イオ2019
のっぴきならない事態へと陥り込んだことに、多分に遅まきながら気付くのであった。
2018年12月31日、午後9時。
そろそろ年の瀬が押し寄せてくる、正にのその時。裸電球ひとつの薄明りの物置部屋にて。
真顔で固まる久我 学途、39歳なのであった。
▽
事の起こりは、1時間ほど前に遡る。
年末年始は、東京は下丸子の実家で過ごすのが習わしである久我家は、本年は大晦日に出発という慌ただしいスケジュールなのであった。さらに久我は間の悪いクレーム対応に追われ、実に本日の午後6時過ぎまで本社に詰めていなければならないという、ここ一年の締めくくりのようなアンラッキー気質をこれでもかと発揮していたため、先に家族を向かわせている状況である。
妻の佳苗と二人の息子は案外すんなりと久我を置いて先発していった。佳苗は久我よりも下丸子の義父母に好かれており、実家でもリラックスしつつ初売りなどに軽やかに出掛けていったりと自由であり、小四・小一の二人の息子たちはSwitch三昧できる環境に早くも心奪われている。
最近では割と家族からないがしろ気味の久我なのであった。休日は疲れの余り何もせずゴロゴロしていることも多くなり、妻が息子たちを連れてどこか外出するのを、力無く見送るのが常態となっている。それでも行動力がほとんど欠如している久我は、一抹の寂しさを感じつつも、独りの気楽さも味わったりしていたりするのであった。
話を戻す。
最後の最後までの厄介事を収めての帰宅は、午後7時。しかし買って来たスーパーの天ぷらそばをひとりで二人前たいらげた彼には、まだ重要な仕事が残っていた。
大掃除の仕上げである。
キッチン、リビング、風呂、トイレ、その他共用部分の清掃は前日までに妻と済ませておいたものの、最後に残った久我の聖域、物置として使っている四畳間の整理を本年中に行うことを、佳苗からきつく厳命されていたのであった。
北向きの嵌め殺しの小さな窓のみの、今時珍しい裸電球がぶら下がった、変わった小部屋である。そこで生活出来なくもないが、まあ物置以外の用途はあまり考え付かない。
久我の趣味のものである小説や漫画、その他、使わなくなったゲーム機、クレーンゲームで取ってはみたものの使い道にも捨てるのも迷う巨大なぬいぐるみ達、スーツケース、子供服などが雑多に詰め込まれているその部屋は、ここ何年か手付かずであり、確かに整理の必要はあるだろうと思わせる佇まいなのであった。
そして久我の高尚かつ希少な分野について深く掘り下げた書籍・DVDの類もその部屋の至る所に隠し込まれているのであって、それらの露見を恐れて自らその掃除当番を買って出たのが数日前。
家族のいない内にそれらの整理・処分が出来る、と久我はこの選択に確たる満足を覚えていたものの、それが完全に裏目に出たのが整理開始の早くも30分ほどの辺りなのであった。
入口付近にあった、胸の高さほどのスチールラックをとりあえず小部屋の外に運び出し、廊下に一時保留していたのが間違いだった。
激しい音と共に、結構な衝撃が、小部屋の中の久我まで届く。ああー、やっちまった、廊下に傷でもついてたりしたらまた叱られるぞ……とまだこの段階ではそんな呑気な心配をしていた久我なのであった。
「あれ、開かない」
のっぴきならない状態になるほど、ひとり言が加速度的に増える久我。本件もその不穏さを肌で感じ取ったのか、飛び出すのはそんな至極当たり前のことなのであった。
廊下に向かって開く扉。それを内側から押し開けようとしている久我だが、2cmくらい開きかけはするものの、そこから何かにぶつかる手ごたえを感じ、それ以上は動かない。
スチールラックであった。廊下で倒れ込んだそれは、奇しくも廊下の幅とほぼ同じの横幅であり、それが扉の前に嵌まり込むようにして横倒しになってしまったのだった。ラックに乗せてあった諸々の荷物は運び出す時に降ろしていたので、ラック自体の重さは大したことは無かったものの、倒れた時の勢いと自重を足して、廊下にぎちりとつっかえ棒のように固定されてしまっている。ラック自体にわずかな弾性があることも、嵌まり具合に拍車をかけることとなっているのであった。
