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暗殺スキルしか持たない変態中二病女神  作者: たにぐちあきら
第一章
2/2

2話 前世



           2話




「そろそろここから出るわよ」

 女神が水槽のフチに両手を掛けて言った。


「なぁなぁ、さっきから誰かに睨まれてる気がするんだけど、気のせいか?」


「何言ってるのよ、、、、」

 

 俺たちは幽霊を見るかのように恐る恐る後ろを向いた。

 そこには金棒を持ち顔を真っ赤にしている大きな

オークのおばさんがいた。

 両鼻からすごい蒸気がでていて

プンプンに怒っているようだ。


「あ、そう言えば、ここ魚屋だったな、

あはははは」

 怯えながらも誤魔化そうと頑張って笑ってみた


 が、、、


「ぬすっとぉぉーーーー!

出てけごらぁぁぁーーー!」

 金棒を振り上げ怒鳴った。


「すいませーーーーん!」

 和希たちはすぐに水槽から出て走って逃げたが、


「謝って済むと思ってんのか?待てやぁぁー!」

 走って追いかけてくる。金棒を振り上げながら。


 俺とヴィナは大通りの馬車や人混みを強引に抜けながら走って逃げている。


「もっと飛ばすぞヴィナ!」

 あれ?ヴィナがいない。どこだ?

 先に行ったのか?


 和希が人混みの中をジャンプして見回すと、

ヴィナが見えた。ヴィナは魚屋から100メートルぐらいしか走っておらずおばさんがすぐ後ろまで来ている。


 クソッ、あの女神走るの遅すぎるだろ。 

ここから間に合うか?


 和希とヴィナの間に50メートルの距離がある。


 あ、そうだ、見捨てるか。

 あんま役立たなそうだし。


 いや、女神を捨てたら俺が元の世界に戻れなくなるかり仕方ねぇーな。


「くっそぉぉぉーーーー!」

 ロケットのように砂埃を立ててヴィナのところまで走り、ヴィナをおんぶして逃げた。




        ※※※※※※※※※※




「はぁはぁ、ここまで逃げれば大丈夫だろ」

 街を出て隣にある森の中まで来た。


「そうね、もうあの魚屋には近寄らない方が良さそうね、で、聞きたいんだけど

何であなたは疲れているの?」


「いや、お前が走るの遅いからおんぶして来てやったんじゃねーかよ」


 嫌味すぎるだろ。やっぱりムカつくな

この女神は。可愛く『ありがとうございます』って俺の右腕掴んで言ってもおかしくねーだろ。

ハズレ女神だな。

 ははんっ!俺の心の声は聞こえないんだな。

なぜなら女神と目を合わせていないからだ。

目を合わせてる時しか聞こえないみたいだからな。


 それにしても恐ろしいおばさんだったな。

あの街に行くのが怖くなるじゃないか。


 ていうかあんなところに転移しなければこんな目に合わなかったんじゃ?


「なぁ、なんで魚屋の水槽なんかに転移するようにしたんだよ」


「仕方ないじゃない。この街から1番近くて便利な場所があそこだったんだから。海か湖の真ん中に

転移されるよりはいいでしょ?」

 女神は木の影に座って言った。


「まぁな、けどもうちょっといいとこあるだろ」


「なかったから言ってんの!

