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第一部 灰被り魔女と初代モフモフの恋  第一章 魔力持ちベイビーの誕生

 ファンタジー多めの話で、特定の国や時代は想定していません。

ご都合主義だとは思いますが、楽しんで頂ければ幸いです。


 古城に住む魔物、金色の毛玉は王子とともに成長してきたが、二、三年前位前からその成長は止まり、今ではアロンディス王子の頭一つ分小さい。

 

 抱きしめると毛玉の頭のてっぺんが王子の丁度顎の下にくるので、とってもフィットする。

 う〜ん気持ちがいい。

 モフモフ、フワフワ……

 匂いもいい。

 お日様? 花の香り? 甘い?

 

 王子にとってその金色の毛玉は唯一の癒やしである。

 王都にある城からこの岩山の上に建つ古城に戻って来るたびに、彼は金色の毛玉を抱きしめて、疲れ切った心を癒やすのだった。

 

 

 ❅ ❅ ❅ ❅ ❅

 

 

 アロンディス=エルベスアクト第一王子……

 

 水色がかった輝くように眩しい銀髪に、薄水色の切れ長の目。背が高く、細身ながらにバランスの良い筋肉質な体躯をした、眉目秀麗な青年の名だ。

 

 この通称銀獅子王子、愛称アロン王子の生まれた年は、魔力持ちの赤ん坊の当たり年だった。

 貴族の家には魔力持ちの赤ん坊がそこそこ生まれるのだが、この年は例年より多かった。

 その中でもアロン王子を含む、十人の赤ん坊達は特に強力な魔力を持っていた。

 しかも普通は五、六歳頃から魔力を使うようになるのに、彼らは違った。

 

 この赤ん坊達はお据わりができるようになると、視界は良好、両手は自由になるので、喃語を喋りながら面白いように魔法を放出させるようになった。

 まだ大した威力はなかったが、ハイハイをし出す頃にはあちらこちらに被害が広がった。

 そして生まれて一年と少し経つと赤ん坊達は歩き出し、家の中はもう目も当てられない状態になった。 

 

 王城には連日のように、七家族が助けを求めて押しかけていた。

 国王も彼らの苦労は充分にわかっていた。何故なら王宮もボロボロの状態だったからだ。

 

「このまま放っておいたら、間違いなく死人が出そうだ。何か良い対策はないだろうか?」

 

 国王が宰相に泣きついた。

 

「どこかに封印するしかないんじゃないですか?」

 

「封印って……」

 

「じゃあ、投獄?」

 

「やめてくれ……」

 

「それでは監禁で!」

 

「・・・・・」

 

「お為ごかしや綺麗事を言っても、意味はありません。ご自分達の子供にお手上げ状態で、手放したいのでしょう?

 しかし、強力な魔力持ちの子供をその辺に捨てる訳にはいかないし、かと言って貴重な魔力持ちを処分するわけにもいかない。だから、彼らは国に丸投げしたいだけでしょう?

 陛下もあの卑怯者のお仲間ですか?」

 

「さすがに無礼だぞ!アルベルゲ!

 そういうお前はどうなんだ。お前が一番困っているんじゃないのか? 双子のどちらも魔物持ちなのだろう?」 

 

「うちは困ってなどおりませんよ。夫婦で仲良く愛情を持って育てていますよ。当たり前じゃないですか。愛する妻との間に生まれた私達の愛する子供達なんですから。

 しかも妻と会うのを散々邪魔されながらも、奇跡的に授かった子供達なんですよ?

 あれ? 陛下やあいつらも確か婚約者に濡衣着せて婚約破棄した挙げ句に、真実の愛を貫いて結婚した、愛する奥方とのお子様でしたよね? それなのに何故皆さん育児放棄なされるんですかね?」

 

「わ、私は婚約破棄などはしていない」

 

「ああそうでしたね。陛下だけは前国王陛下に婚約破棄をしたら廃嫡するぞと叱られて、慌てて婚約破棄を撤回して、愛人を捨てましたもんね。

 なるほど。

 アロンディス殿下は愛情のない正妻である王妃殿下がお産みになったお子様だから、愛情が湧かなくてお捨てになるのですね。ようやく納得いたしました。

 確か、前国王陛下の喪が間もなく明けたら、陛下はお捨てになったはずの元愛人を側室に迎えられるご予定なんですよね。

 では、その方との間にできたお子様を王太子になさるおつもりなんですか?」

 

「・・・・・」

 

「沈黙しているということは、つまり肯定なさっているということでよろしいでしょうか?

 私はこの国の宰相ですから、正直に言ってもらわないと困るんですが。

 跡継ぎ問題は国の根幹に関わりますからね」

 

「息子のことは愛している。それは嘘ではないが、息子が今後どのように成長するのまだ未知数だ。

 故に、第一子とはいっても、早々に王太子と決定するわけにはいかない。

 もちろんまだ娶ってもいない側室との間の、まだ生まれてもいない子を王太子にしようなどとも考えてはいない。

 ただ、王妃は産後の肥立ちが悪く、王子を抱くこともままならない状況だ。たから王子のことで気を揉ませるのも心身共に辛かろうと思ってな」

 

 国王はいかにも正妻である王妃を慮っているように言っているが、王妃殿下が出産されてから一度も見舞いに行っていないことくらい、宰相は把握済みである。

 もちろん元愛人との関係がずっと続いていることもね。

 

 

「陛下はお子様達をどうにかしろとおっしゃっていますが、それは暗にあの古城に押し込めろということを私に命じているのですよね?」

 

 古城とはこの国を興した頃、山の自然をうまく取り入れて造った岩山の上にそびえ立つ城だ。

 いや、城というより寧ろ砦と呼べる頑強な建物で、魔力攻撃を受けてもびくともしないのだ。

 

 それが何故かといえば、この岩山自体が何故か魔力の吸収材(アブソーバーであった為に、その岩石で建築された城が、意図せずにショック吸収装置になっていたのだ。

 つまり古城及びその周辺の山々は、魔力を吸収して無力化してしまうのだ。

 

 かつてこの国は魔族と絶えず抗争を繰り返していた。

 しかし普通の石造りの建物ではすぐに破壊されてしまう。そこでこの山城に総勢力を集中させることで、この国に侵入してこようとする魔族を食い止めていたのだ。

 

 やがて人間の数が増えてくると、城やその周辺だけでは収まりきれなくなった。

 そこで多くの平民達は、魔族の出る国境からできるだけ離れた所、城から馬で五日以上かかる場所に暮らし始めた。

 そしていつしかそちらの方が王都と呼ばれる都になったのだ。

 

 王族や貴族、そして騎士達が山城に皆籠もっているのに、よく国が成り立っていたものだと思われるかも知れない。しかし当時の人間には、大抵魔族ほどではないがかなりの魔力を保有する者が多かった。

 

 そしてその魔力持ちの多くは瞬間的に空間を移動する能力を備えていた。

 その為に彼らは、山城と王都に新たに造った城との間を自由に行き来することが可能で、さほど問題がなかったのだ。

 

 強い魔力を持つ魔族達から、人間がどうにか生き延びてこられたのは、偏にこの瞬間移動能力のおかげだった。

 

 つまりこの優れた瞬間移動能力を持つ者だけがこの国の実権を握れる貴族になり、その中でもっとも魔力の強い者が王となって君臨したのだった。

 

 読んで下さってありがとうございます。今日はあと二回投稿する予定です。読んで頂ければ嬉しいです!

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