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GLAIVE (狂炎伝承)   作者: 団栗山 玄狐
Ver.05 異国の戦場
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act41 無自覚のmalice

act41 無自覚のmalice(悪意)


  

大華連邦主義国の山岳都市、離羽尾りはお

ここは山奥にあり、軍の研究施設がある都市でもあり、観光都市でもある。


ここの軍の研究施設び近くに人影がある。

マスク越しでわからないが圧力を感じる視線を放つ男・・・シグナルがいた。


「なにすねてんねん、これから始めんで。打ち合わせ通りにな。」

シグナルの後方に止めてある軍用車から声をかけたのはウィルスだ。

 

その近くにはセーレンとリセトもいた。


ここが彼らの目的地である研究施設である。


「ですが、本当にこのシフトでやるんですか。結構無謀だと思うんですけど・・・」

リセトは施設を見つめながらつぶやく。


「あのな、オレらのやることはほとんどが無謀やねん。

それになカナメの奴なんてもっと無謀なことしてんねん、それに比べたらまだましや。」

準備をしながらウィルスが言う。


「わかっています。それにこの作戦は私の中の弱さと向き合うためのモノでもあるのも知っています・・・けど。」


「納得でけへんか。そやけどな、現実がオレらに納得なんてさせてくれることなんかあれへん。

納得しようがしまいがそれは目の前にあるんや、あるがまま受け入れてどうにかするしかあれへん。

それは、お前が一番理解してるはずや。」

準備を続ける手を止めないウィルス。


冷たい言い方だと思うが、これが現実である。


思い通りにしたければ人よりも努力していくしかない。

どんなつらい思いをしてもだれも過程や工程に目を向けてくれる人なんていない。


それを理解して与えられた現実をあるがまま受け入れ、それに対処するしかない。

騒いでも喚いても何も変わらない。

時間と体力の無駄になるだけだ。


理解はできる、でも納得できないとリセトは思う。


「わかっています。ですから私はここにいるんです。」


「ええ答えや。ならあらためてシフトの確認や、シグナルは陽動をかねて敵を減らしてもらう。

ただ派手にあちこちを壊さんように。」


「ああ、努力する。」

と完結にこたえるシグナル。


「次にオレは研究施設の情報やデータをすべて消去又は破壊する。

そのオレにリセトはそこのねーちゃんのお守りをしながら同行する事。」


「ハイ!」

いい返事をするリセト。


「あと、各自目標を確認後対処すること、以上や。」


そんな打ち合わせの中、車の荷台で座り込むセーレンは静かにしていた。


相変わらず施設を見るシグナルは日本刀を背負っていた。

その日本刀は、鍔のあたりから赤い光が漏れ出していた。


異能の力を持つ日本刀の容量を超えているようだ。


「で、や。目の前の守備隊をまとめてつぶしてくれるか、シグナル。」


「そうだな、オレの容量が超えたというよりもこの刀の容量が超えたからな。

もちろん、やるさ。」

と言うとシグナルは研究施設に歩を進める。


研究施設前は武装した兵士でいっぱいである。

普通なら忍び込み目的をこなすのがいいのだが、今回は別だ。


施設の壊滅、施設内研究データの削除。及び目標の殺害だ。


ここでの問題は研究データの削除である。


その邪魔をさせないためには研究施設に敵兵が少ないか、いなくなることが前提条件にもなる。


ちなみにこの施設は隔離されており、脱出経路がない。

秘密を洩らさないための対策である。


なので研究データの持ち逃げは警戒しなくてもよかったのだ。

当面の邪魔なのは敵兵だ。


それをできるだけ集め、一網打尽する為にわざと目立つように布陣していたのだ。


それは見事に当たり、現在に至る。


だが、それに対しての疑問がセーレンにはある。

確かに戦闘能力は圧倒的な力を誇るシグナルだが所詮は1人、個人の力で数の力にはかなわない。

体力や精神力には限界がある。


相手が数で責めてくれば交代で責められ、休むことができなくなる。

個人では追い詰められるのが当たり前になるためだ。


なので個人が大人数を相手に戦う場合は、奇襲か潜入が前提になる。

短期決戦が最善なのだ。


でも、彼は圧倒的な兵力を集めさせ、その上単騎で攻略しようとしている。

正気の沙汰ではない、無謀でしかないと考えて居た。



シグナルはお構いなしに敵陣に向かっていく。

チームメイトの二人もそれを止めることもしない。


馬鹿なのか、と思える状態だ。と思うセーレン。


だが、敵兵より警告がされるとシグナルは歩みを止め、背負っていた刀を引き抜く。

引き抜かれた日本刀の刃には濃い紅のオーラがまとわりついていた。


紅のオーラは、きれいに見えるはずなのだがそれは禍々しく感じる。

シグナルは、その刀を地面に突き立てた。


刀が突きたてられたところから紅いオーラの輪が広がる。

