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GLAIVE (狂炎伝承)   作者: 団栗山 玄狐
Ver.05 異国の戦場
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act36 現実の戦場でwhat you see

act36 現実の戦場でwhat you see(見たモノ)



軍用車のそばには護衛と思しき人物が3人倒れており、士官らしき女性が拘束されていた。

4人とも意識はなく、ただまだ息はしていた。


その中で同じような服装の三名がいた。

一人は静かに立っていた。

だが隙は無かった。


一人は少し状況に飲まれている様だった。

戦場、自分が今までいなかった場所で気持ちが落ち着かないように見える。


もう一人はそばで1mほどの岩の上で座り込んでいた。

慌てることなく周囲を警戒していた。


「ほな、リセト。その士官さんから記憶を読み取ってくれるか。後でいるさかいに。」

と流暢な関西弁で話してきたのは岩の上で座り込んでいた人物だ。


慌てて落ち着きがなく周囲を見ていた1人・・・リセトに命令を出していた。


「はい、わかりました。」

と・・・リセトは元気よく返事をした。

声は若い女性、十代くらいに感じる。

初めての戦場で浮足立っているようだ。


倒れている女性士官そばに膝をつき彼女の頭上に右手をかざす。

これはリセトの能力である侵入を行使しているのだ。


相手の記憶に侵入ができ、情報を取得できる。

ただし、起きている相手には使えない。

意識がない状態か眠っていないと使えない。

この能力は人、動物関係なしで使えるのは便利だが動物の場合はうまく記憶を読めないのが難点である。


しばらくして、リセトは

「この士官から情報を抜きとれました。」

元気よく答えた。


「ようやった。じゃあその情報からオレらが必要とする情報だけを今から報告してくれるか。」


「了解です、ウィルス。まずは・・・」

と岩の上で座り込んでいた人物・・・ウィルスに手に入れた情報を報告し始めた。

ここに来る前に彼女は今回の作戦のレクチャーを受けており、どういった情報が必要かは理解していた。


なのでかいつまんで、必要と思われる情報を曖昧ではあるが報告していた。


10分ほどかかったが報告は終了した。



「おい、おわったぞ、シグナル。」

とウィルスは周囲を警戒していた男性・・・シグナルに声をかける。


その声を聴いて

「わかった。」

の一言返事すると、倒れて入る士官たちのもとに歩みを進める。


そして、サイレンサー付きのハンドガンを構え、倒れている相手に


2発ずつ打ち込む。


撃たれた相手はわずかに体が撥ね、生命活動を停止させた。


それを見ていたリセトは、

「なぜ殺す必要があるんですか!!」

と感情的にシグナルを責める。


シグナルは、静かにハンドガンをホルスターにしまい

「なら、お前はこいつらをどうするんだ?」

と、リセトに対して静かに答えを迫った。


「はあ、生かしておくに決まっているじゃないですか!こんなの無益です。」

さも当たり前だといわんばかりの返答だった。


「生かしておいてどうする?逃がすのか?」


「そうですよ、殺す必要がないのに殺すのはただの殺人です。当然ですよ!」


「逃がしたとして、こいつらが援軍を連れて戻ってくるとは思わんのか。

それともこのまま拘束した状態で生かしたまま見捨てるか。

逃げだせば援軍が来てオレたちが窮地に陥る。

逃げ出せなければこいつらはいずれ餓死するまで苦しむことになる。」

この言葉に今まで熱くなっていた頭が急速に冷える。


確かにその通りである。


無駄に苦しませるか、自分たちが窮地に陥るか、だ。


「そんなの詭弁です。そうなるとは限らない。」

必死に殺さない理由で食い下がる。


「なったとき、どうする。お前は多くの兵士に囲まれた状態で乗り切れるのか。」


「いや、でも、それなら彼らを引き連れて行動すればいいだけじゃないですか!」



「それで彼らに反撃されたときどうする。又は彼らのせいで他の部隊に追い詰められたらどうする。

オレたちの手持ちは少ない。武器も食料もお前のきれいごとが今のオレたちを追い込み殺す。

とは判断できないのか。ここは戦場だ、平和な日本でも漫画の世界でもない。

敵でも助ければ改心するなんて幻想だ。現実は常に最悪を突き付けてくる。

それでもお前は何とかするのか、できるのか。」

シグナルは、戦場での現実をリセトに突き付ける。




リセト自身初めての戦場でもある。


今まで平和な日本ですごしてきた彼女には、この国の現状はつらかったのだ。

ただでさえ、足でまといなのは理解できていた。


だからこそ、自分のできることは全力で行動してきた。


でも、シグナルの先ほど行動だけは理解できなかった。


いや、シグナルの言い分は理解できた、納得もできた。


でも認めるわけにはいかなかった。

認めてしまえば今までの自分の中にある正義感が壊れてしまうような気がしていたからだ。


人の命は星よりも重い、そこまでは思わない。

攻撃してくれば相手も殺しても構わないとも思っていた。


でも無抵抗な敵兵を殺すことが正しいとは思えなかったのだ。


その理由も先ほどのシグナルの説明で理解はできたのだが・・・感情が認めることを許さなかった。


「そのへんにしとき。シグナルは、オレたちの安全を最優先において物事を考えとる。

それがいかに非情な行動でもそれが最善になるようにな。

お前の考えややさしさ必要や、でも時には非情になることもできんと、

ここでは自分だけやなく仲間の屍をさらすことになる。」


「ですが、・・・」

リセトは言葉が続かなかった。


シグナルの・・・彼の行動が仲間のためにしたことだとはわかってはいた。


「今はいい、いずれお前にも非情の選択がやってくる。この業界にいる限り、その時になればわかる。

たとえ、お前がどんなに嫌がってもな。」

シグナルの突き付ける冷たい現実に苦悩するリセト。


リセトは、いつも優しく紳士的に行動するシグナルがここまで非情に行動するとは思っていなかったので

ショックが大きかったのだ。



改めて感じ取る非情の選択。

命を天秤かけることが当たり前の戦場。


テレビやスマホ越しに見ていた自分がどれだけ傍観者で

その現実に起きていることを娯楽としてみていたかを痛感するリセトであった。

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