第2話 聖徳太子
八木「おはようございます。」
隊長「おはよう。今日はどの時代に行こうか?」
八木「なにか、お店でも決めるみたいですね?」
隊長「何を言ってるんだ?真面目にやれ。さあ、教科書を見てもいいから、どこがいいか決めるんだ。」
八木「すみません。じゃあ、聖徳太子なんてどうでしょうか?聖徳太子って年代によって習い方が違うんですよね。」
隊長「俺は推古天皇の摂政として十七条の憲法を作って、冠位十二階の制度も作ったって習ったな。あと、小野妹子を遣隋使として隋に送ったりもしたよな。「いもこ」って言っても女じゃないぞ。
八木「誰でも知ってますよ。」
隊長「ああ、そう。まあそれは置いといて、あとはいっぺんに10人の話を聞き分けたとか、お母さんが馬小屋を通りかかった時に産気づいたとか、そんな伝説も習ったぞ。」
八木「やはり我々とはだいぶ違うようですね。私たちの年代は聖徳太子はいなかったと習っていると思いますよ。」
隊長「えっ。聖徳太子っていなかったの?だって、ずっと日本のお札だったじゃん。1万円札と5千円札。」
八木「隊長、それいつの時代ですか?今2056年ですよ。」
隊長「ああ、そうか。まあ、その話は置いておこう。じゃあ、俺たちは国から嘘を教えられていたって事か?」
八木「まあ嘘って言っちゃうと身も蓋もありませんが、私たちの年代では厩戸王と習うんですよ。」
隊長「それなんて読むんだよ?」
八木「うまやどおう」です。」
隊長「あれ?聖徳太子の幼名が厩戸皇子じゃなかったっけ?」
八木「そうなんですか?詳しいですね、さすが、隊長。」
隊長「まあ、日本史は得意だったからな。いや、そんな事はいいんだよ。いったいどういう事なんだよ。」
八木「私たちは「聖徳太子は厩戸王をモデルにした伝説」というふうに教わりましたが。」
隊長「ふざけんなよ!俺が生涯で何回「聖徳太子」って書いたと思ってるんだよ。だいたい、国ぐるみで国民に嘘を教えるってひどくねえか?しかもその嘘をテストに出すってどうかしてるぞ。」
八木「まあ、そう考えると、ちょっとひどい話ですよね。」
隊長「ふざけんなよ!俺の時間を返せよ。」
八木「私に言われても困りますよ。じゃあ、それを確認する為にも早速行きましょう。」
隊長「よし、じゃあ日時を設定してと。スイッチオン」
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二人の乗ったタイムマシーンは無事593年に到着した。
隊長「八木!大丈夫か。」
八木「はい、私の方は異常ありません。」
隊長「無事ついたようだな。じゃあ、聖徳太子を探そう。おっ、あの人に聞いてみよう。」
2人の前を位の高そうな人物が歩いていた。
隊長「ちょっとすみません。人を探してるんですが、この人なんですけど。」
そう言うと隊長は教科書の肖像画を見せた。その人は貴族で宮中内については詳しい人だった。
貴族「さあ、見たことないですね。何て名前ですか?」
隊長「聖徳太子っていうんですよ。」
貴族「聖徳太子?さあ、そのような名前は聞いた事がありませんね。」
八木「隊長。やっぱり、その名前じゃダメなんですよ。すみません、じゃあ厩戸王という名前に心当たりはないですか?」
貴族「うーん、厩戸王という人はいますが。」
八木「何か気になることでも?」
貴族「先ほどの絵を見せてもらってもいいですか?」
隊長「どうぞ。」と言って山川の教科書を見せると、
貴族「うーん、この人とは似ても似つかない人ですよ。だいたいこんな格好してる人ここにはいませんよ。私の服を見て下さい。全然違うでしょう。」
八木「確かに違いますね。一体どういう事なんでしょう。」
貴族「それと、この人、木を持っていますよね。何ですかこれ?」
八木「これも見た事ないんですか?」
貴族「見たことないですね。」
八木「なかなかの捏造っぷりですね、隊長。」
隊長「ほんとに、ふざけんなよな。まあ、とりあえず、厩戸王を紹介してもらうか?」
八木「そうですね。どうでしょうか?厩戸王を紹介していただけますか?」
貴族「いいですよ。じゃあ、あちらの建物へ一緒に来てください。」
八木「意外と簡単に紹介してくれるんですね。」八木は隊長にひそひそ声で話した。
隊長「まだそんなにたいした時代じゃないんじゃないの。」
八木「そうなんですかね。」
建物に着くと貴族はすぐに厩戸王を呼んできてくれた。
厩戸王「私が厩戸王ですが、私に何か用ですか?」
隊長「ほんとだ。絵と全然違うじゃん。服も違うし。」
厩戸王「何の事でしょう?」
隊長「いえいえ、こっちの話でして。ところでいくつか質問があるのですがよろしいでしょうか?」
厩戸王「どうぞ。」
隊長「あなたはいっぺんに10人の言う事を聞き分けられると聞いたのですが本当ですか?」
厩戸王「はあ?そんな事できるわけないでしょう。2人がいっぺんにしゃべったって聞き分けられませんよ。」
隊長「そりゃそうですよね。じゃあもうひとつ、あなたのお母さんは馬小屋の前で産気づいたのですか?」
厩戸王「いや、母からそんな話を聞いた事はありませんね。」
隊長「やはり、そうですか。どうだ、八木、お前からも何かあるか?」
八木「じゃあ、十七条の憲法という言葉を聞いた事はありますか?」
厩戸王「いや、聞いた事は無いですね。」
八木「ありがとうございます。私の方からはそれだけです。」
隊長「なんだ、それだけか?」
八木「私は厩戸王の姿を見られただけで充分満足ですよ。」
隊長「そうか、じゃあそろそろ帰ろうか?」
八木「そうしましょう。すみませんでした、お手数かけてしまって。」
厩戸王「いえいえ。では私はこのへんで失礼します。」
隊長「じゃあ我々も帰ろうか?」
八木「帰りましょう。」
隊長「じゃあ現代に向けてスイッチオン」
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タイムマシンは無事2056年に戻って来た。
隊長「八木、無事か?」
八木「はい。私は大丈夫です。しかし、どうでした?今回の検証は。」
隊長「もういいよ。分かったよ。聖徳太子は捏造なんだな。」
八木「まあ、捏造っていうと怒られちゃいますが、架空の人物という事ですよね。」
隊長「もういいよ、2000年前の事なんか忘れよう、次だよ、次。」
八木「はい、次頑張りましょう。」
つづく