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GLAIVE (狂炎伝承)   作者: 団栗山 玄狐
Ver.02 日常編その1
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act09 平穏なeveryday-003

act09 平穏なeveryday(日常)-003


会長室に威圧感にのまれつつ促されるままソファーに腰を掛けるユタカ。


カルウはそのユタカの後ろに立っていた。


「さて、明本ユタカ君だったね。」


威厳たっぷりのナイスミドルが口火を切る。


ダンディな低く心地のいい声が響く。


「は、はい!」

慌てて返事をする。

先ほどまでの緊張感があり、虚を突かれた感じだったので慌ててしまったのだ。


「そうか。では、私は千早開発商社の会長である早坂サカセキです。

ようこそ、歓迎する。」


「さて、君の事情もこちらは報告を受けていますので対応します。

後の説明を受け持ちます。ちなみに私は千早開発商社専務 椚コウイチです。

そして、君が所属する椚探偵社の局長でもあるのでよろしく」


座席に座る早坂サカセキ会長の左横にいる眼鏡をかけた釣り目の50代ぐらいの男性が話し始めた。

椚探偵社の局長・・・と聞き覚えのある単語を思い出す。


確か喫茶店の上にある探偵社と同じ名前だと思い出すまでそう時間がかからなかった。


説明は続く、椚探偵社は駆け込み寺も兼ねているようなのだ。

ただし、仕事はしないといけないところはある。

慈善事業ではありませんとくぎを刺された。


探偵社に入る為の注意点がいくつか指定されている。

まず、椚探偵社は村民俗維持開発課が正式名称である。

つまり、千早開発商社の社員となるのだ。


1、ID登録をして村民IDカードを作ること。

2、新入社員研修を行う事

3、村の民芸品を作れるようになるか、伝統芸能ができるようになるかである。

 これは、気分転嫁できるようにと村の伝統芸能を残すためだという。

4、椚探偵社に入る場合は、いずれでいいので自分がやりたいことを始めること。


意外と面倒ごとが多いが最低限度の説明をしてくれた。


「後は、役員管理室室長 小野寺キョウコ君に手続きををしてもらえると完了となる。」

コウイチは締めくくる。


「あの新入社員研修と村の民芸はどこでやるんですか」

とユタカは尋ねる。


「それは、そこのカルウが一手に引き受けてるから後で確認するといい。」

コウイチは答えた。


『新人研修とかするから、役職が必要なのか』とユタカは少し納得した。

さすがに役職が付いてないと信用されないからなんだと思ったのだ。


「さて、一通りの説明は終わったのかな」

早坂サカセキ会長の右横にいる比較的若い人の好さそうな男性が口を開く。


「そうですね、キョウコ君とカルウが細かいことを説明しますので一連の話は終了となります」

コウイチは手元の書類を見ながら答える。


「それじゃあ、先に自己紹介しておこうか。私は千早開発商社社長 早坂シゲヒト。35才。

会長の息子でもある。さっき説明されたこと以外は比較的自由にできるから気楽にやってほしいかな。」

と早坂シゲヒトは、軽い口調で話す。


「は、はい」

毒気を抜かれた感じでユタカは返事をする。


「では、本題に入ろう。今回の報告書を見ると君はレッドモードのカルウを止めたそうだね。」

シゲヒトは目を輝かせて質問してきた。


「はい・・・、そうですが・・・」

と押され気味に答えるユタカは興味深々で訊ねてきているシゲヒトを見る。

だが、興味を持っているのはシゲヒトだけでなく、サカセキとコウイチも少年のような目で見てきている。


「なるほど、本当なのか。」

シゲヒトは関心する。


「今度の新人は大物だな。命がけで止めてくれたことには感謝する。

こいつは自分のことには無頓着なのでな。君のような真っすぐぶつかるタイプは助かるのだ」

コウイチは礼を言う。


「コウイチさん。本題はそれじゃないよ。次が本題だ。

ユタカさん。いいかな」

シゲヒトは話を続けようとする。


「はい」


「レッドモードのカルウを押し倒したというのは本当なのか」

と前のめりに聞いてくる。


「は・・・いぃー!!!」

と声が裏返る。


確かに押し倒した。でも命がけで抱き着いたので力加減ができなかった。

そんな余裕もなかった。


でも、側から見ると確かに押し倒している。

そのことにユタカは改めて理解した。


首から上が真っ赤に沸騰する。

我ながらなんて恥ずかしいことをしたのだろうと思ったのだ。

そんな余裕すらなかったが。


「そうか、そうか。夢中で気づいてなかった。と報告書には書いてあったがその通りか。

リアクションも上々だ。おちょくりがいがある。」

うんうんとうなずきながら納得するシゲヒトである。


そこから怒涛の口撃がスタートする。

ああだこうだといろいろ質問攻めになる。


目を回しながら答えていく。

そんな問答がしばらく続いたくらいにコンコンと扉をノックする音の後に

「失礼します。」といって役員管理室室長 小野寺キョウコが部屋に入ってきた。


「おお、キョウコ君か。」

サカセキが声をかけた。


「これ以上は、ユタカさんが限界みたいですね。それにそろそろ手続きをしたので彼女もらっていきますね。」

キョウコは笑顔で助け舟を出してきた。


「せっかく盛り上がってきたのに」

シゲヒトはふてくされる。


「それより、大切なお話もあるんでしょ。それをしてください。じゃあ、ユタカさん。

あなたは面倒な手続きをしに行きましょう」

キョウコはユタカを連れ出した。


「ごめんね。最近やなことが続いてさ。気晴らしのネタにしちゃって」


「いえ。」


「でもしばらくは、これが続くからね。会社に来たら。」


「えー、ヤですよー」


「ショウガナイ、ショウガナイ。」


世間話をしながら、手続きをするため、別の部屋に行く。

そこでは、書類攻めにあい、別の意味で疲れ果てていくユタカであった。


ユタカがエレベータホールでぐったりしていると

「これから、あんたの部屋と研修についての説明があるぞ。しっかりしろ」

カルウが声を掛ける。


「まだあるの?」

ぶー垂れるユタカに


「残りは、喫茶店でするんだよ。社員寮の管理人はペルボがやっているし、研修はオレが担当だからな」


「そういえば、研修ってどこでやるの」


「それも含めて喫茶店でまとめてやる。ほれ、あと一息だ。」


ユタカにとっての長い一日はまだ終わりそうにない。

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