act26 静かなるanger
戦闘シーン満載出す。
調子に乗ってしまいました。
act26 静かなるanger(怒り)
目的地である駐車場にマイクロバスが止まる。
資料館や石碑がある駐車場である。
そこは、車が一台もなくひとけもない。
資料館には休館の札が入り口にぶら下げてある。
そんな場所に一団はバスを降りた。
ヒカラ司祭はあたりを見回す。
確かに朝が早く人が少ないならまだわかる。
だが人がいない。
あまりにも不自然だ。違和感を感じていた。
だが、目的地である予言者《最新コンピュータ》が目の前である。
わずかな違和感など目的のものを手に入れれば物の数ではないと思いなおす。
その目的のものがあるのは体育館のような建物の地下にある。
だが、その建物の前に一人の男性がうなだれながら座り込んでいた。背中に細長い袋を背負っていた。
警戒する必要性を感じなかった。ランニングの休憩をする人程度にしか見ていなかったのだ。
だが、彼らはおごっていた。
自分たちの力によっているため。使徒と呼ばれる兵隊を持っているため。
これから起こる事態を予測できないため。
建物の前でうなだれながら座り込んでいた男性が白装束の団体を見つけると
軽くため息を吐き、勢いよく立ち上がる。
そして、団体に向けて足を進める。
ある程度近寄ると彼の前に6人の男女が立ちふさがる。
まるでSPのように。
そして、ヒカラ司祭が口火を切る。
「なんのご用かな。今は急用があるので入信は後回しになるが」
ととぼけたことを言う。
「うん、御託はいい。もうあんたたちに付き合うつもりもない。
村からさっさと出て行ってくれ。」
と相手の言い分に付き合わないという感じの強い口調で男性-カルウは言う。
「ご挨拶だね。われわれの祝福を・・・」
と言いかけたヒカラ司祭に対し言葉を遮るように
「もういい。面倒なんだよ、あんたら。正義は我にありか。めんどくさい。
ガキを道具として使っている時点できれいごとを言っても意味がない。」
とカルウは言い捨てる。
表情は変わらない。でも、圧がある。
ミナミやミサキは少し戸惑っていた。
不愛想なのはいつものことだ。
だが、物腰は柔らかい。そばにいると温かいという感じだ。
だから、こんなに威圧感を感じるのは珍しい。
もっとのんきな人だと思っていたのだ。
確かに武道の心得があるのも知っていた。宗教団体の先遣を撃退したところも見ている。
その時でもここまでの威圧はなかった。
だが、息苦しくなるような威圧感はこの周辺を覆うように出ている。
そう感じたのは、ユタカとナズナもだ。
だが、ユタカは少しだけ感じ方が違っていた。
カルウのことを少しは理解できているつもりだからだ。
割と天然であるのだが変にまっすぐな所もある。
ひねくれている所もあるが常識人である。
彼が放つこの威圧感は、彼自身の怒りによるものだと。
自分で言っていた。『その子たちは教団の兵隊として扱われている』と。
だが、いざその事実を目の前で確認してしまうとそのバカげた行動をしたこの宗教団体を許せないようだと。
彼は、優しすぎる。でも、彼自身はそれを否定している。
『オレは優しくない。優しい人間は人を傷つけるたりしない』といいきる。
でも、他人のために怒ることができる人間を優しくないといえない。
まあ、彼は納得しないだろうが。
「なかなかな殺気だね。まるで戦場にいるようだ。
だが、そんなに殺気を駄々洩れにしているようでは、三流もいい所だよ。
おっと、御託はいらないのだったね。では、ご退場願おうか」
そういうとヒカラ司祭は右腕を上に振り上げる。
「片付けろ」
と冷たく言う。笑顔を浮かべたまま、冷徹に。
その言葉を合図にカルウの前に並ぶ6人がそれぞれの異能を放つ。
「エアハンマー」
「スタンバレット」
「ヒートガン」
「ウエルボール」
「エアボール」
「ウィードウィップ」
6人がそれぞれに放つ異能がカルウに襲い掛かる。
カルウは6人とその先にいるヒカラ司祭を見据える。
そして、自分の腰に両手を回し、腰になった短刀を二本引き抜き体の前で構える。
そのまま、前に踏み出す。
カルウは迫る火の玉と水の玉を短刀で切り裂く。