指一本が通るくらいの隙間しかない室内からそれをどかすことは、ほぼ不可能と思われる。久我も針金ハンガーを曲げて隙間に差し込んだりと色々と試してみたが、開かないという状況は変わりそうもない。スマホもリビングに置いて来てしまったので、外部との通信手段も無いのであった。
「どうしよう」
どうしようもない時に放たれる、彼の呟きが薄暗い小部屋に反響する。
▽
閉じ込められてから体感で一時間くらい経過したことを悟るのであった。
佳苗さんがこの異変に気付くまで、どれくらいかかるだろうか……仮に気付いたとしてももう下丸子に到着しているはず。取って返してきてくれたとしても、年が明けてから、とかになるんだろうか……
詮無い思いが頭を埋め尽くす。夕食はたらふく取ったあとであり、この片付けにあたり、真冬でも動くと汗をかく久我は、2Lのお茶のボトルを手元に置いていた。これが彼をそこまで追いつめなかった要因ではある。
パニックになることは避けられた。しかし、この小部屋の中の温度は意外と低い。折りしも寒波到来のこの時期、明らかに寒気はしんしんと室内にも侵入してきているのであった。
身を温めてくれそうなものは、と小部屋の中をひっかきまわす。布団の類は残念ながら無かったものの、使い古しの布団圧縮袋は段ボールのひとつから見つけることが出来た。
ひとまずその中に体育座りで収まる久我なのであった。
僕はこの年の瀬に何をしているんだろう……ともっともな思考が大脳に上りかける。改めて考えなくても、異常な年越しスタイルである。スマホもテレビも無いこの部屋で、一体何をして過ごせばいいのか、今度はそういったことに目が向いてしまうのであった。
本はラックと共にいったん廊下に出してしまっていたし、高尚文献に関しても先ほど厳密な吟味をした挙句、残すものと捨てるものをきっちり仕分けてこれまた廊下に一時退避させてしまっていた。
じゃあもう寝ちゃうか、との思いに至る久我だが、室内は結構な寒さで、寝たら死ぬんじゃね? との極端な己の思考にビビり、あ、朝になるまで寝ないでおこう……と決意を固めるのであった。
と、目線の先に菓子箱があるのを見て取った。あれこれ何だろう? と万が一中身お菓子だったらいいのにな……との一縷の望みを込めるものの、その箱のくたびれ方からはそんな希望的観測を軽くはねのけるくらいの佇まいを感じさせる。それでも手に取って中身を確認せざるを得ない久我なのであった。
(……これ保育園の)
中はやはり菓子ではなく、古びた感じのミニノートやら、リングでまとめている紙の束がいくつも入っていた。
それは彼の息子たちが保育園に通っていた頃、園とやり取りをするための「連絡帳」たちなのであった。
実際に連絡事項が無い場合は白紙で提出して構わないものの、何を思ったか久我は毎日家で起こったよしなしごとを律儀にツイートしてきたのであった。
上の子アキトの六年分。下の子ハルトの六年分。結構な量である。
(これでも読んで、年を越しますか)
とにかく寒さと退屈を紛らわせることが出来れば何でもいいか、みたいな思考に入っている久我なのであった。
上の子の一歳の時の連絡帳をめくっていく。
【アキ1歳】
風呂好きです。用が無い時も風呂場に行って服を濡らしてきます。
「はらぺこあおむし」の絵本が好きで、自分で持って来ては読んで、と手渡します。やはりあおむしがたくさん食べるところがお気に入りみたいです。
風呂でシャワーを手にすると暴君と化します。顔目掛けて放水し続けてくるので大変です。
ねだって買ってもらった「七連ボーロ」が、自分の寝てる時にお母さんに食べられているとは知るよしもないアキです。
スプーンは卒業とばかりに、フォークのみを使うアキです。スープ系は結局食べさせてもらうという逆行が起きています。好みが激しい年ごろです。絵本も吟味しています。
熱がある時はなぜか二重で男前でした。
遂に念願のプラレールをgetしたアキです。電動で動くやつの後を追って、手動の電車を急いで手で走らせています。乗り物中心の生活です。