私には水がある場所がマップになって

頭に出くるの。全部見えるんだから。」

 初めて怒った女神。

和希は顔を赤くした。性的な意味で。


「なかなか便利な能力だな。能力?スキル?なんて言えばいいんだ?」


「別になんて呼ぶか迷う必要ないじゃない、

単純よ、神だから。ただそれだけ」


 絶対次から1人で走って逃げてやる。

どれだけ自分大好きマンなんだよ。

まぁ、別に自分に自信があるのは良いことだと思うけどな、この女神は別だ。くたばれクソ女神が。


「聞こえてるわよ、心の声」


うっかり言ってしまい、慌てる和希。


「あ、あ、ど、どうか聞き流してくれると

ありがたいんですけどーー」

 手のひらを合わせてドラマに出てくる悪そうな

商売人のようにネチネチしながら言った。 


「今回だけよ、あとあなたの心の声が毎回聞こえてくると疲れるから聞こえないように

設定しておくわね」


「いやいやいや、設定ってなんだよ。

神様のイメージぶち壊してくれるじゃねーか」


 あっさり許してくれた驚きよりもこっちの方が先に来た。


「あ、言ってはいけなかったわね。

神様同士の秘密なの。誰にも言わないでね。

2人だけのハーミーツッ!」


 めっちゃ可愛く言ってきた。

初対面でこれやられたら誰でもあっさり

落ちるぞこれ。おんぶの礼としてもう一回やってもらおうかな。


「俺はいつになったら帰れるんだ?」


「まだまだよ、今帰られたら連れてきた意味がなくなっちゃうもの」

近くにある石を和希に向かって投げながら話す女神


「連れて来た意味ってもしかして俺を生け贄にするとかじゃないよな?」


「別にしてあげようとすればしてあげられるけど

違うわ。」


 この女神は見た目と逆にさらっと恐ろしいことを言う。さっきから投げてくる石が地味に何回か急所当たってるんですけど。やり返してやろうかな。


「こらから言うことが本題なんだけどいい?」

 急に改めて和希の前に立ち、喋りだした。


「あなたにはこれから伝説の月、、、に、、、

なっ、、、らう」


 ん、何だ?急に声が聞こえにくくなってきたぞ?

どうなってるんだ。


「おいヴィナ、声が聞こえないぞ、、、」


 「うぅぅっっ」


 喉が詰まった。呼吸が出来ない。

 地面に膝と両手をつき四つん這いの状態で

冷たい汗が鼻の先から流れ落ちる。


「ドックンドックンドックンドックンドックン」 


 空気を吸えない恐怖に追い討ちをかけるように

頭と体全体に澄み渡る心臓の音が鳴る。

 ヴィナが心配して必死にかけてくれる声が、

微かに濁って聞こえるだけで雑音と変わらない。


「ピィーーーーーーーーーーン」


 耳が狂ったのか耳鳴りだけがしている。


 怖い怖い怖い怖い!


 そんな世界にいる和希はめまいのようなものを感じた。体の平衡感覚が失われ、どちらが地面か空かもわからなくなってしまう。

 それに耐えるように

生えている草の根元一点だけを見ている。


 俺は死ぬのか?これが死ぬってやつなのか?


 怖い怖い怖い、いやだ


 いやだまだ死にたくない。


 嫌だ!!


 「•••••••••••••••••••••」

 

 「•••••••••••••••••••••」


 「•••••••••••••••••••••」


辺りが真っ暗になり何の音も聞こえなくなり、

和希は倒れた、、。



         ※※※※※※※※※※




 真っ暗で目を開けているか閉じているかも分からない。その前に目じたいが存在しているかすら分からない。


 和希は静寂の音すら鳴らない真っ黒の世界で

宇宙に投げられたゴミクズのように1人でゾンビのように下手に暗闇の中をフラフラとさまよっている。


 俺は死んだのか?


 何なんだこの世界は。


 俺はどこにいるんだ?地獄か?天国か?

 いや、天国では無さそうだな。


「おーーーーい」


 和希の声が響く。

 何の反応もない。

 どこまでも響く声が和希に絶望感と孤独感を感じさせる。


 壁の1つすらないのかこの世界は。


 すると、、、


「コツコツコツコツ」


 何者かが歩いてこちらに向かって来ている。

 何も見えない恐怖に怯える和希。


 その足音が話しかけて来た。


「お兄ちゃん久しぶりだね」


 小さい男の子の声だ。


 久しぶり?


