act39 燃えるbase
act39 燃えるbase(基地)
とにかく、カナメのの第一目標は敵を混乱させることである。
これは、まだ途中である。
カナメは集めた武器を手に軍用車に近づく。
それぞれに時限式信管をつけたプラスチック爆弾をセットしていく。
3台がそれぞれ別の方向に向かうようにしてまず1台目が基地右側に向かうように
ハンドルを固定し、そしてアクセルも固定してからブレーキを離し向かわせる。
2台目はハンドルの固定はせずに基地左側に向かうようにして同じように走らせる。
3台目はギアをバックに入れハンドルを固定し、走り出させる。
これは、出て来た整備建屋に戻るようにしているのだ。
各車に仕込んだ時限式の時間は別になっており、一番早いものは3台目になる。
この車は建屋に入ると同時に爆発するようにセットされており、
建屋一つ分は吹き飛ばせる量のプラスチック爆弾を積んでいた。
その目論見通り整備建屋は3つ並んでおり、その右端に車がバックで突っ込んでいき
そして、吹き飛ぶ。
その後、炎が吹き上がり燃え広がる。
さらに残り2台も吹き飛ぶ。
基地のあちこちで炎が立ち上る。
この混乱に乗じてカナメは基地管理棟に忍び込む。
基地が混乱状態のため、基地管理棟は人手がない。
でもここでも人がいる所があった。統括指令室だ。
基地で起こる問題の情報を集めるために統括指令室はてんやわんやである。
「状況の確認はまだか、敵は被害状況はどうした?」
上官らしき男が大きな画面とたくさんの端末が並ぶ統括指令室で激を飛ばす。
だが、統括指令室の士官たちはそれどころではない。
情報が錯綜しているからだ。
今この基地内で何が起きているのか、被害はどうなっているのか、あちこちからくる連絡と現場に確認を入れて回る。
現場からすればそれどころではない、火災が発生している所からの避難や消火、ケガ人への対処それに被害確認などに
人手を割かれそれどころではない。
だが、統括指令室は統括指令室で現場状況確認を行いたい、双方の言い分があり、文句の言い合いになっている。
このため、一向に情報確認ができない状態だ。
そのため無駄に時間だけが過ぎていく。
士官たちも必死で現場に確認を取ろうとするができない、そんな状態で上官からの文句が飛びあちこちでイライラが募っていく。
指令室のあちこちで怒号が響く。
そんな状況を統括指令室の上にある部屋から見ている男性が二人いた。
その部屋は統括指令室が一望できるようにガラス張りにになっており、現状が確認できるようになっていた。
一人はガラス越しに指令室を見下ろし、もう一人は、その部屋のドアの前に立っていた。
「何事だ、これは。お前が自信をもっていた士官どもが何の役にも立っていない事が見事にわかるな。」
白髪が混じる頭部にわずかなしわが刻まれた顔に目つきの鋭い初老男性が言う。
「こんなことは想定しておりませんので各自の対応が遅れております。」
眼鏡をかけ、冷ややかな目をしながら答える。
細身で長身、インテリイケメンに見えるその姿とは別に内心は腹黒さが見える男性だ。
「ここは軍事基地だぞ。いつでも想定外のことが起きることなど当たり前に起こるところだ。
こんなことで慌てられると困るな。奇襲くらいでこんなに慌てるとはな、情けない限りだ。
いつも自慢げに言っていた割には大した対応能力だな・・・」
「いえ、こんな事は稀です。相手が周到すぎます。こちらの警備の隙間を見事についてきているように感じます。
相当な手練れだと思われます。」
「いや、そうじゃないね。相手はオマエがいつも脳筋だ、学習能力がないだ、と見下していた相手だよ。ルバト・ノイター。」
扉の側から聞こえる男性の声。
慌てるインテリ眼鏡・・・ことルバト・ノイター。
振り向くと扉のの横には腕を組みもたれかかる男性がいた。
その姿をみて狼狽するルバト。
「貴様はカナメ・ブロート。どうやってこの部屋に入った。いや、まさかこの状況は貴様が作ったのか?
いったいどれだけの人数と手練れを雇った。」
「は?何言ってんだよ。相変わらずの思い上がりだよな、ここにはオレ一人だけで来たんだよ。
ほんと昔と変わらずスカスカな配置と対応力だよな、お前。」
とカナメは煽る。
「きききききききき貴様、この私をぶぶうっぶうっぶぶう侮辱するのか。脳筋風情が!!!」
と頭に血が上り、言葉うまく出ないルバト。
怒り心頭のご様子だ。
相手を見下すことしかできず、自分と相手の実力を冷静に検証できないくせにプライドだけは高いのだ。
典型的な国を亡ぼすエリート意識だけが高い人間だ。
「隊長、お久しぶりです。悪いですが、ここと研究所は消しますよ。」
静かに歩みを進めるカナメ。
それに対して初老の男性・・・シュトーレン・ヴァルトは、静かにそれを見つめる。
そして、
「それが、できると思っているのか。カナメ。」
静かに見つめるがあふれ出る膨大な殺気が今まで怒り心頭のルバトは腰を抜かし、その場にへたり込みおびえさせる。
「ええ、当然ですよ。」
カナメは部屋中を包む殺気をものともせず、歩みを進める。
「きききっきいにいき貴様一人でこんなことできるはずがない。何人いるのだ、答えろよカナメ!!」
わずかなプライドでカナメに奇声あげながら問うルバトに対し、
「ほんと、昔から自信満々のわりに状況確認とか抜けてるよな、おまえ。
オレ一人しかここには来てないよ。認めれないのか、無駄に高いプライドのせいで。」
とカナメは言うとハンドガンをホルスターから抜き、ルバトを撃つ。
これは、もう面倒な平行線の話は面倒になったからだ。
どんなに話してもルバトは自分の非を認めないバカだからだ。
この状況では時間の無駄だ。と判断したためでもある。
ルバトは、その場に崩れ落ちた。
先程まで騒ぎた立てていた奴がいなくなるだけで静かになる部屋には緊張感が支配される。
「なかなかものだ、以前あった甘えが消えているなカナメ。だがそれだけではまだ話にもならないがな。」
「いえ、そんなことはないでしょう。今回の首謀者のアンタのご要望にお応えしに来ただけですから。
オレを指名して自分とこの基地を亡ぼしてほしいなんて考える心の弱った老兵の相手なら・・・ね」
と言いながらハンドガンをシュトーレンに向けて撃つ。
だが、シュトーレンはそれに対して動きもしなかった。
シュトーレンの後ろのガラスが派手な音を立て吹き飛ぶ。
その後、カナメは手持ちの手榴弾を4つすべて投げていた。
これもよけもしないシュトーレン。
投げられた手榴弾は割れたガラスの向こう側、統括指令室に落ちていき・・・そして爆発する。
「部下を見殺しですか・・」
カナメは静かにつぶやく。
「無能にようはない。」
「何言ってんですか、心にもないことを。」
「そう見えるか。」
「ええ、今のアンタは死にたがっているようにしか見えませんね。」
シュトーレンの後ろから燃え上がる炎と煙。
2人の決着を阻むものはない。