第16話 祝勝会
魔王を討伐した翌日の夕方、城下町にある王室御用達の国内最高グレードな料理店に、討伐戦に参加したソルを含めた兵士たちが集まっていた。
お揃いの武器や防具は身に着けておらず皆私服、それも祭りのときにしか着ない晴れ着での参加だ。
テーブルには普段食ってる、スープに浸してふやかさないと食えない冷めて硬い物とは完全に別物の、焼きたてでもっちりとしたフワフワなパンや、
厨房から運ばれて来てもなお湯気が立っている程出来立ての肉料理、さらにはエールの入った樽が会場内に持ち込まれていた。
いわゆる「祝勝会」だ。
討伐隊メンバーはエールが注がれたジョッキを片手に、我らが騎士団長のあいさつを聞く。
「みんな、昨日の魔王討伐、実にご苦労だった。おかげで我が国の脅威は去った。君たちのおかげだ、ありがとう! 今日は大いに食べて飲もうではないか!
我らの勝利に……乾杯!」
「「「「「カンパーイ!」」」」」
参加者は一斉にエールをがぶがぶと飲む。混ぜ物もなく薄められてもいない普段は飲むことができない上物だ。
「タダで酒と飯が食える」のもあって討伐隊員は皆大満足だ。次々と出て来る料理はあっという間に兵士たちの腹の中へと消えていく。
「ソル! お前は本当に良くやってくれた! 感謝するぞ」
「ありがとうございます騎士団長殿。そうおっしゃってくれるのなら報酬分の仕事はキッチリとやったって事で良いですかね?」
「何を言う、お前は想像以上の仕事をやってくれたぞ、良い仕事ぶりだった」
「騎士団長殿からそこまでお褒めの言葉をいただけるとは光栄なことですなぁ」
ライネルはお世辞抜きにソルの活躍を褒める。それほど彼は見事な活躍をしてくれたからだ。
魔王のダンジョン内でも十分働いてくれたし、親玉に決定的なダメージを与えたのも彼だったからだ。
「団長殿、そう言えばよその国ではダンジョンマスターを魔王対策で雇ってる。っていう噂を聞いたんですがこの国はどうなんでしょうか?
ソルの奴、国のために結構働いてくれたし決してデタラメな話でもなさそうなのですが……」
「それは無さそうだな。国王陛下はダンジョンマスターを利用する気はあるが雇う気は無いそうだ」
「うーんそうですか……惜しいですね」
『コソ泥を捕まえるには泥棒を雇うのが一番。なぜなら泥棒はコソ泥共の手口を全て知り尽くしているから』
この理屈で国の中には魔王対策にダンジョンマスターを雇ってる所もあるそうだ。
ただこの国の国王陛下はその気になれないので、実現は難しそうだ。
祝勝会が始まってしばらく経ち、日没の時間帯になると……
「おーい! 酒だ酒! 酒が足りねーぞ!」
酒を飲みすぎて羽目を外す連中が現れ始めた。
「オイ、お前飲み過ぎだぞ!」
「何言ってりゅんれすか団長殿! オレはそきょまで酔っちゃひねえれひゅよ!」
「はい兄ちゃん、そこまでだ!」
そんな酔っ払い相手にソルの手刀、いわゆる「チョップ」が後ろ首に刺さる。
「ぐえ……」
酔っていたのもあって直撃を食らい、相手は1発で撃沈した。
「みんな、祝勝会とはいえ羽目を外すのは辞めとけよ。飲み過ぎには注意しろ、団長殿も見ているからな」
「……」
これが良い教訓になったのか、その日の飲み会では羽目を外す連中はそれ以降出てこなかった。
その後参加者たちは程々に酔いを楽しみ、解散となった。
「魔王、か」
祝勝会の帰り道。ほろ酔い状態でダンジョンまで帰るソルは、ある計画について頭を巡らせていた。
自分の立てた計画に間違いはない、魔王にとってはこの国はおいしい場所だ……という予想にズレは無かった。
この国はマナエネルギーが潤沢で、ソルのダンジョンもそれに関わっている。
だからこそ、今回の件みたいにこの国の豊富なマナエネルギーを狙う魔王がやって来るはずだ。
その中には、ソルが追っている魔王もいつか必ず出て来るはず……そのために彼はこの国にダンジョンを作って牙を研ぎ続けているのだ。
いつか来る復讐の機会に備えて、彼は待ち続けている。両親を殺した魔王「魔王デイブレイク」を。




