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滅びた民族と俺の話  作者: 春川 歩
模擬戦闘の足音が聞こえる
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朝、目が覚めると物が仕上がっていた。

その日は、霧森さんを呼び出さずに眠ったおかげか、学生街道にあるゲームセンターで遊ぶ夢を見た。

目を覚まし、ベッドから身を乗り出して時計を見ると、朝の6時55分を指している、円卓の上には、見たことのないローブが乗っていた。

「出来上がってる……。」

ベッドから起き上がりローブを広げてみると、俺が渡したローブは真っ黒だったが、そのローブは深緑色で、妙に軽かった。

「如月に、どういったローブか聞かなきゃな。」

そう言いつつも、昨晩は風呂に入っていなかったから風呂場に向かい、お風呂にお湯を張りはじめる、今日の模擬戦闘が10時からというのを考えたとしても、まだ時間はある。

お風呂から出て時計を見てから30分をどう過ごそうか考えるが、まずはケビンを起こすかと二段ベッドの上に上る。

「ケビーン、朝だぞー。風呂に入りたきゃ起きろー。」

言うと、ケビンは目を覚ましたのか、寝たまま大きく伸びをする。

「あら、もう朝?」

「おう、朝だ。」

それだけを言うと、ケビンが起き上がり欠伸を一つする、それにつられて俺も欠伸をする。

「神道ちゃんって欠伸がうつるタイプなのね。」

「まぁな、風呂、どうする?」

肩を竦めながら問いかけると、ケビンの目が嬉しそうな顔になる。

「あら、今沸かしているの?」

「まぁな、で、風呂は?」

そっけなく言うと、ケビンは気にした様子もなく答えてくる。

「神道ちゃんの後でいいわよ。」

「あいよ、わかった。」

梯子を下りると、ケビンもそれに続いて梯子を下りてくる、俺たちは向かいあうように円卓についた。

「そういえばケビン、昨日如月がやっているのを見ていたんだよな、最初に寝ちゃったから分からないんだけれど、これ、如月が作ったんだよな?」

俺が確かめの為に聞いてみると、ケビンは頷いた。

「えぇ、そうよ?大体深夜12時くらいかしら、その辺りにチーンっていう軽い音と共に出来上がったのがそれね。」

ケビンが深緑色のローブを指さす。

「そういえば、如月ちゃんがそのローブを作った後に使っていたんだけれども、どこからか光源を持ってきたのか、如月ちゃんの頭から少し離れたところに光の球があったのよ。

なんだか知っているかしら?」

俺に聞かれても、困る。

それをそのまま言葉にすると、ケビンはやはり直ぐに引き下がった。

「そのほかにも、机の上に置いてある木刀にも何か細工を施していたみたいだけれども、そこから先は寝ちゃってね、覚えていないの。」

頬に手を当てて残念といった具合に肩を竦めて見せたケビンを見た後に、時計を見ると、既に25分が立っていた。

「少し風呂の様子を見てくるな?」

「いってらっしゃい。」

ケビンの声を背中に受けながら風呂場の様子を見に行くと、いい感じに風呂にお湯が張られていたからお湯を止め、脱衣所から頭を出す。

「風呂が沸いたから先に入るなー。」

「ハーイ、わかったわ。」

ケビンに一言声をかけてから風呂に入る、体を洗い、風呂に浸かりながらまだ寝ている如月に聞きたかったことを思い返す。

風呂から出ると、ケビンが椅子に座って待機していた。

「風呂から出たぞー。」

ケビンに声をかけると、手に持っていたであろう霧の石を机の上に置いた。

「あら、早かったわね。」

「まぁな、ほら、シャンプーと石鹸使っていいからさっさと入って来い。」

ケビンを風呂に促す、時計を見ると7時40分を指していたから如月の事を叩き起こすことにした、如月に聞きたいことがある上に、錬金術で作ったこのローブの使い方も聞かなければならない。

「おーい、如月、朝だぞー。」

如月が寝ているベッドに近づき、体を揺する、すると鋭い裏拳が顔に飛んできた。

「ぅお!あぶね!」

それを寸での所でかわし、思わず手を掴むと、そこで如月が起きた。

「んあ?……朝か?」

言った所で俺が手を掴んでいるのを見て、何かを察した顔をする。

「また、殴りかけたか?俺。」

どうやら、如月の寝相は悪いらしい。

「裏拳で相手の事を殺せる勢いだったぞ。」

「そりゃ悪かったな。」

手を離すと如月は起き上がり、伸びをしながら欠伸をする。

「で?ケビンはどこに居るんだ?」

伸びをした後の第一声がこれだ。

「ケビンなら、今は風呂だ。」

「そっか。」

そんなたわいもない会話をしながら如月はベッドから降りて円卓についている椅子に座ったから、俺が聞きたかったことを聞いてみることにした。

「起き抜けで悪いんだが、俺の質問にいくつか答えてくれないか?」

「うん?あぁ、いいぞ、錬金したものについてか?」

円卓に肘をついて俺に笑いかけてくるのを一部否定する。

「確かに、錬成したものの説明も欲しいけれども、俺が聞きたいのはまた別の事だ。」

「ふぅーん、なんだ?」

俺も椅子に座り、聞きたかったことを順に聞いてみようとしたら、如月が「一つ、上限がある。」と言ってきた。

「上限?条件じゃなくて?」

「あぁ、とりあえず、今日のところはケビンがいるからな、俺に関する質問は一つだけ答えてやる。

それ以外だったら、いくらでもいいぞ?」

人差し指を立てながら俺に言ってくるそのまなざしは、茶化しているようにも、真剣なようにも見える、というか、先回りされてしまった。

俺が聞こうとしていたのは全て、如月自身に関することなのだ、とりあえず、これだけは聞いておかなければならない。

「それじゃあ、聞くけれども、如月がこの寮に入るという事は俺の通っている学校に入るってことだよな?」

俺が一昨日聞いたことを思い出しつつ聞いてみる、如月の食器を食堂に取りに行った時だ。

「あぁ、そうなるな。」

案外、すんなりと答えてくれるから俺は早速本題に入った。

「一体何があって学校に通おうと思ったんだ?というか、どうやって学校にそういった話を通したんだ?」

それを聞いたら、如月は、真顔になる。

「話したら、長くなるぞ?」

脅しのようなそれに、俺は何故か唾を飲み込む。

「それでもいい、どうしてなんだ?」

そして、如月の話が始まった。


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