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滅びた民族と俺の話  作者: 春川 歩
模擬戦闘の足音が聞こえる
33/66

オネェの名は

「あらー、案外カッコいいじゃないあなた。」

「そりゃ、どうも。」

「そっちのあなたも、なかなかに可愛いわよ?」

「えへへー、でしょでしょ!がんばってるもん!」

どうやら、俺が居ない間に打ち解けたようだった。

「あら、戻ってきたのね。」

片手を頬に当てた彼は、機嫌がよさそうにこちらを見てくる。

「3人とも、打ち解けたようだな。」

「あぁ、この人の名前は」

如月が名前を言おうとすると、遮られ、代わりに彼自身が名前を答えてきた。

「あたしの名前はケビン、ケビン・スーよ、よろしくね?」

「ケビンか、俺は「神道影理、でしょ?」うん、知っているみたいだな。」

ケビンは如月の事を指さしながら、理由を話してきた。

「そこに居る彼が教えてくれたのよ。」

「なるほどな。」

それに如月は慌てたように弁解をはじめる。

「いや、予め名前を知っていた方がすんなり会話になるかなぁーなんていうお節介心というか、そんなものでなー。」

「いや、別に気にしていないから。」

「あ、そうか?」

予想外だみたいな顔をされても困るというか、何というか。

とりあえずケビンの特徴を挙げていくとする。

髪は黒く、ショート?位の長さで前髪は七三分け、目は垂れていて色は緑、左目の下に泣きぼくろがあり、俺よりも身長がわずかに高く、なんか癪に触る。

そんな事を考えていると、ケビンから俺の外見についての感想を聞くこととなった。

「それにしても、珍しい色の髪の毛ね、赤だなんて、そして目は黒くてアーモンド形、髪の毛も肩ぎりぎりまで長くて、ウルフカットなのかしら、アホ毛が立っているわ?」

「それが、どうかしたのか?」

「いいえ、どうもしないわ、ただ、よくそれで怒られないわね。」

それ、よく言われるとは言いにくかった、この髪色は地毛ではあるが、染めているのかと言われる髪色ではある。

「だけど、カッコいい顔立ちしているわね、彼とは違うかっこよさがあるわぁ~。」

彼と言った時に如月を見たが、その等の如月は頭にはてなマークを浮かべている。

「サイドヘアーが肩の下まで長くて、不思議な髪型だけど、黒髪でいいと思うわ、あたし。」

「それは、ありがとうな。」

にっこりと如月がお礼を言ったところで、ケビンは如月の髪型を指摘する。

「ところで、どうしてサイドヘアーが長いのかしら?気になるわね。」

「それは、ギルド秘密だ。」

「ギルド秘密?」

というか、

「おい、そろそろ本題に入らないか?」

そう、こいつが来たのは俺になにか情報をくれる為じゃなかったのか?

「本題?」

「ほら、ケビンの情報をくれるとかなんとか……」

そこまで言った所で、アンナが頭にじゃれついてくる。

「ねぇ影理ー、あそぼー?」

「あぁ、少し待ってくれな?」

髪の毛を鳥の巣のようにぐしゃぐしゃにしてくるアンナを止めて、手の上に乗せる。

「えへへー、いいでしょー。」

誰に向かって言っているのだろうか。

「いいわねー、手の上に乗せてもらったの。」

ケビンに言ったのか、まぁいいか。

「とりあえず、この部屋に入れた理由としては明後日の模擬戦闘で勝つためにお前の情報を聞こうと思ったからだ。」

話を切り出すと、ケビンは腕を組みながら右手を頬にあてて、なにか思いだしたような顔をした。

「そういえば、そんな理由だったわね、すっかり忘れていたわ。」

おい、重要な事忘れるなよ。

「まぁいいじゃない、まだ2人の自己紹介もまだなんだし、ね?」

「それを情報の対価にしてもいいか?」

首を傾げながらなんとなく言うと、ケビンは溜息を吐いた。

「もう少し対価が欲しいわねー、た、と、え、ば、アナタの所属しているクラスの情報とか!」

まるで名案を思いついたかのように頬から手を離し人差し指を立ててきた。

「あー、うん、それでいいなら。」

正直、情報といっても沢山あるわけではないし、クラスの評判を落とすくらいだったら簡単に出来ることではある。

OKを出すとケビンは如月の方を向いて、にっこりと笑いかけた。

「それじゃ、自己紹介の方をよろしくね?」

それを傍観していた如月がびっくりした顔をする。

「全部こみこみか?」

傍観を決め込んでいた如月としては、こちらに話が来るとは予想してはいなかったらしい、ケビンは頷きながら話を進めてしまう。

「えぇ、そうよ?だってあなた、神道ちゃんのことしか教えてくれていないじゃない。」

「し、しんどうちゃん?」

俺も、いきなりのちゃん付で名字を呼ばれ、思わず聞き返すが、スルーされてしまう。

「さ、まずはちっちゃい子のお話を聞きましょうか。」

俺の手の中で指を肘置きにして足をぶらぶらさせているアンナにケビンは顔を近づける。

「わたしの名前?」

アンナが自分を指さす。

「えぇ、あなたの名前はなにかしら?」

ケビンが質問をすると、アンナは俺の手の中で立ち上がった。

「わたしはアンナ!風と木の混合妖精なの!」

くるくると回りながら自己紹介するアンナはかわいい、それに首を傾げながらケビンは質問をする。

「風と木の混合妖精?」

「うん!」

ケビンが手を出すと、俺の手の上からケビンの手の上に移動するアンナ、それを可愛い可愛いと笑顔で接するケビン、なんだこれ。

「それってどんな子のことを言うのかしら?」

「あのね!わたしのおとーさんが風の妖精で、おかーさんが木の妖精なの!それで一緒になったからわたしが産まれたの!」

「なるほどねー、あ、り、が、と!」

正直ハートマークが飛びまくっている言い方である、なんだこれ。

「次は、あなたね?」

今度は如月の方に目を向けるケビン、アンナはケビンの手の上から飛び立ち、俺の頭の上にまた移動してきた、それと同時に如月が自分の事を指さしながら、「俺か?」というと、ケビンはさも当然のように頷いた、いや、当然なのか。

「あなた以外に誰がいるの?それで、あなたはどんな名前なのかしら、幽霊さん?」

如月は一つ咳払いすると、ケビンに自己紹介を始めた。


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