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はじまり!はじまり!

目の前の男が笑っていた。


酒場はアルコールの匂いで満ちている。


男がこちらを見た。


「なるほど、君はなかなかに平凡なようだ」


伏線回収が完了した。


テーマの回収である。


実にもったいない。


ここぞという時にしなくてはならないものを。


「そうです。だからこうして冒険者経歴書を持って酒場に来ているんです。」


酒場と聞くと大人がはしゃぐ遊び場のように思えるが、この世界では就職支援センターみたいなものだ。


某ド◯クエみたいなものである。


「そうか。ならば一つ君に忠告しておこう。」


男はニヤリと笑った。


「君を貶めている原因は、君の自信のなさだと思う。」


「例えば、背中の曲がり方だとか、声の出し方とかそういう所が君と言う人間の価値を落としてしまっているんだ。」


なんだこのおっさん。


俺が気にしていることをずけずけと言ってくるじゃないか。


こんな暴挙が許されるだろうか、いや許されない。


だがしかし俺は寛容な男であるから、何も言い返さなかった。


男は何も言わない俺を見て言葉を続けた。


「俺という人間は君のことを実は気に入っている。そのしょぼくれた目も、やに下がった眉毛も実に気に入っている。」


「だからひとつ君に質問をしたい。君の内面をもっと知りたいんだ。」


「なんでしょう。」


俺が一生懸命に出した言葉は、酒場の騒ぎに掻き消されてしまったが、男は俺が返事したことを確認し、こう言った。


「もし仲間が命を落とす場面に陥ったら君は仲間を助けるか、それとも逃げるかどっちだろうか?」


非常に曖昧な質問だが意図はなんとなくわかる。


ここで、もちろん「仲間を助けます」と言う人間がいれば、それはさも勇敢で理知的な人間であり。人々が求める理想の仲間像に違いないだろう。


だが、俺という人間はどうもひん曲がっている。


こういった質問に対して、どうしたって正解を引きたくなくなってしまう。


もっと言えば、自分の心を曲げてまで、正解を選ぼうとは思わないのだ。


つまり、俺は臆病なのだ。


しばらく沈黙が続いた。


逞しい男どもの笑い声が聞こえ、酒を煽る音が聞こえ、遠くで吐いている馬鹿も居る。


ようやく出た言葉は、


「わかりません。」


一番やってはいけない回答をしてしまった。


質問に対して答えを出すということは非常に大切なことだ、答えを見送る回答は実に軟弱で滑稽である。


自分の臆病、愚かさを恥じていたが、男は興味深そうにこちらを見た。


「ほう。」

「それでは君は今の質問に対してどう感じて、その結論を出したか教えてくれないか。」


男はニヤニヤとしている。

実に怪しい。だが、その笑みはどこか、俺を安心させるものだった。


「俺は臆病です。」

「仲間の命の危機に瀕した場面とは色々な想像がつきますが、どういった場面でも、私は考えてしまうでしょう。」

「仲間を助けるメリット、リスク、その行動が起こす仲間への影響、今後の私という人間が後悔するかどうか。」

「後悔するとしたら何に後悔するのか。」

「私には様々な可能性が頭を巡る、そしてそれらの可能性が私の決断を揺さぶってくる。」


「急に饒舌になったねぇ。」


男は笑った、でも俺の目を真っ直ぐと見つめている。

ただ真っ直ぐに。


「だから。」

「もし、あなたが仲間になると言うのなら、大切な答えに対して自分を着飾った答えを出すべきではないと思うんです。」

「俺は強くない。」

「臆病です。」

「だから恐怖に負けた時逃げ出すかもしれない。」


「それでも。」


男の口元から笑みは消えていた。

俺のあまりの卑屈さを知って呆れたのだろうか。


だがそれでも俺は言葉を紡ぐのをやめなかった。


「俺は臆病で弱い人間だけど、誰かに嘘をつくような人間にはなりたくない。」

「嘘という、回答に逃げたくない。だから、俺にとって逃げるか助けるかはその場面の俺にしか答えられません。」

「だから、俺の答えはわからないです。」


気がついたら、私という一人称は消え、俺という一人称になってしまった。


熱くなり過ぎてしまった。酒場のアルコールの空気を吸って酔っぱらってしまったのだろうか。


男と話す前に頼んでおいた、蜂蜜ミルクを飲む。

この飲み物を飲むと「ガキはママのおっぱいを飲んでろ。」と言われそうだが、今まで一度もない。


ただ話す人間がいないだけだが。


恥ずかしさから逃避したいがためにくだらない考えを頭で巡らせてると男が口を開いた。


「君良いね。」


なんて言ったのかわからなかった。

もし俺という人間を褒めている言葉だったらどうしようか。


「君は実に良い。ハッハー。」

「久しぶりにこんな面白い奴に会ったよ。」


この男は何を言っているのだろうか。

俺という人間に付けるとすれば捻くれのオタンコナスと言ったところだろう。

面白いとは無縁な人間だ。


俺が疑問符を浮かべた顔をしてると男は続けた。


「君と一緒に冒険がしたいよ。」

「君という人間が気に入った。」

「名前を聞かせてくれないか。」


名前なら冒険者経歴書に書いてあるだろうに。


だが褒められて悪い気がする人間はいない。


俺は素直に答えた。


「ブギです。これからよろしくお願いします。」












適当に書きたいことを書きました。

頭の悪い文章ですが気が向いたら書いていきます。


よろしくぅ!

いくぅ!

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