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滅びた民族と俺の話  作者: 春川 歩
模擬戦闘の足音が聞こえる
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ケビンの作った錬金術の道具の説明

「ただいまー。」

ケビンがそう声をかけるが、中に人がいないのか声は帰ってこない。

「ほら、あがってちょうだい?」

「「お邪魔しまーす。」」

俺たち2人が靴を脱いだあとケビンについて中に入ると、そこはいかにも男所帯の部屋といった感じの汚れきったベッド3つと綺麗に整えられているベッドが1つあった。

「汚れているけれど、気にしないで入ってちょうだいね?」

各個人の机の上にはゲームで使うのであろうカードセットが置いてあり、なんのカードゲームか気になった。

「さーて、それじゃ、あたしが作った魔法道具でも見てみましょうか。」

出入り口から見て右側奥にある学習机に歩いて行き、引き出しの中から何かを引きだし俺たちに見せてきた。

「液状の魔法薬は基本的に作ったその場で没収されるから、今あるのはこっそり作ったお香だけなんだけど、どうかしら。」

言いながら見せてきたお香は一つ一つは単色ながらも種類のおかげで様々な物がある。

「どれがどの効果かわかるか?俺はお香の香りは嗅いだことがあるが、その効果までは覚えていなくてな。」

如月に促されて、ケビンの説明が始まる。

「まず、赤のお香が身体能力向上、青のお香が身体能力弱体化、緑のお香が魔法能力の安定だったかしらね。」

円錐型のお香をそれぞれ指さし説明してくるけど、正直効果しかよくわからない。

赤が能力向上、あおが~……?

そんな事を考えていると、如月から質問が飛び出した。

「特定属性弱体化、あるいは特定属性強化のお香とかはあるのか?」

真剣なまなざしで聞いている如月だが、それにケビンが首を振る。

「それは中々に難しい調合なの、あたしにはできないわね。」

「そうか、なら仕方ないな。」

すんなりと如月は引き下がる。

「そういえば、如月が言っていた錬金術の道具ってどんなものなんだ?」

俺がつい先ほどの話を蒸し返すと、如月は思いだしたような顔をして話しだす。

「俺が欲しいなって思っているのは、言ってしまえば鈍器にもなる魔力ブースター。

名前は何だったっけな、覚えていないけれど確か作り方は覚えているはずだけど、今日中に素材が手に入るかなぁ。」

勝手に腕を組んでウンウン悩んでいる如月になにか、違和感を感じとったのかケビンがこちらに話し掛けてくる。

「かれ、なんだか魔法も使えるけれど、錬金術も覚えているなんて、一体何者なの?」

正直、俺に話し掛けられても困るというか、本当の正体を明かすのも如月の身が危うくなるため、言えないというか。

「どうやら家族の中に魔法と錬金術、それぞれに詳しい人が2人居たらしいよ?」

とでっち上げをした。

「へぇ~、そうだったの。」

「うん。」

そんな会話を終えた後すぐに如月が手を叩いた。

「ケビン、使っても大丈夫な錬金術の為の道具ってあるか?」

「為のって?」

首を傾げるケビンに如月が慌てたように言い直す。

「錬金術を行うための機材の事、なんだけど、あるかな?」

それにケビンは申し訳なさそうな顔をして答える。

「えぇ、学校にはあるとは思うけれど、勝手に使っちゃダメなのよ。」

あちゃー、といった顔をした如月にケビンは「少し待ってね?」といって自分の勉強机の場所にまで行き、何かを探し始めた。

「えーっと、確かー、この辺りにあったはずー……あ!あったわ!」

大きな声であることを伝えた後に俺たちに見せてきたのは、直径10cmほどの大きさの装飾がなされた壺だった。

「これ、古道具市で見つけた壺なのだけど。

店員さん曰く、昔錬金術を行うときに使われていた壺らしくって、この中に材料を入れて魔力を込めると、道具が完成するっていう仕掛けらしいの!」

目を輝かせながら話すケビンの話を感心したように聞く俺と、壺に目がいっている如月、しかしその後すぐに残念そうな顔をするケビンにどうかしたのかを尋ねると。

「だけどね、既にどうやって使っていたか分からないそうなの。

あー、こんな時に過去に戻って、使い方が分かる人にあって、そして使い方を教わりたいわぁ!」

頭を抱えながら唸るケビンをよそに、つい俺は横目で如月の事を見てしまう。

「あー、うん、使い方分かるかもしれない。」

如月が地雷を踏み抜いたか、爆弾を自分で発動させたかと思った。

それに勢いよく食いつくケビン。

「ほんとうに分かるの如月ちゃん!嘘は駄目よ!?」

顔が迫ってくるのを背を逸らしながら回避する如月。

「い、いやー、ちゃんと分かっているかは微妙だけど、確か古物に詳しい知り合いが居たと思ったなぁー、その知り合いに聞けば何か分かるかもしれない。

あ、あはははははー。」

あまりにも怪しいその態度に、ケビンは座り直す。

「なによ、分からないならそう言えばいいのに。」

顔が離れたのをホッとした顔をして椅子に座り直す如月。

「いや、分からないとは言っていない、ただ、魔力の込め方が問題なだけだ。

少し、壺に触ってもいいか?」

如月がそう言ってケビンの方を見ると、ケビンが頷いた、それを確認してから如月は壺を手に取った。


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