表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Bell〜魔王軍幹部の逆英雄談〜  作者: ジョンセンフ
【season2】騎士と勇者
6/12

6.フラグ

 あれからどのくらい経ったのかは分からないが俺はふと目を覚ました。


「ん......。あれ? もう朝か、なぁウィリアムあとどのくらいで着きそうだ?」


「まだあと3時間程はかかります」


「そっかまだ時間かかるなぁ。そうだウィリアムどっか休憩出来る場所でもあったら、寄らないか?」


「すみません。ここから王都までは村や街がありませんので」


「そっか。じゃ暇だし、しりとりでもやろうぜ。じゃ俺から行くぞ。ガロット!」


「あの、ガロットとはなんでしょう?しりとりの最初はリンゴですよ」


 どうやら人間と魔物では少しルールが違うらしい。


「あー。悪いやっぱり何か面倒くさくなったから寝るは、着いたら起こしてくれ」


「そうですか......。ではごゆっくりお休み下さい」


 俺は辺り一面何も無い草原で馬車に揺らされながらウィリアムと共に王都を目指した。




【season2】騎士と勇者

 

「......騎士様。......騎士様!



 やっと起きて下さいましたか。もう王都に着きましたよ。今から中に入りますのでそこからは騎士様とはお別れです」


「分かってる。ここまで送ってくれてありがとうな」


「いえいえこれくらい街を救ってくださったので当然です。それよりも騎士様、今から門を通過したいのですが私だけでは入れないのでどうか門番に騎士様の事情を説明して欲しいのですが......」


 嘘だろ! こいつ入国許可書的なやつを持ってないのかよ。よく俺を送るとか言えたな。

 それに説明しろと言われても偽物だとバレたらひとたまりも無い。強行突破するにしてもすぐ勇者に見つかって終わりだ。仕方ない......


「なぁウィリアム。俺はここでいいからもう村に戻ってくれていいぞ」

 

「いいのですか? このまま中まで送って行くつもりだったのですが」


「ああ、大丈夫だから。ここまでご苦労だったな。村の奴らにもよろしく頼むぞ」


「分かりました。ではお気おつけて」


「お前もな」


 俺がそう言うとウィリアムは来た道を戻るように村へと帰っていった。アイツとの冒険もこれで終わり、正直走った方が早かったがもう過ぎた事だ。


 さて、ここからどうするか。

 俺の前には国中を覆う高さ10m程の壁とその入り口には異様にレベルの高い一人の門番がいた。それに何故か国の都市にも関わらず門の前には人が誰も並んでいなかった。

 俺の国と違って人間の国は入国に厳しいのだろうか。


 とりあえず、周りに人がいないのは好都合だ。一瞬だけ世界の時間を止めてそのまま門を通過するか。


「【改・全時間停止(フルストップ)】」


 俺が腰の剣の柄を握りながらそう言うと、俺の目が緑色に光った。俺がよく使う時間を操る魔法は簡単に使える分精度が低い。しかし、今のように精度の高い時間を操る魔法を使うと俺の目は緑色に光る。


 そして、世界の時間が完全に停止した。雲や動物、風ですら動く物はない。俺以外は。

 俺はそのまま門へと近づき、動けなくなった門番の横を何食わぬ顔で通り過ぎた。王都の中に入ってすぐに俺は近くの建物の物影に隠れてると魔法を解いた。


 すると再び世界が動き出し、俺の目の色も緑からいつもの紫色に戻った。物影に隠れたのは、普通に解くといきなり街の中に瞬間移動したように見えてしまうからだ。


 とりあえず、ここで隠れていても怪しまれるだけだし普通に街を探索するか。俺は街に出た。

 街の中心には真っ白で大きな城が建っていた。恐らくあそこにティファがいると思われる。ただこのまま相手の情報も無しで行くわけにはいかない、まずは街の奴らに勇者やその他の戦力について聞くか。