宮崎のばあばとはパソコンのTV電話で会話する、ハイテクな孫です。
………
正直、どうでもいいことが点取り占いのような口調で書かれているだけなのであった。これ報告することか? と今更ながらのつっこみを昔の自分に入れつつ、どんどん読み進める久我なのであった。
【アキ2歳】
卵割りのお手伝いは積極的にやってくれます。卵についているシールは几帳面に剥がして、流しの下に並べて貼っています。集めると何かいいことがあるのかも知れません。
「おかーさーん」ははっきり言えるようになりましたが、父のことは「とたー」と恥ずかし気にしか呼びません。何も恥ずかしいことはないはずですが……
ひとさし指を立てて「まっぱ!(もう一回)」と言うのが多くなりました。
(タオルで手を)「拭いて」と言うと、タオルをフーフーと吹く高等なボケをするようになりました。
どこで覚えたのか、おむつとズボンを自分で履くようになりました。おどろきです。園で教わったのでしょうか。最近はイヤイヤ期というか「やだの」期で、かんしゃくを起こすと大変です。
バリカンを買ったのですが、ものすごくいやがられました。結局ハサミで切ることに……後ろのハゲ部位はバリカン失敗の名残りです。
島忠(常連)に行き、表札を見ていたところ、決然と「5ばん!」と主張し、「5」のステッカーを買ってもらったアキです。なぜ5か……ヘルメットのうしろに貼ってもらい得意気です。
「~ください」を「~くしゃい!」と言う新喜劇的なアキです。
ひいばあちゃんがしつこくちょっかいをかけてくるので「帰れ!」などひどい暴言を連発していたアキです。
台座つきのしゃもじを手に持って「フック船長」など、芸に幅の出て来たアキです。
トーマスのマイナーキャラも網羅しているアキです。
「おにいちゃん」と「あかちゃん」の二つの人格があるらしく、都合のいい時に入れ代わります。
ホットカルピスに今ハマっていますが、「カウピピス」と言ってます。
「ただいま」と「おかえり」を合わせた「おだいま」を使うアキです。
「おねがいしまうま」というネタを覚えました。
………
しかし改めて見ていくと当時の事が思い出されてきて、ついつい笑顔になってしまうのであった。この頃は子供につきっきりだったよな……子供中心の生活だったよな……との思いもよぎる。
【アキ3歳】
笑う時なぜか口に手をやり上品に笑うアキです。
「おはスタ」に出てる小島よしおを信奉しているアキです。
お母さんのおなかの赤ちゃんに顔をつけて話しかけた時に蹴られたことが面白かったらしく、「もう一回!」とリクエストしていたアキです。
「神田ポーエン(パンダ公園)」という謎の場所に行ってきたと報告を受けました。
掃除やかたづけをしてる時に限って、自分も参加しなくてはと邪魔しにくるアキです。服の山の上でゲハハとご機嫌です。
食事後に体重計に乗り、増えたことを喜ぶアキです。17kgを超えたくて麦茶を何回も飲み、何とか達成してました。寝てる時の尿量も半端なかったですが……
きのう「弟」と判明しました。「あかちゃんにかしてあげるのー」とアキは楽しそうです。
相変わらず、かるた三昧の毎日……「あ」「き」「と」の札は自分の近くに配置し、取らせないようにするせこいアキです。
(母より)じじばばが優しいため、小皇帝っぷりが凄いです。まあ彼の天下もあと少しですが(笑)
昨日14:45に3400gで弟が無事生まれました。アキはお母さんが夜いなかったので泣いて不機嫌です。迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。
病院に行って赤ちゃんと出会ったアキ……やたらとさわりたがってました。
ガラガラで赤ちゃんをあやしてあげるアキです。お兄ちゃんの顔を見たり、声を聞いたりすると不思議と泣き止みます。
TVで「秋」という言葉が出るたびに、「……いま呼んだよね?」と聞いてくるアキです。