それはまるで池に落ちた石が水面に広がる波紋のように地面に広がっていく。


そして、その様子に唖然とする敵兵たち。

その波紋が敵兵を通り抜けていく度に倒れていく。

敵兵のすべてを波紋が通り抜けたときには立っている者はシグナルたちだけとなった。


ほんのわずかな時間で30人以上いた敵兵が無力化した。



その状況を驚愕の表情を浮かべ後ずさるセーレン。

「な、なによ!これ!」


「何って、見た通りや。制圧終了や、それにお前さんの疑問の答えでもあるやで。」

ウィルスが静かに答える。


「そんなの見ただけでわかんないわよ!」


「えっとですね、その疑問はここの正体を見極めてからでいいんじゃないですか。時間もないし。」

リセトが申し訳なさそうに言う。


「そうやな、その通りや。アンタはまずここで何が行われているかを知る必要がある。

ここでの研究結果がフォグ・シザーズに反映されてんのやから、理解しとかないかんやろ。」


「そうなのかもしれないけど・・・」


「今は我慢してください。あなた自身の問題でもあるんですから・・・って言うよりも

あなたは捕まっている立場なんだからこちらに従ってください。」


「う、ん。そうだね、ごめんね。」


「さて、話は済んだみたいだな、先に進むぞ。」


「でも、オレらが中を見てる間に相手さんが逃げだしたらどないすんのや?」


「ああ、それな。罠は仕掛ける。

ここに転がってる連中と同じように精神を破壊させてもらう。」


「え、シグナルさん。ここの人たちって生きてますよね。」


「ああ、体は生きている。心は壊れているから植物人間って状態だ。」


「でも、前回は意識を奪う程度でしたよね。」

慌てるように確認するリセト。


「今回は、そこまで手加減してやるつもりはない。この施設の関係者はすべて心を破壊する。

今までの罪の報いを受けてもらう。」


「そんな乱暴な!」

と抗議するリセト。


「な・に・が、乱暴なんだ。お前はこいつらが「何を」してきたのか理解できていないようだな。

ウィルス、目的地まで一緒に行くか?」


「そやな、こいつにも見たくもない現実ってやつを見せておいた方がええかもしれんな。わかった、いこか。」


その返事とともに一行が進みだした時に


「忘れ物だ。」

とシグナルはいい、刀を地面に突き立てる。


今度は紅いオーラが約半径三メートルに広がり、今度はその状態でとどまる。


紅いオーラの沼のように。


「なんだこれは。」

セーレンが尋ねて来た。


「さっき敵兵を倒した波紋壁の設置型だ。そうだな波紋沼とでもなずけるか。指定したもの以外がこれに触れれば

さっきの兵隊どもと同じように心を破壊する。ここから資料を持って逃げ出す連中用の罠だ。

ここの資料はすべてここで壊す。持ち逃げなんてさせん、目標どもが成仏できるようにしないとな。」

とシグナルは静かにドスの聞いた声で言う。


セーレンはその迫力に押されそれ以上言えなかった。

それに、ここの連中が何をしていたのかが気になってきた。


シグナルの迫力に加えこのウィルスでさえ、いらだっているように感じていた。

さっきの戦闘でもここまで分かりやすくなかった。


なのにここまで分かりやすい。

何をしていたのだろうか、と。


「ほな、行きましょか。目的地はここの6階、実験体管理室や。ここで見せられる真実を見てから判断してくれや。

なんでオレとシグナルがいらだっているか、をだ。」

と言うと一行は階段を上り始める。


エレベータは捕まる可能性があるため却下が出ていたからだ。

対応しやすい階段を上ることになったのだ。


登り切り、6階に付き一行はその部屋を見る。

そのフロアが一つの部屋になっていた。


そこには人が一人入るほどの大きさの試験管が天井から床までつながっていた。

それが見える限り数百基ある。


もちろん、その試験管の中には中身があった。

それを見たセーレンとリセトはそれぞれが口元を手で押さえるしぐさをする。


中のモノは人の姿をしていない人だったモノが浮かんでいた。


体の一部が得体のしれないもの変わっていたり、機械が埋め込まれていたり、他の獣と融合されていたり、と様々だ。

およそ人が人にしていいものではない。


ここには人の悪意が満ちていた。


「どうだね、この偉業は人が到達すべき一つだと思わないかね。」

としたり顔で話しかけてくる白衣の青年がいた。

イヤらしい笑顔を浮かべてくる。


「デニット・サキカサヒル、なんでお前がここにいる。」

セーレンが吠える。


「なんだ、セーレンじゃないか。そうか!お前もオレの崇高な実験のためにその体を差し出してくれる訳だ。

助かるぞ、こないだなんて隊長が自分の娘を差し出してくれたしな。人手はあって損はない。

実験がはかどるからな。」

と、嬉しそうに狂った人間は・・・デニット・サキカサヒルは叫ぶ。


彼には罪悪感はない。

ただ、実験のために人間をモルモットに使うことしか頭にない。


ソレは、ただの無邪気な悪意の塊だった。


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