 まずはこの街に詳しそうな店、武器屋の店主にでも話を聞いてみるか。人間の使う武器についても知っておきたいしな。




ー 「いらっしゃい! ん? 兄ちゃん初めて見る顔だな、はじめてか?」


「ああ、実はこの街も初めてで、街についていろいろ聞きたくて......」


「武器屋に情報を聞くとはなかなか肝が座ってんじゃねぇか。いいぜ何でも聞いてくれ。ちょうど今、客が来なくて暇してたんだ」


 俺はガン器屋という、いかにも武器屋らしい名前の店に入店した。店の中には髭を生やしたハゲでマッチョな店主が暇そうに座っていた。


「悪いけど、金は無いからな。あとから情報料を取ろうとしても、出すもんなんかないぞ」


「そうかい。俺も前までは取ってたんだが、最近は客も来なくなってな暇してたんだよ。だから話し合い手になってくれるだけありがたい」


「なんだ? 不正でも見つかって客に呆れられたのか?」


「ちげぇよ。お前さんも知ってんだろ、最近、魔王軍が全滅したって話。勇者達が魔王軍を倒しちまったせいで冒険者達の仕事が減って、そのせいで武器屋の客も減ったんだよ」


 なるほど、確かに冒険者の仕事のほとんどは俺が送った魔物や怪物を退治することだったな。しかし、俺たちの国が滅んだせいで俺が送る魔物がいなくなり仕事が減ったのか。


「なら今、冒険者達は何をしてるんだ?」


「今は街の警備や清掃や人探しやら何やらやってんじゃねぇか」


 ついに冒険者達が冒険を辞めたようだ。もはや何と呼べばいいのやら、しかしこれは困った。つまり今仕事を失ったニートどもが街中を警備している訳だ。


「じゃお前、勇者について何か知ってたりするか?」


「お前じゃねぇ、ブレッドだ。名前で呼べ。

あと勇者なら俺はよく知らないぜ、7人いるとは聞いたがそれ以外はさっぱりだ」


「そうか、、じゃブラッドこの国で勇者に並ぶ強さを持つ兵士とかは知ってるか?」


「知ってるが聞いてどうする?」


「いやただ知りたいだけだ」


 ブラッドは少し俺を怪しそうに見つめた。


「勇者の次って言ったら、間違いなく騎士様だなあの方たちは強いぞ」


 俺も一応、外では騎士って呼ばれてるんだよな。にしても騎士ってそんなに強いのかよ、グリット村の奴らがあんなに喜ぶ訳だ。


「騎士って全員で何人くらいいるんだ?」


「確か、チョッキし20人だったはずだ。それにみんなレベル300位上あるって噂だ」


 レベル300位上の騎士が20人か、どうやら勇者以外にも強敵がいるようだ。それに勇者は間違いなくそれ以上に強い、これは一筋縄にはいかないな。


「ッ! そうだお前さんティファ王女が助けられたって知ってるか? どうやらティファ王女が魔王から解放されたらしいんだが、洗脳されているらしく人間を恐れているとか」


「そうか......」


 ひとまずは記憶の改ざんはバレていないらしい。もしあれが解かれたらティファを取り返すのは困難になる、その前に何とかするしか無い。


「そう言えばお前さん旅人か? にしては腰の武器がゴツい気がするが」


「旅人も楽じゃ無いんだよ、いつ盗賊に会ってもいいように武器はしっかりしないとな」


「そうか、なら今日は話に付き合ってくれた礼に好きなもん一つ持っていっていいぞ」


「ほーじぁ......



 ? このアイテムは何だ?」


 俺は店の隅にあった手の平サイズの筒状のアイテムを手に取り聞た。


「それは爆弾だ、そこの栓を引っ張るとすぐに爆発する。気おつけて持てよ」


「どのくらいの威力があるんだ?」


「人を殺すぐらいの威力はあるぜ。それに爆発と同時に煙まで出る仕様だ、まぁでもそれは自決用だからおすすめはしないがな。でも全く売れてないし欲しいなら全部やるぞ」


「ならここにある分全部貰うぞ」


 俺はそう言うと店にあるだけの爆弾を服の中にしまった。


「なぁもう知ってる事はないか? 国の戦力について」


「悪いが俺が知ってるのはこれくらいだ、今は国の心配より店の心配をしてるからな」


「そうか、いろいろとありがとうな。店の方も頑張れよ」


「お前さんも盗賊に襲われないよう気おつけろよ」


 俺は店を後にした。ここで貰った自決用の爆弾は俺のある魔法と相性がいい。それにしても見た目によらず優しい店主だったな。

 

 街に戻ると何かの襲来にでも備えているかのように装備を整えた冒険者達が街中を徘徊していた。魔王軍は滅んだというのに異様な光景だ。一体何に備えているのだろうか?