「今日は『ななにち』?」と聞かれたので「『なのか』っていうんだよ」と教えたところ、「『なのか』じゃないですぅ、『ななにち』!」と言われました。なのかです。
「おにいさんだねー」と言うと大抵のことは我慢してくれたり、やってくれたりする乗せやすい男です。
「ヘリコプター」が言えず「ヘリポプター」になるアキです。
夕飯に出したおかずを翌朝も出したら「きのういただいたのでいりません!」と丁重に断られました。
風呂で「ジュースですー」と前日作っておいたせっけん水を執拗に勧めてくるアキです。「いいから!いいから!」と飲ませようとするので仕方なく飲むフリでごまかしますが、それでも冷水が胸を伝うので非常に冷たいです……
天気予報に東京の夜景が映り、ひとこと「うわぁ……スカイツリーだ……」と感慨深げに呟いていました。どう見ても東京タワーでした。
「ハルちゃんけらないで~!」と言いながら弟の布団にもぐって蹴られにいくアキです。
………
そして弟の誕生が挟まれるのであった。その前後の事も割と詳細に記してあったりで、へええ、と思わずつぶやき漏らす。この頃は良かったな……との思いも浮かぶ久我なのであった。
【アキ4歳】
アキ語録……「たつのおしごと」(たつのおとしご)、「やまののぼり」(山登り)、「よこはで」(函館)、「キレーモンモン」(キレートレモン)、「お風呂道路」(オフロード)
お母さんお父さんに怒られすぎたので、ハルに癒しを求めていたアキです。「いい子はハルちゃんだけだね~」「ハルちゃんと寝るからね~」としきりに言っていました。
おんぶして寝入ったハルを降ろした時、ズボンのゴム糸が玉のようになり、ちょうどヘソの所にはまっていたことにウケて、起こさないよう笑いをこらえていましたが、呼吸に合わせ上下する腹と一緒に玉も動くのに耐えきれず爆笑してました。
府中競馬場に行ったアキです。急なすべり台には「こわい」と降りてきたりしていましたが、ロープ渡りやウォールクライミングには果敢に挑戦していました。「昼寝は……しない!」と頑張っていましたが、結局風呂でオチ、寝ながら体を拭かされ、服を苦労して着せさせられ……と最悪の手間をかけさせられました。
ぎょう虫検査のシールを貼る時に、ケツ筋を入れて貼らせないようにしていたアキです。「はがしちゃったの? なんで?」と、貼ったまま生活するつもりだったようです。
笹かまぼこを手に取り、「何かかまぼこみたい……」と呟いていたアキです。バナナを食べる時は「ウホホ、ウホホ」とゴリラの真似をしなければ気が済まないようです。
しりとりをしていて自分が「ん」のつく言葉を言ってしまっても、「『んぱんしゃ』(運搬車)あるよ!」と強引に続けさせようとするアキです。
「ガードレールって……白いの?」など、どうでもいいことを呟いていました。
アオウミガメの甲羅の大きさが107cmと自分の身長が同じということを書いておいてくれと言われたので書きます。
「ねえあれは? ピーナッツは?」と聞かれ、今までの会話の中に無かったので「何が?」と聞いたら、泣きそうになって「ピーナッツ!! だからピーナッツ!!」と怒り出しました。よくよく聞いていくと「日向夏」と間違えていたようで、指摘した途端、照れ笑いを浮かべてデュフフと言いました。
台風がこわくてお母さんの側で寝ようとしていたアキですが、「こわいんでしょ?」と言われたら、「ちがうよ! ハルちゃんを守るだけだよ!」と言い張ってました。
「ねっちゅーしょー」になるからと、コップ3つに水を注いだものを机に置いてから寝る謎のアキです。
「ロシアの県庁所在地はどーこだ?」と聞かれました。どこだろう……
空気入れのホースを0歳児のハルと奪い合う4歳児です。ハルは遊んでくれるお兄ちゃんが大好きのようで、ニコニコしながら追いかけています。
突然ひらがなの勉強を始め出し、ひらがなの本取ってと言われたのであえて迷路の本を渡したら、「そうこれまだやってなかった……めいろじゃない! ひらがなだよ!」とノリツッコミのようなことをしてくれました。
ゴムがべろべろになった古いパンツを愛用しているアキです。涼しいのか……?
