訪れた安息
このページで一旦終わりですm(_ _)m
麻呼は、麓の町にある総合病院に入院する事になった。
怪我の具合は、全治2週間、血を大量に流しすぎた為にプラス一週間、計3週間の入院となった。
明の傷は、麻呼が、最後の力を振り絞って治療したのでたいしたことは無かったが全治5日の怪我だった。
翌日、麻呼の入院を鏡士郎たちに聞いた涼子は、大急ぎで病院に駆けつけた。
「麻呼!怪我したって!」
涼子は、今にも泣き出しそうな剣幕で麻呼の病室に駆け込んできた。
「涼子!静かに、ここ病院だよ、それにたいした傷じゃないから大丈夫だよ」
麻呼は、勢い良く駆け込んできた涼子に優しく笑いかけてそう言った。
「全治3週間の何処がたいしたこと無いのか聞きたいね」
涼子の後から入って来たのは、花束とお見舞いを持った鷹雄と鏡士郎だった。
「!古葉さんに獅莱さん!イツッ!!」
麻呼は、2人の姿を見るなり勢い良く起き上がろうとした。
しかし、傷の痛みのせいでそれも阻まれた。
「ダメだよ、急に起き上がったりしたら、まだ寝てないと…」
鏡士郎は、傷口を押さえて痛がる麻呼に駆け寄りながらそう言った。
「何で、涼子と一緒に…」
麻呼は、痛みに表情を歪ませてそう尋ねる。
「病院の前で一緒になったんだ…ついでだから一緒に来ただけだ、ホラ、見舞い…」
鷹雄は、抑揚の無い声でそう言って麻呼の前に少し大きめの花束を差し出す。
鏡士郎は、フルーツの入ったお見舞い用のバスケットをベットの上に置く。
「あ、ありがとうございます…」
麻呼は、それら見舞いの品を受け取って少々驚き気味にお礼を言った。
「こっちに居る間は、たまに顔出しに来るね…取り敢えず、今日はこれで…」
鏡士郎は、麻呼に優しくニッコリと笑いかけてそう言うとくるりときびすを返して出口に向かう。
「もう帰られるんですか?まだ来たばかりじゃないですか…」
涼子は、今にも出て行ってしまいそうな鏡士郎と鷹雄を呼び止めてそう尋ねる。
「怪我人にそう無理をさせられないからね、また日にちを改めて来るよ、じゃあね」
鏡士郎は、ニッコリと優しそうに笑ってそう言うとひらひらと手を振って病室から出て行ってしまった。
「麻呼、その怪我ってやっぱり昨日の?」
涼子は、麻呼の体中の包帯を見て心配そうにそう尋ねる。
「え?あ、違うのこれは、ただたんに私の調査不足で、まさかあんな所に妖怪が居るなんて思わなかったから油断しちゃって…たいしたこと無いから大丈夫だよ」
麻呼は、今にも泣き出しそうな涼子を懸命に励ましてそう言った。
涼子には、これ以上心配をかけないように本当のこと話さずにおこうと決めたのは今朝目が覚めてからだった。
「本当に大丈夫?」
涼子は、涙で潤んだ瞳を麻呼に向けてそう尋ねる。
「うん、大丈夫。でも、眠いから横になりたいんだけどいいかな?」
麻呼は、少し疲れたように微笑んで涼子に遠慮がちにそう尋ねる。
「あ、ごめん!そうだよね、麻呼だって休みたいよね、今日は、もう帰るね、また明日来るから…」
涼子は、麻呼が具合悪そうにしている事にはっと気付き勢い良く座っていた椅子から立ち上がった。
「うん、また明日ね…」
麻呼は、ニッコリと笑って病室から出て行く涼子を見送った。
≪麻呼、傷の具合は大丈夫?寝ていなくて大丈夫なの?≫
麻呼以外居なくなった病室に静かに現れたのは心配そうに麻呼を見上げる螢峯と雪那だった。
「うん、動かなければそう痛くも無いから…2人ともこっちにおいで…(涼子のお父さんに無理言って個室にしてもらっといて良かった)」
麻呼は、病室の端に並んで立っている2人を自分の近くに呼び寄せる。
2人は、近寄りにくそうにおずおずと麻呼に近づいて行く。
「2人とも、自分のせいでなんて考えてるんじゃない?この怪我は、たんに私の力不足が原因なんだから、2人が責任感じること無いんだよ…ところで、明のほうはどうしてる?」
麻呼は、螢峯の頭を優しく撫でて口調やわらかくそう言った。
≪怪我は、たいした事無いけど…麻呼を護れなかったってずっと落ち込んでる≫
螢峯は、目だけで麻呼を見上げて沈んだ声でそう言った。
「全く、私が怪我したのは誰かに責任があったわけじゃなくて、たんに私の力不足のせいなのに、何で皆が責任を感じるのよ…」
麻呼は、やれやれと溜め息をついて薄い微笑を浮かべてそう言った。
≪でも!私たちが!≫
螢峯が、麻呼に何か言おうとする。
「ストップ!自分たちがもっとしっかりしていればなんてこと言わないの、もう終わった事をとやかく言ってもどうにもなんないんだから…それから、今回いろいろと迷惑かけた四神と六合、それから、残りの次代十二神将にお礼を言っといてくれるかな?“ありがとう”って…」
麻呼は、何か言いたそうな螢峯の言葉をさえぎってそう言った。
螢峯は、今にも泣き出しそうに目を潤ませてから大きく一度頷いて解ったと元気良く返事をして雪那と共に姿を消す。
「…取り敢えず、今は、彼らのことよりもこの傷を治すのが先だな…」
麻呼は、太陽の光が差し込む窓の外を見つめて悔しそうにそう言った。
麻呼は、このとき昨夜の出来事が自分の人生を大きく左右する出来事だと知る由も無かった。
彼女、右帥 麻呼の物語はまだ始まったばかりである。
つたない文章でお目汚しいたしました。
お読みいただいて嬉しく思います。