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GLAIVE (狂炎伝承)   作者: 団栗山 玄狐
Ver.05 異国の戦場
34/54

act33 平和という幻想のないworld

新章です。

今回は、いやな内容でもあります。

戦争と言う悲惨な世界を伝えたくて考えました。

考え方としては非常にいやな展開や考え方を盛り込んでいるます。

でも、逃げることもできない人たちもいます。

冷たい現実ですがこんな世界もある。こんな世界史なようにしていきたいと思っていただければ幸いです。


act33 平和という幻想のないworld(世界)



硝煙と爆音の鳴り響く荒野。

暗闇の中乾いた破裂音が鳴り響く。


その中を駆け抜ける人影が二つ。

岩陰に隠れたり、周囲を警戒しながら走り抜けていた。


ここは戦場。平和な日本ではありえない理不尽な世界。

人の命が軽い、世界であり力こそが正義の原初の世界である。


日本いればテレビやスマホの画面越しに広がる対岸の火事のようなものだろう。


画面に映る悲惨な光景も安全が約束された場所より見ているだけなら

ドラマや映画を見ている感覚でしかわかっていない。


可愛そう、大変だ、悲しいなんて思っても、ただの感想であり現実の光景として感じてはいない。


ただの娯楽の一つでしかないのだ。


なんせ、自分はその当事者ではなく、ただ見ているだけの傍観者なのだから。



だが、ここは違う。

ケガをすれば痛みが、苦しい思いが痛々しい現実として襲い掛かる。


この国には、硝煙の匂い、ひりつく空気、観光客を獲物ように狙う鋭い視線。

油断すればすぐに足元をすくわれ、はらわたを食い破られ骨までしゃぶられるところだ。

五体満足で変えるか、すべてを失うかの二択しかないのだ。


力を持つものが持たざる者を食い物にする弱肉強食を主とする自然界のあるべき姿。

この荒野の中では等しく与えられる死を常に背中に感じ

生きなければすぐに食い殺される。

闇夜の中静かに目的地を目指し進んでいた。


ある程度、落ち着けそうな所まで来ると二つの人影は座り込んだ。


「ここでいったん休みましょう。これ以上強行軍は無理がありすぎる」

と女性の声がする。


「そうだな、今休んでおかないとえらいことになりそうだ」

男性はそれに賛同した。


人がいないこと確認し、また、周りから見えそうにない岩に囲まれた所で火を起こす。

暗がりの中浮かび上がる男女の顔。服装は黒ずくめで軍人と言うか忍びに近い感じだ。

女性は金髪で欧州系に近い顔つき、美人さんでスレンダーな感じでやや背は低めである。

男性は黒髪でアジア系に近い顔つきイケメンには遠いワイルドな顔つき

体格的にはやせ気味で背は高めである。


「カナメ、今回のことは申し訳なかったわね。約束あったのでしょう」

女性が口を開く。


「まあ、しゃ~ない。帰ってからみんなには平謝りするから多分大丈夫だ」

と男性…カナメは答えた。


本来、カナメは帰国し故郷の村である作戦に参加する予定だったのだが、今回急な依頼が舞い込んだため

帰国を断念。今に至るのだ。


その依頼を持ち込んだのカナメの今の相棒であるこの女性、セーレン・シュヴァルツである。

彼女は焚火の反対側に腰を下ろしていた。


「でも、無理な依頼だったのにここまで一緒に来てくれてありがとう」


「まあ、依頼を受けてここまで来るのに3回も襲撃されるとは思わなんだ」


「そうだよね。こう立て続けだと大変かな。でも、ここは街中でも戦争が起きている紛争地域。

 常に狙われているのが当たり前なんだよ」

セーレンは、笑顔を浮かべながら冷たい口調で語る。


「まあ、そうなんだろうけど…」

とカナメは思いを飲み込む。


たとえ、戦場であろうともこう規則正しく狙われたことに違和感を感じていた。


この国に入国してすぐに二人組に襲撃され、セーレンを持っているときに四人組に。

その後、移動して移動先で六人組にと人数も規則正しく増えていた。



まるでこちらを試すかのように。

これほど見事な規則性ならば余程のおバカさんでない限り、何かあると思うのが一般的な考え方だろう。



だがセーレンは、それを戦争が起きている紛争地域でよく起こる強盗だと言い張る。

この事に違和感を感じるのだ。



今回、元同僚でチームを組んでいた彼女からの依頼。

なのにこの国着いて間もないうちに自分を試すような襲撃。

そして彼女の言動。



怪しさ二割り増しである。


気にしすぎだよ。カナメは今いる国で平和ボケしているんじゃないの」



「そうかもな」

カナメは警戒を強めた。



今回の依頼は何かある。そう思えて仕方がない。

この件にカルウや他メンバーに助けを求めようか考えもした。

だが、これはオレ自身の問題だ。よほどのことがない限り相談もできない。


この個人的な用事でこないだの招集もブッチしたばかりだし・・・