「恐竜発掘」という百均おもちゃに案の定ハマり、父と二人、黙々と削っていました。恐竜が見えてくると「あっきーがこっちをやる」とおいしいところを持っていきました。
バナナを食べている時、「あれ? あのおさるさん、バナナの皮かぶってる!」と言うと、乗って被ってくれるアキです。
スーパーにて「お母さん、もくず買って、もくず!」とカップの「もずく」を持って来ながら言ったそうです。久しぶりに語録が出たアキです。
NHKでやってる「フックブックロー」をよく見てます。古本屋を舞台にした人形劇で、「普段はニャーニャー言ってるけど、終わりの歌になると伸びやかな高音で歌い上げるネコ」がアキは好きなようです。
我が家のおりがみは飽和状態です……父母双方の実家に送り付けてやろうと画策しています。
お母さんが買って来るホールのクリスマスケーキを楽しみにしていたアキ……チョコレートの家をもらって満足そうでした。おいしくなかったのか、サンタのマジパンはクリーム部をなめてから父に寄越しました。
【ハル1歳】
夜中、寝相の悪い兄に蹴られたりしてますが、朝、起き抜けの時は兄の顔をぐしゃぐしゃしたりしています。強く育ちそうです。
「パ」「パ」「パ」と口の開け閉めを楽しんでいるようです。「パパ」と呼んでいるのだと私は勝手に思っています。
「はるちゃん!」と呼びかけたら、「んだ?」と返事をされました。歩行器も前後自在に乗り回せるように……
お母さんの過剰なスキンシップには「あ、大丈夫です」といった感じでかわすハルです。
くすぐられると喜ぶハルです。くすぐられる前の雰囲気を察しただけでももう笑ってしまっています。
つかまれる所があればつかまり立ちをしようとするハルです。手や足の皮がむけるほどずりはいもやっています。
ソファに登れるようになっていたハルです。自分でも驚いたようで、しばらく「あれ?」という顔をしていました。
「ハルちゃんどこいったんだろう?」と探すマネをすると、うれしそうにイスの陰などに隠れてから「ダー」と出てきます。楽しそうです。
初めて家でも歩きました。右、左、右、右……とぎこちないものの、周りの反応を見て得意気な顔でした。
抱っこされている時、手に持っているものをわざと落として、みんなの反応を楽しむハルです。「デュハ!」と満足気に笑います。
「ハルンボ」とアキに名付けられたハルです。「はるる」「ハミルトン」「眠れる獅子」など、家ではいろいろな呼ばれ方をされています。
………
そしてここからは兄弟二人分の「連絡」を毎日続けているのであった。朝のくそ忙しい時によくやってたな……と自分のことながら感心してしまう久我なのであった。
【アキ5歳】
朝早く起きたことを自慢したいらしく、5:30に起きてきましたが、ソファーカバーと電気毛布のすき間にはさまって二度寝してました。
「あっちむいてホイ」が面白くなってきたらしく、風呂でやってます。
スピードが上がってくるとテンパって「グー」しか出さなくなり、「左」しか向かなくなるアキ……お母さんに勝つまで出られないというルールです。
ハル(弟:2歳)におもちゃの部品を取られてしまうので、イライラして片付けはじめたアキ……玉状の部品をハルの足元に見つけ、「もう!とらないで!」と怒って取り上げようとしたら、それはハルのズボンに付いていたポンポンでした……
園で作った紙鉄砲をたくさん持ち帰ってきたアキ……お母さんにうるさいと怒られながらもパンパン鳴らしていました。「早坂先生のはきれいに折ってあるからよく鳴る……」と分析していました。
あいかわらず折り紙を折っています。「かぶせ折り」「中割れ折り」などを難しい顔をしながらやっています。
