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GLAIVE (狂炎伝承)   作者: 団栗山 玄狐
Ver.03 宗教団体《幸福の導き》
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act25 耐えるもの -立山ミナミ-

act25 耐えるもの -立山ミナミ-



どこで道を間違えたのだろう。


住み込みで働ける会社だった。


とてもよくいい会社だった。


小林マサオと津貫コウジ、そして梁ソウマ。


この三人が中心の会社で業績も好調だった。


でも、ある日を境に豹変した。


小林マサオと梁ソウマが交通事故で死亡した。


高速道路での多重追突事故。それに巻き込まれたのだ。


残った津貫コウジは有能ではあるが思い込みが激しく、

自己中心的だった。ありていに言えばわがままだ。


最初はうまく会社をかじ取りしてきた。


だが、身勝手な人間がうまく会社を経営できるはずもなく


責任を部下に押し付け始めた。


ついていけないと見限る人たちは次々と会社を去っていった。


私もそうするべきだった。でも子供を三人抱え会社の仕事と家事を両立していてはうまく動けなかった。


会社が荒れていくと彼がやってきた。


不気味な笑顔を浮かべた彼が。


いきなり会社を宗教団に変え、あまつさえ津貫コウジは自分の娘を教祖としてあがめ始めた。


そのころには、逃げ場がなくなっていた。


残っていた従業員は洗脳されるか、弱みを握られ言いなりになるしかなかった。


入ってくる人間は団体に入る前に洗礼と称した洗脳を施していく。


いつしか宗教テロ団体とまで呼ばれた。


そして、今度は村に移動するという話だ。


移動すべき村に潜入し情報を逐一連絡するように言い渡された。

下の子供二人を人質として。


上の娘は素直に一緒に来てくれた。でも、嫌だっただろう。


勝手な人間の勝手な言い分。それに振り回されることを。


我慢させて悪いことをしたと思った。


村に潜入してしばらくしてわかった。


小さな村だがいい人たちばかりだった。


心が痛んだ。


だましているようで。


でも、子供たちのためと言い聞かせて行動した。


そして、事は起こった。


連絡もなく突然の襲撃。


その襲撃はあっという間に収められたが改めて村の住人の身辺を調査された。


このことにより私のこともばれた。


でも、それでも村の人たちは優しかった。


特にお世話をしていたおじいさんおばあさんたちは私をかばってくれた。


励ましてくれた。


そして、上司からの提案もあった。


協力してくれれば、私たちを助けてくれると。


信じられなかった。でも信用はできた。表情もなく無愛想なくせに気遣いがうまく妙に優しい。


周りの人たちはただ不器用なだけという。


でも、それ以上に彼らに任せれば必ず何とかしてくれる。


と言ってくれるおじいさんおばあさんたちの言葉が決定的だった。


宗教団体が来る当日に向けて上司との打ち合わせを密にした。


起こるであろう内容をまとめ対処手段も指示してくれた。


そして、気持ちも整え方や冷静でいるためのノウハウまで教えてくれた。


まるで最悪のことが起きても大丈夫なように。


そして、「やけは起こさないでください。我々は必ずあなた方を助けます。

あなたは耐えてください。耐えることがあなたの戦いです。

その報酬としてあなたが無事にこの村で暮らせるようにします。

ジイサンバアサンにお願いされてますし、あなたの人柄は信用に値します。

だから、耐え忍ぶ戦いをあなたにしいります。我々、探偵社はお人好し集団ですから」

とひきつった笑顔で言った。


不器用にもほどがると思った。でも心地よい言葉だった。


だから、覚悟を決めた。私は耐える戦いをしようと


この人たちの信頼にこたえようと。


人形のような子供たちの姿をみても耐えた。


このことがなければ、娘と同じように暴れていたはずだ。

でも、今は耐えることが私の戦いだと思い耐えた。


必ず何とかしてくれる。


誰かがなんて知りもしない見えない人たちじゃない。


目の前で何とかすると決意の瞳を向けてくれたあの不器用な若者を信じて。

この今を。


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