表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GLAIVE (狂炎伝承)   作者: 団栗山 玄狐
Ver.05 異国の戦場
43/54

act42 失望のline of sight

act42 失望のline of sight(視線)



「お前は何を言っている。いや、やっている?これは人がやってはいけないことだ!それが理解できていないのか。」

セーレンが悲壮感をにじませ、吠える。


「はあ、何を言っている。これは神聖なる探求だぞ、何が「やってはいけない事」だ。

お前こそおかしいぞ。」

デニット・サキカサヒルは、こいつ何を言っているんだと言う顔をしていた。

彼には理解できていない。

彼にとっては人などただの実験材料でしかない。


人は、自分の実験に使われることが最良なのだと思っている。

つまり、考え方がすでに人ではないのだ。


そして、彼の後ろにある試験管には小学低学年の少女が浮かんでいた。


「そうか、お前らが目標か。では、処分する。」

そういうとシグナルは歩を進める。

仲間は彼の歩みを止められない。


止めたくない、というほうが正しい。

この狂った生き物を野放しにしてはいけないと本能が理解していたからだ。


あのリセトでさえ、言葉を失っていた。


「き、貴様、何を言っている。

この人類の至宝である僕を処分するだと、それは神に祝福された僕に対する罪だと思わないのか?」

とデニット・サキカサヒルは後ずさる。


「何を言っている。お前のような害虫は駆除するに限る。それが依頼主から依頼であり願いだ。」

シグナルが淡々と語る。

そこには慈悲などない。


害悪を処分するという使命だけしかない。


「貴様、隊長ですら自分の娘を差し出したんだぞ。貴様らもこの崇高な実験の為に

自分を差し出すのが道理だろうが!」

少し、慌てるデニット・サキカサヒルに対し


「そうか、もう一つ目標がそれか。

お前の考えなど知らない、ただ一つお前を生かしておけば被害者が増えるだけだ。

ここで駆除する。」

シグナルの声に怒気が混じる。


リセトは理解した。

彼がなぜ機嫌が悪かったのか?なぜ相手に対して慈悲を掛けないのか?

これが答えだ。


ここまで非道をしていたのだ。

慈悲なんて必要ない。


実験体にされた人のためにこいつをこいつらを根絶やしにしないといけない。

そう思えてしまう。


そして、それが彼らのためである、と。

理解はしたくなかった、でも理解するしかなかった。


ここの実験結果はすべて消し去らないといけない。

それがここで玩具にされた人たちの手向けになるのだと。


「はは、貴様程度のモルモットが僕に勝てると思っているのか。」

と勝算があるようでまだ勝てるつもりである。


だが、その自信ごとシグナルの裏拳に吹き飛ばされる。


他の試験管に体を叩きつけられるデニット・サキカサヒル。

わずかに息ができなくなったようだ。


咳き込むデニット・サキカサヒル。


「貴様は、娘の病気を治してほしいとすがってきた親に絶望を突き付けた。

そして、その娘に失望を植え付けた。駆除するに値するゴミだ。

そんなゴミに負ける道理などない。油断もしない。

ただ冷静に静かに駆除するだけだ。」

シグナルの言葉とは別に怒気が込められる。


その証拠にシグナルが背負っている刀から紅いオーラがあふれ出す。

先程、結構な量を使ったはずなのにそれが補填されていた。

彼自身の怒りの量が使った分すら超えていたのだ。


それでも彼は冷静でいようとしていた。


「貴様はバカなのか、僕は約束は守っているよ。命だけは救ったよ。

命だけは、それに恩人なんだよ僕は。

そんな慈悲深い僕のような天才を失うことがどれほどの損失かわからないのかー!」

それが最後の言葉とはなった。

シグナルは構えたハンドガンの弾が騒ぐ相手の頭打ち抜く。

何度も何度も何度も弾がなくなるまで、それは彼の被害者たちの嘆きにも聞こえた。


弾を撃ち尽くしたシグナルは、振り向き試験管に浮かぶ少女に向かう。

彼女は虚ろな目をし、どこを見ているかもわからないまままっすぐに見ていた。


その試験管にシグナルは手を当て、

「その悪夢を終わらせる前にお前たちを弄んだ結果をつぶすまでもう少し待ってくれ。」

と静かにやさしさがこもった声で言った。


その何もかもに興味のない虚ろな瞳がシグナルを見つめる。


デニット・サキカサヒルは彼女に何をしたのか、わからない。

わかりたくもない。


だが、彼らは依頼を受けたのだ。


彼女の悪夢を終わらせてくれ、と。


今ならわかる。

この子を救うための方法がそれしかない事を

だから、少しでも気持ちよく逝けるようにしなければいけない。


シグナルに怒りではない、何かがそう心に響くように。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