確認作業と聞こえてきた声
「え?」
俺の通っている学校は今年で200年を超える中々に古い学校だと認識していたんだが。
それを相手も不思議に思ったのか、
「ん?」
と声を出す。
「だって、この近くの学校今年で創立200年超えるぞ?」
そういうと、更に相手が
「え?」
と返してくるから、更に疑問符が頭に浮かぶ。
そんな感じに頭にお互いが疑問符を浮かべていたら、青年の方から質問があった。
「……今西暦何年だ。」
そう聞いてきたから今年の暦を告げる。
「今か?今は太陽暦600年のはずだ、因みに10月1日。」
それを言うと、相手は更に顔を顔をしかめた。
「え?」
そう青年が声を出したから、
「ん?」
と、俺も疑問形で返してしまう。
「太陽暦ってなんだ?俺の記憶では陰陽暦899年の、4月6日のはずだぞ?」
そう相手が返してくるが、
「何言っているんだ?そもそも、陰陽暦はもう600年前に廃止になった暦だぞ?」
そう返すしかなかった。
何しろ、陰陽暦は太陽暦の前の暦で、先ほど言った通りだからだ。
「へ?」
「うん?」
どうにも会話が成立しない、そう思って首をひねっていたら。
「名前を名乗っていなかったな、俺の名前は如月だ。」
そう青年が名乗ったから、手を差し伸べる。
「へぇ、如月っていうのか、よろしくな!」
相手が手をとったから起き上がらせ台座に座らせると、相手は周りを見渡して一言。
「うわぁ、すごい状態だな。」
そう感想を漏らしたから、ここまで来るための道のりを思い出し。
「ここに来るまでにあったダンジョンよりはまだましだよ。」
そういうと、何かに納得したかのように2回頷いたあと、如月は何かを思い出したかのように目を見開いた。
「ちかちゃん。」
「へ?」
「ちかちゃんはどこにいるんだ?」
ちかちゃん、誰の事だろう、ここまで来るのに人には会っていない。
「ちかちゃん?」
「女の子だ、俺と同じような水色の髪をした……いや、同い年かもしれないな。」
まくしたてるように如月は俺に聞いてくる。
「女の子……?」
ここまで来るまでの間に特にそんな子供は見ていないし、ましてや水色の髪をした同い年の女性なんて、学校でも見たことがなかった。
「そんな子、聞いたことはないなぁ。」
そう答えると、如月は視線を落とす。
そういえば、と頭の中で前置きをしてから俺は気になっていたことを聞いてみることにした。
「如月さん、ついさっき陰陽暦899年って言ったよな?それ、もうかれこれ600年も昔の事なんだが、どういうことなんだ?」
もしかして、それくらい昔の人なのか?だとしたら、もしかしてだが……
そんな事を考えながら答えを待つ、そしてその答えは。
「へっ?……うそだろ。」
という、狼狽えと驚愕と、様々な感情がないまぜとなっている、そんな表情をしたのであった。
「何がだ?」
一応、何がそんなに驚くに値するのか聞いてみたくなったから聞いてみたら、その答えは返ってこずに、別の質問となって帰ってきた。
「おい、お前。闇の集団の事を知っているか?」
そう聞いてくるから、歴史の教科書に書いてあったことをそのまま答える。
「あぁ、確か光の集団に滅ぼされたテロ集団だろ?」
「てろ……」
如月の顔が曇ったが、話を続ける。
「それで、ここは最後の砦、光の集団が正義執行とか言いながら闇の集団を屠った地、なんだろ?」
「なんだよそれ!」
そこまで言った所で、ひどく絶望をしたような、激昂したような顔をしながら俺の方を見てくる。
「俺たちは……俺たちは奴らから仲間を、人体実験をされている仲間を救い出そうとしただけだ!……毎回そうだ、巨大ギルドのやつらは……王は弱小民族の事なんて、自然の事なんて考えやしない!生活を奪われ、仲間を殺され、そして奴隷とされて……挙句の果てにはテロだと!?ふざっけんな!ふざっけんなよ!」
そうして、如月の目から涙が流れ出すが、どういうことなんだろうか。
歴史が、違う?
「え、えと……全て教科書に書いてあったことなんだ。」
オロオロしながらバッグをおろしてバッグの中を漁る、そうして今日使った歴史の教科書を取り出し、該当するページを見せた。
そこには闇の集団が悪者として書かれている上に、光の精霊たちが闇の精霊たちを完全に死滅させたということも書かれていて、その部分まで読んだとおもわれる如月は、眉をしかめながら手で顔を覆い、何事かを呟いたが、何を言っているのかは分からない。
いつの間にかに如月は立っていた状態から、フラフラと台座に座り込み、如月が俯いた辺りでどこかから声が、いや、声は聞こえているが、鼓膜が、勝手に動いているという表現が正しいだろうか。
驚いて思わず「なんだこれ!頭の中に直接声が!」と叫んだが、如月は懐かしそうに目を細めていた。
『如月、起きたみたいだね。
この声を聞いているということは、私たち闇の集団は完全に解体して、もしかしたら、あなたが一番最後の生き残りになってしまったかもしれない、ということを伝えるもの。』
知らない女性の声が耳の中に入ってくる、耳を塞いでも同じ事だから、そのまま音声を聞いていたが、正直、この魔法も知らない。
如月は台座から立ち上がって、この声を聞いていた。
『そして、これは私たちがあなたに最後に願うこと。
貴方は歴史の生き証人になってほしい、それが私たちの願い、最終的には光の集団に打ち勝つだけの力を付けて欲しいの。』
光の集団に打ち勝つだけの力……?それってつまり?
『ごめんね、如月。
どうやら、このダンジョンは完璧に攻略されてあなたのほかの神の民族はこのダンジョンの外に出されてしまったみたい。
みんなの事を守れなかった、私をゆるして……
陰陽暦900年2月15日、霧森託己』
「へ?今のは……なんだったんだ?」
思ったことを言葉に出すが早いか、如月は土下座に、あるいは猫のごめん寝に近い姿勢をとった。
「如月?」
そう問いかけたが、その問いには如月は答えず、その代わりに如月は体を震わせて、泣き叫び始めた。
「うそだ、うそだうそだうそだ!うそだぁぁぁぁぁああああああ!」
「如月?どうしたんだ!?」
そう話し掛けるが、何も聞こえていないのか、ただ半狂乱になりながら泣き叫ぶ如月の事をただ、オロオロとするだけで、そして背中をさするだけで終わってしまった。
その泣き声を不可抗力で聞いてしまったが、その言葉のほとんどが人の名前、ごめんなさい、守れなかったで占められていた。