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ビジネスでアバンチュールな関係

前回のおさらい!


この物語の主人公はブギ

酒場で変なおじさんに気に入られて仲間になったよ!

前途多難だね!


でも生きていくためにはお金が必要だから、選ぶ権利は無いよ!

ハハッ!

朝の冒険者ギルドは賑わっていた。


変なおじさんが指定した時間というのは丁度みんなが活動を始める頃合いらしい。


この国には、仕事を始める時間は指定されていない。


だが、自然と人々は集まり、同じ時間に働き始める。


みんな寂しがり屋なのだろうか。


昨日までの俺は親がくれたお金を使って昼まで寝ていた。

なんと馬鹿なのだろう。


いや、俺は悪くない。

社会が悪い。


苦手な人混みをかき分けながら、変なおっさんを探す。


ここで読者の諸君は不思議に思うかもしれないが、変なおっさんの名前がなぜ出てこないのか。


紹介したら、紹介されるものじゃないか?


そう思うだろう。


しかし、俺は人見知り。

独りの修羅なのだ。


昨日自己紹介をしてから、今日の説明を受け、変なおっさんに別れを告げるまで、俺は「はい」と「わかりました」を言うbotになっていた。


だから知らないのも当然である。

俺はbot、独りの修羅なのだ。


頭の中で独り言をブツブツと唱えていると声が聞こえた。


変なおっさんだ。

昨日の夜のおっさんが変であって、普段は普通の人かも知れないと思ったが。

やはり、朝も昼も、変なようだ。


周りの視線を感じながら、変なおっさんがいるテーブルへと足を運ぶ。


「お、おはようございます。」

どもった。


「おう、おはようさん。」

「おはようございます。」

「・・・」


変なおっさんのテーブルにはおっさんを含めて3人が座っていた。


変なおっさん。

顔がデカくて、ちょっとダンディなおじさん。

明らかに気だるげな少女。


ざっと見た印象はそんな感じだ。


ダンディなおじさんが話を始めた。

「あなたが我々の協同体に入る新しいパートナーですね。」


協同体にパートナー

含みのある言い方だが、初対面の人にケチをつけるのもおかしいだろう。


とりあえず頷いておく。


「あなたに重要なことをお伝えしておきます。」


なんだろうか。

長い長い企業紹介、いや、パーティー紹介を始めるのだろうか。


では、とおじさんが軽く話のエンジンを吹く。

さあ、この人は俺にどんな感動をくれるのだろうか。


「パーティーという概念はクソなので、我々はただ生活のために収益を得る集団だという認識を持ってください。」


what?


ハテナマークを浮かべる俺におじさんはもう一度言った。


「もう一度言いましょう。仲間だのなんだの言ってるパーティーという概念はクソです。燃えることもないので海に流してさよならしましょう。そして、こんにちはビジネスパートナー。あなたは私たちにどれだけ利益を与えてくれますか。」


開幕早々、右ストレートを食らった。

俺は今日という日は、長い長い就職活動というものに終止符をうち、少しでも温かみのある職場に迎えいれられる日だとどこかで淡い願望を抱いていた。


長い冒険。

励まし合う仲間。

旅の途中に出会う困難。

共に手を取りあい、助け合う。

友情が芽生え。

なんなら、女の子となら恋という綺麗な花が芽生えるのではないか。


そうした。淡くも濃度濃いめな期待をしていた。

しかし、その期待は打ち砕かれたので。

さらばマイフレンド。

こんにちはパートナー。


「おいおいいきなり吹かしすぎだぜ「ダン」。お前がそんなことを開幕かますから、いくら誘っても人が入ってくれねえんだ。」


「「サン」。あなたの言いたいことがわからない訳ではありません。しかし、彼には我々のことを知る権利があります。」


「どうでも良いから仕事早く終わらせようよ。」


突っ込むおっさん。弁明をするイカれたおじさん。

気怠げな少女。


おいおいこのパーティー、いや協同体、気が合っているじゃないか悪い意味で。


昨日やばいと思った俺の心は間違いじゃなかった。


今日の主役である俺を除いて会話は進む。


おいおい帰って良いか?


