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君に捧ぐ

作者: 朔夜

我、君を想う


月をかいなに


光を求め


地に彷徨う



我、君を希う





君が来る前、誰もお互いのことを思わなかった。

君た来たとき、みんな一目できみに夢中になったよ。


覚えているかい?


私はまだ義務療育も終えていない歳で、夏期講習に行っている日だった。

帰って来たら、うちの子を探しに行こうと約束していたんだ。

だけど私が帰宅した時には、置手紙ひとつ残されていただけだった。

私は君が来るまでどんな子が来るのか、本当に楽しみにしていたんだよ。


そして君が来た。

ちっちゃな顔に警戒心を浮かべ、何日間もひとこともしゃべらなかったね。

私たちは、心無い誰かに君の声帯を切られているんじゃないかと心配したんだ。


しばらくして、初めて声をかけてくれたね。

一緒の部屋にいたシナモンと私は君の声が聞けて嬉しかった。

これからきっと家族になっていけるだろうと思ったんだ。


それから暫くは一緒の部屋で過ごしたね。

君は階段が怖くて、部屋から出れなかった。

だけどある日、怖い人に怒鳴られて、一気に階段を駆け下りたね。

それから階段も上り下り出来るようになったんだっけ。


ねえ、覚えている?


君はその存在ひとつで、姿で、態度で、声でみんなを魅了した。

みんなが君が過ごしやすいようにしていたんだよ。


君はまさに太陽、光そのものだった。


君と過ごした14年間を決して忘れないよ。

少し前から体力が減っていた君がその日に限って、沢山なところに行こうとした。

「疲れちゃうから帰らない?」と聞いても、何故か君は色々なところに行った。

今から思えば、みんなに最期の挨拶に行っていたんだね。


次の日、忘れもしない雨の降っていた水曜日、君の調子を診てもらおうと近所のお医者さんに行こうとした。

玄関では体力がなくて、疲れた様子だった君。

でもスカイに甘えていた君。

スカイに抱かれて、お医者さんのところへ行ったね。

私は君が雨で濡れないように、傘係だった。


そしてお医者さんの所へ行った。

そこで開口一番に言われた科白。

私は決して忘れない。

「もうこの子眠ってるよ」

君は家族で一番好きなスカイの腕の中で、たった5分の間に眠ってしまった。

虹の橋のたもとへいってしまった。


ああ、君は幸せだったろうか?

ひとりで寂しがってはいないだろうか?


私たちは君のいないことに耐えられなかったよ。

道を歩けば君と一緒に歩いた道だと、君の友達を見れば君のことを思い、家の中全てに君の思い出がつまっていた。

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