「誰だ!」

 

 和希は恐怖を紛らわせたかったのか大きな声で聞いた。


 すると、スポットライトのような光りが2人に照らされ、姿が見えた。


「僕だよお兄ちゃん。覚えてる?」

 

 そこには前の幻想で見たことのある

斧を持った少年がいる。

 和希は少年を見て平衡感覚を取り戻し、

ちゃんと立てるようになったが、恐怖で足が震えた


「な、何でお前は俺の前に現れるんだよ!」

 震えた声で口調が強くなる和希。


 すると少年は朗らかな声で言った。

「その様子だと覚えてくれてたみたいだね」


 そう言い、近づいて来る。


 「俺はお前の両親を殺してなんかいない。

 それにお前、、、」


 「違うよ。お兄ちゃんは殺したよ。沢山の人と

 僕たちの家族まで」


 「殺していない!逆に殺していたらとっくに

 刑務所に、、え、今なんて?僕たちの家族?」


「うんそうだよ。僕たちの家族」


「覚えてないの?まぁそりゃ前世の話しだし覚えてないよね。」


「僕たちは兄弟だったんだ、、。」

 少年は悲しい顔をして言った。


 「え、、、、、」


 「嘘だ。何を言ってるんだよ、別に本当の事だとしても今の俺には関係がないだろ。」


「関係ないかもしれないけど、嘘じゃないよ。

だってお兄ちゃんが殺したって聞いたもん

刺された後に。」


「誰からだ?」


「水の女神ヴィーナスって言ってたかなー?」


「そうか」

 全てを理解したような返事をしたが何一つ分かっていない和希。


 何でヴィナが前世の事をわざわざするんだ。


「で、お前の名前は?」


「僕はテイト。いつも武器屋のおじさんに焚火の木を運んで生活してるんだ。」


テイトか、全く聞き覚えがないな。もし本当に俺の前世の弟で俺が両親を殺したのだったら恨まれて

殺されても何も言えないな。


 最低な兄だからな。斧もそのためだろ。

 めちゃくちゃ怖い。て言うか死んでるから殺されるも何もないか。


「そんなに恨んだりしてないし、お兄ちゃんはまだ死んでないよ」


 俺は死んでないのか!?

 あんなに苦しかったら誰でも死んだかと思うだろうが。て言うか、こいつも心の声が聞こえるんだな。神に分類されるのか。


「違うよ。僕は幽霊だよ、お兄ちゃんに殺されたからね」

 そう言うテイトの表情に憎悪を感じない。

それがまた恐怖心を思い出させてくる。


「何で前世の俺はお前を殺したんだ?」


「お兄ちゃんは村の代表で魔王の幹部討伐のために

戦ったんだけど、魔法使いに呪いをつけられて

狂ったお兄ちゃんは村全員を惨殺したんだ。

目を真っ黒にして無心でね。ものすごく怖かったよ」


 俺の前世はそんなにやばいやつだったんだな。

 この前までは普通に暮らしていた陰キャの高校生なのにそんな過去があるのを知ると流石に自分でも引くレベルだな。


「それでお兄ちゃんに殺された身なんだけどさ」

 テイトが改まって喋りだした。


「あのね、僕お兄ちゃんみたいに暗殺者になりたかったの。前世のお兄ちゃんは悪い奴らのリーダーを

倒したり、魔王討伐に行ったり、全然暗殺者っぽくなかったけど、

 ものすごく格好良かったの。死神って呼ばれるくらい強かったんだから。」


 少年は今まで話していた時とは別人のように

キラキラした目で話した。


「え、それって俺に暗殺者しろって言ってる?」


「うん!」


「お前言ってること分かってるのか?」


「うん!分かってる。危険だしね」


「いや、そうじゃない。今の話を聞く限りお前は

幽霊なんだよな?」


「いやいや、そっち?今のお兄ちゃんの感じからして暗殺者するのが反対なのかと思ってたんだけど」


 前世に兄弟だけあっただけ喋りやすいと思った

和希だった。


「やってやるよ。最強の暗殺者になってやるよ!」


 「ありがとお兄ちゃん!」


 2人ともいい感じの雰囲気になりこれから冒険が始まるシチュエーションになったが、、、。


「どうやってここから出るんだっけ?」


「え?テイトも分からないのか?」


 2人は真っ暗の中を再びゾンビのように歩きだした。


「くっそぉぉぉーーーー!」



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