いやもう帰ろう。


「だから言ってるじゃないですか、勇者はクソなんです。そもそも、勇者とその仲間のパーティーに支えられたこの人類そのものがクソ。」


「おいおい、そりゃないぜ。勇者様の栄光が俺たちに今日の暮らしを与えてくれてんだ。それをクソはないと思うぜ。クソなのは、アゴで使った王様だろうがよ。」


ここで説明しておこう。


この物語にも歴史がある。


別に興味ないやつは飛ばしてくれ。

(以下、傍線部内で歴史についてまとめる。)

ーーーーーー

我々人類は神が作った。


始めは、大地、森林、海が作られたが。

それらは、小さく穏やかな変化は起こしても、刺激的で、魅力的な変化を起こすことは無かった。


そこで、生物を作り。

その中で最も知能の優れた生物として、人類が作られた。


知能が最も優れていたが、人類は、他の生物達より弱く作られ、知恵という能力がいかに生態系に作用するか、神様は実験を行った。


つまり、人類はモルモットだったわけだ。


しかし、モルモットは知恵を用いて、時間を掛けて、生態系の頂点に登り詰めた。


それを見た神様は面白がって、新しい生物を生み出した。


悪魔だ。


悪魔は人類と同等かつ、力を持ったものとして作られ。

更に人類を主食にするように作られた。繁殖力も強く、次第に力を増していった悪魔は、やがて生態系の頂点に降り立った。


物語はバッドエンドを迎えるかと思いきや。

結末による退屈を嫌う神様は人類に新しい力を授けた。


魔法だ。


さらに、これは神様も予想しなかったことだが、魔法の力を授かった一番目の人類が身体的にも強く、頭もキレる天才だった。


言わずもがな、これが勇者である。


後に、人類を仕切っていた王様に、

「おお!勇者よ!我々人類は危機に迫っている!」

なんとかかんとか、なんとかかんとか、ちんからほいという感じで。指名を貰った勇者は、優秀な仲間を集め、パーティーを作り。魔物たちを倒していった。


やがて、魔物側にも凄い強い魔王というのが現れるのだが、そこは魔王の宿命たるもの、勇者にやられ。人類に栄華が訪れた。


ところがどっこいここでも現れる神様。


もうめんどくさいよ神様。


人類強くしちゃったし、悪魔と他の動物つょくしちゃお!

えい!


という感じで、今のこの世界においては、人類の領土はごく一部となり、他の領土は悪魔と強くなった動物「魔物」がテリトリーを作りあげていた。


勇者は寿命で死に、栄華と安寧を求める人類の王様は、かつての勇者のようなパーティーを生み出すべく、人々に悪魔と魔物と戦わせる道を選ばせた。


主人公たちはその戦いの最中にいるのである。


ーーーーー


という歴史の背景を元に、人々は王様に勇者のように優秀なパーティーを作れカスどもと罵られながら生きているのである。なぜ、そんな王様が王様であるのかって?


俺は知らない、でも王様とか偉い人はどんどん腐ってくだろ。そんなもんだよ。


ということで、俺は話し合うこの3人組と別れを告げるため席を立った。

今日は美味しいものを食べて。暖かい布団で寝よう。


そして、新しいパーティーを見つけよう。

なに、また頑張れるさ。

来週くらいから。


ギルドから立ち去ろうとしている所を、変なおっさんが俺の肩を掴んだ。


「おいおい、待ってくれよー。頼むー俺たちの腐ったパーティーを助けてくれよ。」


なんだよおっさん。昨日ちょっと偉そうに真面目な質問してたじゃないか。仲間を助けるかなんちゃら。


あの時の真剣な眼差しはどうした。

変なおっさんではあったが、どこか芯の強さは感じていたのだが。


今やどうだ?ふにゃふにゃだなこの人。


てか酒臭っ!