頼りにくい状況でもある。


それでも保険をかけ、救援要請はしていたが・・・。


彼女はカナメが日本で農業をしていると思っている。

実際そうなのだが、強めにごまかせば疑いの目が向けられても

平和ボケの国にいてこの国の空気感からずれていると思われるカナメから

強く警戒されないと思っているようだ。


だからこそ彼女は今のカナメに依頼を出していた。

それ以上にカナメ自身にも役割を期待してなのだが・・・。




だが彼女は知らない。




カナメが今どこで何に所属しているかも。




彼自身は今、セーレンに疑念が多く警戒している。

彼女の言動には不明な点が多すぎる。



その上カナメの行動を著しく制限してくるのだ。



まるで何かを調べさせないようにしているかのように。

そして、こちらを観察しているかのように。



フォグ・シザーズ。

大華連邦主義国の特務部隊。

肉体改造に精神操作、薬剤投与による身体強化。

サイボーグ化など、およそ人を人間としてではなく、兵器として扱われる部隊だ。



その部隊は裏の世界ではトップ10に入るほどの恐ろしい所である。



カナメ達はその部隊を壊滅させた。

その非人道的な所に愛想が尽きたからだ。



そして、今回セーレンからの連絡でフォグ・シザーズが復活したのだと。

さらにその復活したフォグ・シザーズを調べるために残りの生き残りである元隊長シュトーレン・ヴァルトが向かったのだと。



セーレンからの依頼は具体的には復活したフォグ・シザーズを調べることと

元隊長シュトーレン・ヴァルトを救出することだ。



普通なら疑うことなく依頼をこなすところだが。



疑問は残る。



襲撃の件、そして復活したフォグ・シザーズの情報の出どころだ。

不可解なことが重なりすぎである。



と物思いにふけるカナメに

「カナメはいいわよね、平和ボケできて。ここじゃ平和なんて夢物語だもの」

セーレンは夜空を見上げながらつぶやくように言う。



「だから、オレを試すわけか。力が…戦う力があるのかどうかをか」

地面をうつむきながらカナメは本題を語る。



「それは、どういう意味なの」

セーレンの纏う空気が変わる。

緩やかな柔らかいものから刺すような冷たいものへ。



「そのままの意味だよ。今回の君からの依頼はオレをここに呼び出すための餌だろ。

 そして、オレの利用価値を確認するための襲撃だ。この考え方が、一番しっくりくる回答になる」


「それは、ここで私と戦うという意味ですか。

 平和のぬるま湯の中ですごしたあなたが戦場の中で生きて来た私に勝てるつもりですか」


「強さは平和の中にいただの、戦場にいただの、で決まるわけじゃない。

 精神を身体をどう鍛錬したかで決まる」


「それは、私が相手を見抜くことができていないといいたいの?」


「そうだね、そう言っている。オレが見る限りセーレン、お前は弱くなったのか」


「私が弱くなったですって、馬鹿にするな。

 常に戦場を駆け回る私が、平和のぬるま湯の中でいたあなたより弱いということなのかしら」

セーレンの視線が針が刺すようなものから刃物のようなギラついたものに変わる。


「なら、試そうか。今ここで。その方が早いだろう」

とカナメがセーレンに正対するように立つ。


「いいわよ、いい加減私もめんどくさくなってたし茶番を終わらせましょうか。

 どうせ、こっちの思惑もばれてるみたいだし。それにどっちが上かはっきりさせましょ」

セーレンの顔が優しい顔つきから凶暴な獣へと変わる。


図星を突かれ平常心を失いつつある彼女は、精神的に未熟であるというしかない。


カナメは心の中でため息をつく。


こうも軽くあおるだけで簡単にかみついてくる。


これほどチョロい相手はいない。


主導権をこちらに譲渡してくれるのだから。

カナメはそう思うと、


「わかりやすい奴だ。別に構わんが今回の茶番を仕掛けた隊長か、しかもオレにお前っていう足かせまでつけて

動きを制限させて」

追い打ちをかける。



「なにそれ?あんたに足かせ何てつけてないでしょ。何言ってんの?」

入れ食いの一本釣り状態である。



「お前がその足かせだよ。」


「何言ってんの?わけわかんないわよ。」



「3回目の襲撃でお前も襲われていただろうが、オレが助けなかったらお前もどこぞの川に浮かんでたはずだ。」



「だから、私も被害者でしょ。それにこうして情報も仕入れて、フォグ・シザーズの本拠地に案内しているじゃない。」

立ち上がり、鋭い視線をカナメに飛ばす。




彼女自身与えられた役割に気づいていない。



その盲目的な考え方がカナメを油断させるために有効であることを。





そして、




自分がカナメを釣り上げる為の活餌であり、彼の力を100%発揮できないようにする為の足かせであることに。



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