよな……」




『俺とお前らとは同類だから』

 その言葉が引っ掛かって外れない。

 アイツも、まさか……。

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