「あのー、「サン」さんでしたっけ。俺ちょっと腹痛くなっちゃったんで。」


もちろん嘘だ。


「だいぶ長そうな戦いになっちゃいそうなんで、今日は帰ります。」


「そんなこと言って帰るつもりだろー。頼むぜ、金はしっかり渡すからよ。」


金か。そうだ金だ。

俺は親から貰った金が無くなりそうだし、他に雇ってくれそうなパーティーが無いから選んだんだ。

金無いと死んじゃうな。


「じゃあ、取り敢えず仕事の内容だけ教えてください。」


聞くだけならタダだ。内容によっては帰ろう。


「おう、そうだよ。説明してやるから、もっかい席座れ。」


さっきの席に戻る。


「はい。それでは「ダン」さん。我々の話すべき、本来最初に話すべき仕事について説明してください。」


変なおっさん「サン」が不満たらたらで言う。


「ダン」という男はやれやれと溜息をつくと。

説明を始めた。


「我々は利益を求める集団です。基本的に辺境の街で害を成す魔獣を駆除しお金を得ています。我々は元々4人の協同体だったのですが、魔法使いが抜けてしまって困っていたのです。そこで、我々は魔法使いという新しいビジネスパートナーを探していました。」


なんだろうこの「ダン」さん。

はっ倒して良いか「ダン」さん。


「あなたにはその穴を埋めて貰うために、「サン」に紹介して頂きました。魔法使いと言っても役割は様々ですが、今回は阻害系の魔法を主に使って、我々の「仕事」を手伝って欲しいのです。」


「はあ。なるほど。」


実は吾輩は魔法使いである。

名前はまだ無い。

嘘である。

ブギとかいう誰が考えたかわからない間抜けな名前がある。


俺は元々阻害系の魔法が得意だったため、今回選ばれたようだ。


魔法使いには「ダン」さんが言ったとおり、様々な役割があるが、特に需要があるのが攻撃魔法と回復魔法だ。

これらはどちらも魔法無しでは成し得ない奇跡の類であるため。需要が高い。


ところがどっこいしょ、俺はそれらの才能はあまりなく、敵を転ばすだとか、敵の目を眩ますだとか陰湿な魔法が得意だった。


これらは、魔法無しでも行えることなので、需要はそこまで高くない。無くはないが、あっても俺の捻くれた性格で更にマイナスになり、需要が無くなっていた。


「私と「サン」が敵を仕留める仕事を行い、今そこで、朝っぱらから昼寝を決め込んでいる女「イルダ」が我々の傷を治療し、あなたの護衛にまわります。」


つまり、前衛の戦士として、「サン」と「ダン」が敵を倒す。魔法使いの俺がその補助。そして、補助の補助、そして味方全員を助けるのが「イルダ」のようだ。


待て、補助するだけなら要らなくね?

俺はやっぱり帰るか?


「あの、補助するだけで良いんですか?」


それとなく、俺要らないんじゃないですかね?というアピールをする。


帰りたい。


「いえ、補助を侮らないでください。」


ダンが言う。


「我々は戦うための力があり、傷ついた時に癒してくれる仲間が居る。それは、充分に見えて、不完全なのです。

 敵の魔獣を倒すためには、敵を発見をし、正面から戦うだけではあまりに非効率的過ぎる。

 先手を打つために、敵の目を眩まし、相手を動けなくした所を狩る。それがもっとも効率的だ。」


なるほどごもっともだ。

何より、自分の得意な魔法が必要とされたことに少し心が動いてしまった。


そして、次の言葉に俺は心を動かされた。


「人がこれ以上死ぬ必要は無いんだ。」


ダンは熱の籠もった声で言った。


なんだろう、さっきのビジネスパートナーが云々の人が放つセリフには聞こえない。


俺はこの時、初めて「ダン」という人間の本質を見た気がした。


彼は表面上は冷徹で排他的な姿勢を見せていたが、実はその裏には情に厚い一面を持っていて、それをなぜか隠している。

そう思えた。


その言葉に、サンもいつの間にか起きていたイルダも真剣な眼差しをしてこちらを見ていた。


ダンがこちらを見る。

この目は先程とは違う目だ。

人が本気で何かを問うてきている目だ。


「もう一度聞きます。」

「あなたは我々に利益を与えてくれるパートナーだと見込んでお願いをしています。」


「我々の協同体に入りませんか。」


その言葉の答え出すのに時間は要らなかった。

彼らの熱い思いを感じたから。














一話書くのがしんどい!

小説家はすげえや。

オチがついたかわかりませんが、頑張って書きやした。

またボチボチ挙げて行きます。

よしなに!

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