風呂でお湯に顔をつけて息を止める訓練をしていました。10秒がんばって止められるようになりましたが、お母さんが1分くらい潜っているのを見て「すごい!すごい!」とおびえていました。
無印良品で「手作りうちわ」を買って来て制作していました。アキはアルゼンチノサウルスを色鉛筆で描いていました。味のある絵だと思いました。
あやとりの「四だんばしご」に挑戦していたアキ……最後に糸を指から外しながらくるっと手を返すのがむずかしかったらしく何回も練習していました。結果、一回成功しました。自分でも驚いていました。
「鳥取に行きたい」と唐突に言い始めたので、聞いてみたら「ゴムボートで用水路をくだる」ことが出来る場所があるそうです。ひとりで飛行機に乗れるかを聞いたところ、「え?無理でしょ」みたいな顔をしてました。
「台風が温帯低気圧にかわって……」などと専門的なことをつぶやきながら、「せんせい」に天気図を描いています。
相撲は家でもとっています。倒れた者には頭つきの追い打ちがある厳しいルールです……
鯛雑炊が出たので「鯛って知ってる?」と尋ねたら、「知ってるよ!ミャンマーの隣でしょ!」と予想外の答えが返ってきました……
【ハル2歳】
昨日からばあばが泊まりに来ていて大興奮のハル……リモコンを頭に乗せてちょんまげなどいろいろな技を見せていました。
兄の誕生日ケーキを速攻でたいらげていたハルです。おいしそうにというか、「何だこおおいしいのは!?」という驚きの方が顔に出ていました。
畳んだ服を持ち主の所に「どうぞ」と渡しに行くハルです。やり直しになります……
風呂でコップに冷水を貰うと、口に含んで兄に吹きかける悪いハルです。いい笑顔をしています。
ヨーグルトを自分で器用に食べ、白ひげの紳士になります。食べ終わったら自分で口元を拭く、やはり紳士です。
風呂上りにおむつ一丁で涼んでいる姿は大将の風格です。
家のビニールプールでずっとシャボン玉をやってました。兄の背中にわざと泡を付けて観察していました。
ぶどうが好きなハルですが、たまに「ブドウ糖ー」と言ってる時があるような気がします。
風船を最初から膨らませられないので、ある程度膨らませたものを渡すと、そこから膨らませようとしますが、逆流して逆に膨らませられてました。
何かが無い時は、「にゃーも!」と三河風に訴えてきます。
「めんねー!」「めんしゃい!」と謝罪の言葉は早く出て来るハルです。誠意があるかは別ですが……
おむつを替える時に逃げ出します。そのままお兄ちゃんのまくらにしがみついてマーキングしてます……
布団から起き出してくる時、わざとさんざんコケまくってから来ました。寛平イズムの継承者が現れました。
もみあげと襟足が耳を囲んで「円」を形づくるハルです。切るのをまたいやがるようになったので「寝刈り」を久しぶりにやらないとです……
「ヘメレット(ヘルメット)」「ペチャップ(ケチャップ)など、言い間違えが面白いハルです。「コンクリートミキサー車」はやけに流暢に言えます。
豆まきやってくれました。豆を年の三倍くらい食べていました。
「~ってね……」と知識を披露するかのような口調をよくします。内容は特にどうでもいいことです。
「~なの?」と聞くと、「うん、そだよー」とローラ風の返しをされます。
………
だんだんと上の子に関しては書くことが少なくなってきたことを、通しで読んでいると分かって来てしまう久我なのであった。代わりに弟の充実っぷりが凄いことも……
【アキ6歳】
母の誕生日に「あやめ」の折り紙をプレゼントした粋なアキでした。
下の歯が二本抜けているので面白い顔になっています。
「フラソヌ」(フランス)など、書き間違えをバカにしたら怒り出しました。
LEGOのカタログがしわくちゃになるほどよく吟味しています。サンタさんにあげるプレゼント(おりがみ、アイロンビーズ)も制作中です。