 とりあえず俺はこの街に詳しい奴らが集まりそうな冒険者ギルドに向かった。まぁ冒険者がいるのだからギルドくらいあって当然だろう。



 ギルドに着いたが思っていたほど冒険者も多くはいなかった。中にはクエストリスト? のような物が貼ってある掲示板と飲食店なのだろうか、飲み食いが出来るスペースがある。


 しかし、クエストの方には全くっと言っていいほど冒険者はおらずみんな飲み食いばかりしていた。

 とりあえずこの朝から飲んだくれている冒険者達なら簡単に口を滑らせそうだし、適当に情報収集してみるか。まずはあそこで3人で飲んでる奴らにでも聞いてこよう。

 

「......それでさぁっ」


「なぁ話してる所、悪いんだがこの中で勇者や騎士とかに詳しい奴はいるか?」


「ん? あんた誰だ? この辺じゃ見ねぇ顔だが、旅人か何かか?」


「ああ、俺はロト。最近いろいろな街を回りながら旅をしている。何か勇者について知らないか?」


「まぁとりあえず座れや話はそっからだ」


 3人の中でリーダーらしき男が俺に親しくしてくれた。見た目は少しチャラいが良い奴そうだ。

 他の2人は女と男。それ以外、感想は無い。


「でだ! 改めて聞くが、何か勇者や騎士について知ってる事はないか?」


「知ってる事って言われても何から言ったら良いか......。てか何でそんな事知りたいんだ?」


「いや。なんて言うかこう、興味があってな。憧れてんだよ、だから勇者とか騎士についてもっと知りたいんだ」


 嘘だ。そんなわけないに決まっている。ただ嘘でも勇者や騎士を褒めるのは良い気分ではないな。


「勇者は良く知りませんが、騎士様なら私知ってますよ」


 ただの女が口を開いた。てか、さっきから思ったんだが何でこいつらは騎士には 様 を付けるのに勇者には 様 をつけないんだ? 勇者って嫌われてんのか?


「そう、騎士様は今から30年前に国を守る為に精鋭20人によって結成されました。その強さは魔王ですら恐ると言われ......」


 ああ、これ絶対話長い奴だな。この女のキラキラと輝く目を見れば分かる。

 まぁようやくすると、騎士は30年前に出来てその強さは魔王、つまりゲルド様ですら恐れてるらしい。なら勇者使わずに騎士で国潰しに来いよ。と思ったが騎士にもいろいろ事情があるのだろう。


「ほぅなるほど......。でその騎士様とやらは今この街にいるのか?」


「騎士様なら多分、今は5人くらいしかいないと思うぜ。何せあの人達は忙しいらしいからな」


「な、なら、勇者は? 勇者はこの街に今何人いるんだ?」


「うーん。


 多分1人も今はいなかったと思うぞ。昨日、何人か勇者達が街を出てたから多分そうだ」


 “ガクッ“


 俺達の後ろの席に座っていた奴がなぜか少しピクついた。酒にでも酔ったのだろうか?

 まぁ今はそんな事はどうでもいい、凄い情報が入った。嘘か本当かはわからないが少なくとも何人かの勇者はこの街にはいないようだ。これは早くもチャンスが回って来たかもしれん。


「なるほど......。いろいろ教えてくれてありがとうな、本当に助かったぜ」


「いいって事よ! この街は良い所だからアンタもを 楽しんでいけよな」


「もし。騎士様について知りたい事があったら私に聞いてね。何でも答えてあげるから」


 結構です。てかこの隣の男さっきから全く喋んないけど石化の呪いにでもかかってんのか? いやもうどうでもいいか。


 今はティファの救出が優先だ、いや誘拐か......。恐らくティファは街の中心にある城の中にいるだろう。勘だが間違い無いだろ。それに今は勇者がいない、騎士は5人ほどいるがあのレベルならまだ何とかなる数だ。あとはバレずに城に入るだけ、簡単だな。


「もし何かあったらいつでも来いよ。待ってるからな」


 本当にいい奴だな。


「本当に何から何までありがとうな。実は俺、今日この街に着いたばっかりでさ、困ってたんだよ」


「「......」」


 ん? さっきまで笑顔だったはずの3人がなぜか急に真剣な顔になった。なんだ? ずっとこっちを見ている何があったんだ?


「なぁロトさん。今あんた何て言った?」


「え、いや今日着いたばっかりで......」


「今日! この街に来たのか?」


「何なら今さっき着いたばっかりだ」


「「......」」


 何だ? 分からない。何でこいつは急にこんな感情的になったんだ。


「なぁじゃあんた今日どうやってこの街に入ったんだ?」

 

「どうやってって普通に門から入っただけだが?」


「今日はだれもこの街に入れないはずだぞ......」


 ......何? 




 

 


 





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