切り裂かれた玉は霧散する。
空気の玉は陽炎のように迫る。それも簡単に切り裂く。
次に電気の玉と陽炎のように揺らめくハンマーがカルウに襲い掛かる。
ハンマーの方は切り裂き。電気の玉はかわす。
短刀で切り裂くとそのまましびれてしまうためだ。
スタンガンの電極にわざわざ触るバカはいない。
さらに木の蔓が二本カルウに迫る。
一本はかわし、もう一本は切り裂く。
そして、かわした蔓も切り裂く。
カルウはヒカラ司祭を見据る。
ヒカラ司祭は「バカな」と小さく一人ごちる。
今までの人間はこれで仕留めていた。
だが今回の相手はそれができなかった。
戦い慣れているという感じだ。
だが、ヒカラ司祭は、子供二人を肉の盾として自分の前にいる。
平和ボケしたこの国人間たちの無駄な良心に漬け込むためだ。
常識だ、卑怯だと言ってまともに正面からしか来ない。
戦場でそんなことを言った人間から死んでいくこと当たり前のことなのだが
平和ボケしているせいかこの国人間たちはちょろいと思っていたのだ。
念のために副官である隣の女性-ブロム・シュテットに洗脳の異能をカルウに向けさせていた。
なかなかしたたかである。
それも今のカルウには火に油だった。
さらに圧力が増す。
のどが渇くように冷汗が止まらない。
見た目は不愛想な優男にしか見えない相手にこうまで威圧を受けるとは
ヒカラ司祭とブロム・シュテットは慌てる。
落ち着こうとは息を整える。
数では圧倒的にこちらが有利である。
だが、それでも不安がまとわりつく。
なぜ、こんな想定外が目の前にいるのだろう。
とヒカラ司祭は思った。
しかし、想定外はさらに続く。
「いや、素晴らしい身体能力だ。かんし・・ん・・・」
と、ヒカラ司祭が話している途中でカルウは走り出す。
それを見てあっけにとられたのだ。
普通、話しかけられれば人は何事かと一度立ち止まる。
だが、カルウはそうではなかった。
カルウは、自分から見て一番左側にいる蔓使いの女性に向かっていく。
もちろん、蔓使いはカルウに対して攻撃を開始する。
木や雑草を蔓のようにし、相手を捕縛や鞭のように使い攻撃をする。
カルウはそれをよけたり、または両手の短刀で切り裂き、突き進む。
そのスピードは決して落ちることはない。
だが、激しくなる攻撃にさらに追い打ちが来る。
残りの能力者が攻撃を始めた。
しかし、それは不発に終わる。
無数の蔓が舞い踊る中に空気や水、電気や火の玉などが降り注げばどうなるかの
想像ができなかったのだろう。
彼らは相手を攻撃することしか考えていない。
これも洗脳の弊害だろう。
蔓は、味方である使徒たちの攻撃でズタズタに引き裂かれた。
そのおかげで蔓使いとカルウとの間に空間があいた。
カルウはそれを見逃さず、一気に間を詰める。
そして、蔓使いの溝内に右こぶしを叩き込み意識を刈り取る。
さらにカルウの攻撃は続く。
その横にいた水使いの男性の右腹部に中段蹴りを叩き込む。
叩き込まれた水使いはボールのように後ろに飛ばされ、
さらに横にいた空気のハンマーを使う少年とその後ろにいた電気使いの少女を巻き込む。
それだけではすままかった。
その横にいた、ヒカラ司祭とブロム・シュテットを巻き込まれ倒れる。
その様子見たカルウはさらに攻撃を加速させる。
反対側に立っていた空気使いと火使いに向かう。
もちろん彼らは反撃するが、彼の動きをとらえることはできない。
カルウは右手に持っていた短刀を左手で持つ。
左手で二本持つような状態にし、右手を手刀のように構え、目の前の空気使いの女性の首元に叩き込み意識を刈り取る。
そして、前のめりに倒れこむ空気使いの背中を跳び箱の台のように飛び越え
その奥にいる火使いの男性の腹部に蹴り入れる。
そのあと、カルウは、火使いの胸倉をつかみ反対側に回りこむ。
その瞬間、立ち上がった電気使いの少女がカルウに電気玉を打ち出す。
その電気玉は無情にもカルウには当たらず火使いにあたる。
それを確認したカルウは火使いを蹴り飛ばし、電気使いの少女にぶつけた。
この瞬間、教団自慢の使徒がすべて制圧されたことになる。
カルウは、動き出す前の場所に戻り、何もなかったように教団の連中を見据える。