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夜の町はひっそりとしている。
町の人の多くがお祭りに出掛けているからか、明かりのついている家は少なく見える。普段夜中には出歩かないから正確なところはからないけど、迷子になったときに比べるとやっぱり静かな印象があった。
歩いている大人ともあまり出会わないので、呼び止められて叱られるようなこともなかった。そもそも今日はお祭りの日だから、子供が夜中に歩いていても不思議には思わないのかもしれない。
恵太くんはさっきからキョロキョロと辺りを見ている。先頭に立っていて、歩く速度も早い。どうやら本気で棺桶少女を探しているらしい。
探してどうするのか、ぼくは知らない。棺桶を無理矢理に開けて、お姉さんがいるかどうかを確かめるつもりなのかな。人間が入ると死んでしまうという棺桶。
恵太くんはもしかしたらお姉さんが人魚かもしれないと考えている部分もあるのかもしれない。
決して口にはしないだろうけど。
「もう、諦めたら?」
しばらく歩いたあと、里英ちゃんがふいに立ち止まって、恵太くんに言った。
「これ以上探しても見つからないよ。遅くなると親も心配するし、そろそろ帰ったほうがいいと思う」
「そう、だね」
恵太くんは反論しなかった。お姉ちゃんを探すのを諦めたらというよりは、夜の町の不気味さに怯えているようにも見えた。
この日は月明かりが少なくて、見通しも良くなかった。電灯のないところだと、ちょっと先も見えなくなる。
ぼくたちはお祭りで明るくなっている方向に向けて歩き出した。
そのとき、
「いま、何か聞こえたかった?」
里英ちゃんが周囲を見回して言った。
ぼくにも確かに何かの物音は聞こえた。それがなにかはわからなかったけど、この静寂のなかでははっきりとした異音として認識することができた。
「たぶん、あっちの方」
久瀬さんはある方向を指差した。
ぼくたちはちょうど分かれ道に差し掛かっていた。一方はお祭りの方、もう一方は住宅街の奥へと続く道だ。久瀬さんが指差したのは後者だった。
ぼくたちは誰の意思も確認しないまま、そちらへと進んだ。
とある家の前に来たとき、誰かがその中から飛び出してきた。駆け足のまま玄関から姿を現して、こちらに気づくと逆の方向に向かって走り去った。
その人の姿は暗闇に包まれて見えなかった。大人であることはなんとなくわかったけれど、顔までは確認することができなかった。
「いまの、なんだったんだろう?」
「さあ」
「棺桶少女でないことは確かみたいね」
この場に突っ立っているわけにもいかない。
ぼくたちはわけもわからないまま、その場を後にした。