アキの描くジバニャンは、水木タッチで味があります……
【ハル3歳】
園ではよい子との噂です。家では風呂湯を口に含んで、こちらの目を狙って吹きかけてきますが……
シリアルの粒を「どれにしようかな……」と選んでました。健診で食べられないお母さんをじーと見ながら、コリコリとおいしそうに食べていました。
パプリカが好きなしゃれおつboyハルです。
先週、遊歩道に行った時はBB弾を探すことだけに集中していました。
トッキュウジャーにハマっています。敵のボス「やみのこうてい」を恐れていて、夜寝る時はすぐに布団に入ってくれます。
「たのしろかったー」との語録が増えました。
「アリの歌を歌います」と、「ありのーままのー」と歌ってました。
「え!? なんで!?」とたいして興味も無さそうなのに全力で質問してきます……
家では風呂でコップに汲んだお湯を絶え間なくこちらの顔にかけてくるので苦しいです。
「はっくんもする!!」と言おうとしたところ「はっくんもす!!」と言ったことから、「ハックンモス」「もす」などと呼ばれています。
BB弾集めはもはや日課ですね……オレンジは「ふつう」、緑は「レア」のようです……
「ヘリコプター」は本当に言えないみたいで、ゆっくりと慎重に言っても「ヘリポクター」になります。聞いてみてください。
兄の作った細いカラフルマフラーをベルトとして活用している着回し達人です。
「あさりあさり~」としじみを買ってきました。しじみ汁にしてもらい、身も全部食べていました。貝が閉じているのを「あっしんでる……」とよけてました……
「じゃりがに(ザリガニ)」という響きが面白く、いつも周りを笑わせてくれます。
「マカロニ」を「マカノリ」と言います。
アイロンビーズを延長でよくやっていますね……祖父母に高値で売りさばこうと思います。
わざと本などに顔をつけるくらい近づき、「近い近いよ!」とつっこまれるのを待つ、謎のハルです。
………
そして兄は卒園。最後の方はやけにあっさりめだったなあ……とこれまた他人事のように振り返る久我なのであった。
【ハル4歳】
「もっちーせんせいいるんだよ~」と言ってたので、「もっちーせんせいって誰?」と聞くと、「もっちーはね……せんせいなんだよ……」と説明されました。わからん……
大掃除で出て来た未使用の哺乳瓶(Dior)で牛乳を飲んでいる三歳児です……
すいかは外皮付近まで食べます。ぎょう虫検査を寝てる時にしたら、剥がした時にビクビクッとしていたのが面白かったです。明日もやってみます。
我が家の納豆まぜ係なのですが、体を震わせながら変な顔で混ぜます……
「くが てんとうむし」と名乗っていくそうです……呼んであげてください……
家で捕まえたダンゴムシを、毎日保育園に持っていく運び屋です。
風呂でボールに座ろうと四苦八苦しているひとがいて、父は迷惑でした。
「~ですよ」「~なんです!」など、ですます調のハルです。何かを指摘された時は「あ、しょっか……」とわかってるフリをしますが……
「でもしゃ~」という口グセが最近多いので、みんなでマネしたらムッとしてました。
兄が米粒を目の下につけていたのが皆にウケていたのを見て、わざと自分でつけようとしていた模倣犯がいました……
敷布団の下に半身を入れて寝ていることが多いです。
世界陸上を一緒に観ていますが、こわい顔(集中している)や「バーバーグ」など面白い名前に兄とバカうけしているだけでした……
「耳かして」と言って「フー!!」と息を吹き込んでくるのでご注意を……
スマホの音声検索を執拗に邪魔してくるハルです……
卵の賞味期限シールを自分のイスに貼ってコレクトしています……
