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大地のためのダンジョン運営  作者: あがつま ゆい
ダンジョンマスターと魔王
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第11話 配信開始

 時刻は昼……多くの者が昼食をとり休憩している頃。彼らは仕事を始めようとしていた。


「配信用のダンジョン」最深部にある部屋。そこの木箱にソルの配信用の衣装がしまわれていた。

 怪盗をイメージして作った、黒と深い緑色に染められた服に着替えてマントを羽織り、頭には黒いシルクハットをかぶり、顔には白い仮面を付ける。

 鏡に映るその見た目は「仮面舞踏会」にでも参加する貴族のような格好だ。


 ダンジョンマスターS。

 配信ではソルはそう呼ばれている。

 話の筋書きを頭に入れた状態で挑戦者を待った。




 同時刻……戦士2名に僧侶1名、それに人足(にもつもち)の傭兵たちはアルフレッドが準備するのを待っていた。人足以外はフル武装で、この配信にどれほど気合いを入れているのかが見ただけでも良く分かる。

 アルフレッドも鉄製の胸当てをつけ、革製の防具で手足を守っている。


 傭兵たちの雇用主はダンジョンの入り口前で「使い魔生成に必要な材料と道具一式」を取り出し、術を唱え始める。握りこぶし大の肉の塊が渦を巻き、やがてコウモリのような羽と耳が生えた、ピンポン玉サイズの空飛ぶ目玉とでもいうべき姿になった。




 造り出したのは目玉で見て、耳で聞いた映像を他所へ送信できる人工使い魔。

 食べ物を消化吸収するための内臓が無く、食事がとれないため寿命は地球で言う1時間程度のはかない命だが、見たり聞いたりしたものを他の場所でも見れる機能を持っている。


 作成者とは意識を共有しており、作った人の意識で向きや高度を操れる最新式の物だ。

 まだ一般的には普及しておらず非常に高価で、主に規模の大きな国の軍隊が訓練等に細々と利用している段階だ。


「よし。あとはサエヘさん、背負ってるものをこっちへ」


 人足の傭兵が背負っている地球で言うランドセル大の荷物……映像の転送装置にさっき生成した使い魔を触れさせると、淡い光が発せられる。

 使い魔と映像転送装置とがつながった証拠だ。




「よーし、準備OK! 始めるぞ」


 アルフレッドが指示を出して「撮影」を開始する。


「皆さんこんにちは。これから『アルフレッドの冒険』を始めます。今日もダンジョンマスターSのダンジョンに潜ってお宝を探しちゃいます。今日も最後まで見てね!

 あ、そうそう。このお話はフィクションだからボクに憧れて本物のダンジョンに潜っちゃダメだぞ! じゃ、行ってきまーす!」


 アルフレッドの威勢のいいあいさつの後、一行はダンジョンへと潜っていった。

 傭兵たちにとっては自分たちを雇ってくれる王侯貴族に「直接」アピールできる場なので、気合も士気も十分入っている。




 一行は「生産部屋」マナエネルギーを増幅する部屋の中に入ると、中にはダンジョンマスターSとその手下である人虎1体と人狼1体が待っていた。


「やれやれ、またお前か。しつこい男は嫌われるぞ?」

「へっ、ボクは家族からも嫌われてるんだ。今更嫌いな奴が増えた所で何になるって言うんだ!!」

「全く、困ったお方だな。お前ら、行け!」


 ダンジョンマスターSの配下がアルフレッド達に襲い掛かる! 人虎が身に付けたかぎ爪の一撃が入ろうとした、次の瞬間!


「シールド!」


 傭兵と人虎の間に透明な壁が現れる。魔物の一撃はそれに阻まれ、傭兵には当たらない。




 アルフレッドは魔法の才能が有り「シールド」と呼ばれる防御魔法を使ってパーティメンバーをサポートする。さすがにミノタウロスの怪力を完全に防ぎきる事は出来ないが、それでも並みの人間の攻撃なら通さない壁をいつでも作れる。というのは敵に回したら正直やりずらく、厄介だ。

 スキを見つけた相手に攻撃しても、それを弾き返されるようでは逆にカウンターを食らう危険性も高い。


(そこだ!)


 人狼が大剣を持った傭兵のスキを見つけて身に付けたかぎ爪で襲い掛かる! が……


「シールド!」


 アルフレッドのシールドに阻まれる。

 まるで土壁を殴っているかのような感触が返って来て、手がジーンと(しび)れる。

 傭兵はそのスキを逃さない! 人狼の胸当てで守られていないむき出しの腹に剣の斬撃を入れ、倒す。




「ほほぉ、やるな。お前たち、今は引け! 態勢を立て直すぞ!」


 ダンジョンマスターSは残る人虎に対しそう指示して自分と一緒に撤退させる。もちろん事前の話の通り、近くに罠付きの宝箱を置いておくのも忘れない。


「案外ラクに勝てましたな、坊ちゃま」

「君たちが強いからだよ、さすがマリク傭兵団なだけあって実力あるね」


 配信の話を聞きつけて傭兵団から「配信で我々を使わせていただきませんか?」というアプローチが来ているのでそれにも応える。

 このリップサービスが決め手になって傭兵として雇われることもあるのでバカに出来ないものだ。




「宝箱か。んじゃさっそく……」


 アルフレッドが宝箱を開けた、その直後……。


 熱。溶岩を間近で見るかのような皮膚を焼かんばかりの強烈な熱。

 そして爆風。瞬間的だがミノタウロスすら吹き飛ばされそうなほどの強烈な爆風。

 この2つが同時にアルフレッドに襲い掛かった。


 何が起こったのか分からないまま彼は吹き飛び、部屋の端から端まで身体が飛んだ。

 防具を付けてたのと肥満体型なのが幸いしてか衝撃は防具、および腹の脂肪がある程度吸収したが、大けがだ。

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