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レインコートの氷情  作者: 綿土井
第1節 〜 沈黙(しじま)と諦観の街〜
1/1

第1話 到着

 

さも異界の者が地底から空へ唸りを上げたようだ、と心が痒くなったのは、あの街の異様な空気感に、早くも心が呑まれそうなっている為か。


ともかく、汽笛は鳴った。


しばらくすると、車輪が線路を噛む、甲高い音が辺りいっぱいに反響しながら、徐々に、徐々に、そして停止した。

さて、降りようか。少しばかりの手荷物と気概は持った。

レインコートはもう着ている。




と、そこで足を止める。


呆気に取られた、ここまでの無音か。

感嘆、全くの沈黙(しじま)である。

汽車からの(やかま)しさが取っ払われた途端に、何一つとて、音が消え失せた。

それなのに、そこは依然として街の(てい)であった。

石畳はすぐそこにある。開いた客車の出入り口からすぐそこに見る事が出来る。だがしかし、音が無いだけでここまで不安感が煽られるのだ。まるで、その石畳に足を付ければ最後・・・、とでも言わんばかりの空気感である。

だが、それもこれも所詮は自分の気の持ちようなのだ。そう鼓舞して踏み込み、そして聞こえた床の軋む音が心を(なだ)めた所で、決断というものの大切さを無用に思い知った。


コツンと、靴が石畳を打つ。一つため息をついた後、襟を正した。

(わざ)と靴を(にじ)らせ、細かい砂利が靴と擦れる音を聞いて、少しばかりの現実感を街に補給し、足の運びの助けにする。


さて、()()は見つかるだろうか。

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