プリンタから出て来る年賀状をずっと監視していました。
はっくんスイッチ「に」→「……にじがきれい」……詩人……
家でも以前、相撲が流行った時があり、その時のしこ名は「ハルま富士」でした。
【ハル5歳】
「こんなのやだよ~」と言っていた服ほど、着てみるとお気に入りになる「着ず嫌い」であることが分かりました。
仮面ライダーゴーストのカードを集めるため、魚肉ソーセージをもりもり食べているハルですが、既に同じのが3つかぶっている状態です……
いちごチョコボールの空き箱のにおいを嗅いで恍惚としていました。
トランプを寝る前によくやってます。神経衰弱は強いですが、大貧民は難しいので、お母さんチームのカードを出す係と、場のカードを流す係です。
音読の宿題をする兄の邪魔をしにいきます。
兄の運動会を見に行き、競技は見ないでお菓子の方に夢中でした。
しりとり途中から短文もOKのルールに変えたハルですが、「うどんをたべた」「きりんがはしった」など、「た」ばかりになり、きゃーと言ってました。
空中逆上がりが出来るそうです。意外な才能……
神経衰弱は得意です。何故かめくってない札を一発で当てることが多い気がします。我が家ではそれを「エスパー」と呼んでいます。
ババ抜きを寝る前にやってましたが、ババを入れるのを忘れてやってました……
オリーブはさすがに口に合わなかったようです。しぶい顔をしていました。
残していたからあげを兄に食べられたと思い泣き出したハル……牛乳の陰にかくれていたことを指摘すると、泣き笑いのような変な顔にかわりました。
【ハル6歳】
園庭から校庭の兄に向けて「くそじじい~」など叫んでいたそうです。
シャンプーとボディーソープを愛用するおしゃれガイです。
UNOが流行っている我が家……ハルは「これしか出せないな~」と言いつつ「DRAW4」をうれしそうに出してきます。
相変わらずUNOを寝る前にやるのが日課です。こちらが一枚になってから「DRAW4」を嬉しそうに出してくる策士です。
ラムネに入っていたビー玉を大切にしているそうです……
「とびばこ五段跳べたよ……みんなは四段だったけどね……」とさりげなく自慢されました。
文句をたれる時ほど、実はやる気があるハルです……
風呂のそうじを激落ちくんでちまちまとやってくれるハルです。ところどころがすごくきれいになってます。
自転車に乗れるようになりました。ふっと出来るようになった瞬間を目撃することが出来ました。
▽
ひと通り読み終わった頃には、おそらく二時間ほどが経過していると実感した久我なのであった。除夜の鐘が遠くで響いたことで、それが正しいことを悟る。悟ったところでまだまだこの状況が続くことには変わりはないのではあるものの。
「……!!」
そんなうっすらとした絶望を感じ始めた頃、突如、玄関の鍵が回される音が響くのであった。
「あー、やっぱり」
そして妻の呆れた声も。
しばらくしてズズズの音と共にラックが撤去され、開かずの扉が開かれる。
「……連絡しても音沙汰ないから、何かあったら……ていうか、ありそうとしか思えなかったから途中で引き返してきた。大変だったんだから」
いつも通りの叱責が、やけに心地よく感じる久我。ただこの後、露呈した高尚文献は、要不要問わず一律廃棄されてしまうのだが、それはまた別の話なのであった。
「父ちゃん夜食買ってきたど」
下の子が差し出してきた大好物のオムライスを見て、ああ、やっぱり家族っていいよな……とのやけに単純な思考でこの場をシメてしまうといった類まれな精神をやはり2019年も、ほの見せてしまうのであった。
レンチンを待つ間、ふとカーテンを開けて雲ひとつない夜空を見上げる。
その視線の先に、確かに光るひとつの光点。
(終)