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滅びた民族と俺の話  作者: 春川 歩
模擬戦闘の足音が聞こえる
35/66

夢の中と超能力

その日の夢の中、なんとなく霧森さんの事を呼んでみたら、霧のようなもやの中から昨日の約束の通り霧森さんが出てきた。

「おや、何か用かい?」

「いえ、用というほどではないのですが……」

「だけど、私を呼びだしたってことは、何か話したいんじゃないのかい?」

「えっと。」

とりあえず、今日の事を話してみる、如月が獣化した俺の事を止めてくれたこと、そんな如月が食堂で姿を現したこと、如月に関することを素直に話してみると、霧森さんは嬉々として話を聞いてみたり、頭を抱えたり、結構忙しそうにしていた。

そして、話し終わって一言、

「うん、あの子らしいね、安心した。」

といって苦笑いをしてきた。

「あの子らしい?」

「あぁ、あの子はね、真っ直ぐなんだけど一癖も二癖もある性格をしているんだよ、天邪鬼っていうわけじゃないんだけど、中途半端な正義感を持ったいたずらっ子でねぇ、自分から厄介ごとに巻き込まれに行く癖に、その後処理をちゃんとしないところがあるからね。

お姉さん心配だよ。」

やれやれと首を振るのに俺は問い掛ける。

「中途半端な正義感?」

「あぁ、そうさ、中途半端な正義感で人に迷惑をかけに掛けているきらいがあって、現に多少強引に魔法の為の術部屋を作られただろう?」

組んだ腕の中で右手の人差し指を立てながら聞かれたから頷く。

「正直、多少迷惑だなとは思いました。」

「そうなんだよねぇ、あぁ、全くあの子らしい。」

霧森さんは言いながら、また頭を振る。

「そういえば、超能力者なのかと前に聞かれたことがあったのですが、超能力者ってなんですか?」

聞いてみると、こちらを見ながら霧森さんが話そうとしてきたが、辺りが白んできた。

「どうやら、そろそろ目が覚めるみたいだね。」

「そうなんですか?」

「そうなんだよ、自分の事位把握しておきな?」

そういう霧森さんが段々と遠くなっていく。

「超能力者のことは如月に聞いてみればいい。

それじゃ、また夢の中で。」

という霧森さんの言葉と共に、俺は目を覚ました。


……


なんとなく久々に良く寝たような爽快感と共に目を覚ますと、如月が円卓の近くに設置されている椅子に座り、足をぶらぶらさせているのが目に入った。

「あ、おはよう。」

肘をつきながらぼんやりしていますといった感じの顔のまま俺に声をかけてきたから、それに俺も返す。

「おはよう。」

「それにしても、良く寝てたな、もう9時になるぞ。」

如月の目線を追うと、確かに時計は9時を指していた。

「朝ご飯は大丈夫なのか?」

如月が首を傾げながら聞いてくるのに、ベッドから体を起こしながら答える。

「あぁ、土日はいつご飯を食べてもいいように食堂が解放されているからな、食堂に行けば何かあるだろ。」

正直なところ、土日は個人で料理を作るか、食堂のおばちゃん達が早朝に作った食事を適当にビュッフェ方式で選んで食べるのがこの寮での普通だ。

個人で料理を作る場合は食堂の冷蔵庫にある食材を適当に使っていいことにはなっているが、やっている奴をみたことが……あったな、たまに料理している人影を見たことがある。

それは、今日の俺みたいに寝坊して食べ物がなくなったり、なんか個人的な理由で別のものが食べたかったりした奴とかだ。

今日は、俺がそれになりそうな予感がするんだけどな。

そんなことを考えながらベッドを降りて、今日は土曜日だという事からクローゼットから普段着を出して着る。

「今日は休みか。」

「そうだけど。」

「休みじゃなかったら殴られるのがおちか。」

言いながらケタケタと笑う如月に、俺は質問をかける。

「そういえば、超能力者ってなんだ?」

「なんだ、いきなりだな。」

「あぁ、起き抜けに気になってな。」

如月は姿勢を正しながら教えてくれた。

「超能力者っていうのは、魔法を使える人とは少し違った存在なんだ。」

「どう違うんだ?そもそも超能力者ってなんだ?」

普段着を着替え終え、俺は如月の前に座った。

「超能力者と魔法使いの違いとしては、力の使い方が違うんだ。

魔法は外の力を媒介にするんだけど、超能力は内側の力、自分の中の気を使うんだったか?」

「自分の中の力……」

「そう、自分の中の力を練り上げて、それを力にして表に出す、それが超能力者だ。」

いまいちイメージが掴めない、それが顔に出ていたのか、如月が更に説明を重ねてきた。

「能力の例を挙げるとすれば、歌声に力をのせたり、身体能力を急激に向上させたり、とにかく自分の能力を挙げたり、相手の気分を高揚させたり、その反対に落ち込ませたりっていうのが俺たちの時代の主な力だったな。」

「そうなのか。」

未だにイメージが掴めないが、とりあえず頷いておくと

「理解しているのか?」

と聞かれたから、つい

「いや、全然。」

と答えていた。

溜息を吐かれてから、如月に

「お腹が減ったから、とりあえず食事にしないか?」

と、言われたため、食事をしに食堂に向かおうと玄関まで行こうと椅子を引くと、扉を叩く音が部屋に響いた。


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