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滅びた民族と俺の話  作者: 春川 歩
封印されし人間
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ケガの消毒の強制執行

「神道、普通に洋服を着込んでいるけれど、傷の方は大丈夫なのか?」

そう椅子に座りながら聞いてきたから、それに

「結構痛むけれど、これくらいどうってことはないよ。」

と強がった、しかし、

「いや、あの傷はそうも言っていられないだろ、昼間から痛そうな傷だと思っていたから、少し傷の様子を見せてくれ。」

と、心配してくれるが、俺の中で警報がなる、こういうやつに限って、後で酷くしてくるのでは?と。

「いや、大丈夫だから、な?」

その言葉に、機嫌を悪くしたのか、眉間にしわを寄せる如月、悪いことをしたかな、と心が言うが、それを無視すると、もっと悪い結果になった。

「あのなぁ、化膿が一番怖いんだ、火傷して広範囲がべろべろになったんだろ?染みる可能性とか考えずに、大人しく、しろ!」

言いながら、何やら黒い粒を下に落としたなと思ったら、しろ!のところでその黒い粒が魔物に変化した。

「拘束系の魔物!?」

色は黒だが、滑らかな表面、確実に相手を傷つける目的のものではないと分かってはいるが、それでも咄嗟の事でよけようとする、が、体に痛みが走り、直ぐに捕まった。

「全く、まさか嫌がる子供を拘束するための道具がこんなところで役に立つとはな。」

「これ、子供用なのか!?」

真っ黒で、なんか気味が悪いその物体がまさかの子供用ということに驚きが隠せない。

「俺の村では、結構使われていたんだが、村自体が滅んでね、一回その村に戻る時があったからその時に見つけた代物だ。

懐かしいなぁ、俺も、一度はそれに捕まったものだよ。」

そう感慨深げに言いながら俺に近づいてくる。

「いや、いやいやいやいや、だとしても、あってまだ二日目のやつにこんな事することあるか!?」

そうツッコみを入れるが、それを逆に不思議そうな顔で受け流されてしまう。

「ん?敵の事を拘束するのとか、ケガして自分で手当できない人を運ぶのとか、色々と使っていたから、あんまり抵抗はないけど?」

話が通じない。

「ま、大人しく傷を手当てさせてくれ。」

言われながら、寝間着を手繰りあげられる、そして、傷を見た如月はまた眉間に皺を寄せた。

「おいおい、学校で見た時にも思った事ではあるけれども、やっぱりすごい傷じゃないか、こんなのほうっておいたら、跡が残るし、化膿したら死ぬぞ。」

そう言いながらどこから取り出したのかピンセットで脱脂綿をつまんで、そこに傷薬を染み込ませたものを、患部に当ててきた。

「いった、く、ない?」

チクチクと当てられた時には違和感があるが、不思議と痛くはない、それに不思議そうな顔をしていると、ドヤ顔をしながら、理由を言ってきた。

「これは、傷用魔法薬で、腐ったり悪くならないように魔法が掛けられているんだ、あと、これ自体は俺の民族秘伝だから意外と染みないし、治りも早いんだぞ~?」

ポンポンと傷に塗られながら、「へぇ~」とだけ返す。

他にもうんちくなんかも聞かされたが、それを聞き流す。

包帯を巻かれた後はなんだか、痛みも引いてきており、それに驚く。

「こだいのちからってすげー。」

「古代っていうな!」

そんな茶番を言った後包帯を巻いてもらい、拘束を解いてもらった。

如月は拘束用の魔物を元の黒い粒に戻してから、それをどこかにしまい、その後で風呂に入る許可を俺に求めてきたから、それに了承を出す。

その如月がお風呂に入っていったのを見て、俺は少しだけ泣いた。

ここまで俺の事を、初対面ではあるが、心配してくれたのは、子供の頃しかいなかった、この学校に通う前もいなかったが、大体学校に通う前はいたような気がする。

獣人。

それが一番、俺自身憎く思っていることだ、人ならざるもの、知能の低い獣、人型の魔物。

そんな事は都市伝説どころか、人間が獣人を下に見ている現れであった。

昔はそんな事はなかったらしいが、ある一時期からその考えになったらしい、俺は人になる術を元から持っていたし、獣人の中では珍しく、耳と尻尾も上手く隠すことが出来るほどの力を持っていた。

しかし、出来るのはそれだけであったと、今になって分かった、魔法も上手く扱えない、勉強のやる気もほとんどない、そんな劣等生に俺はなってしまっていた。

そんな事を思い出して、泣いていると、お風呂場から如月が出てくる音が聞こえてきたから、泣くのを止める、これは俺に残っているプライドだ。

「ふぃー、気持ちよかったー。」

体から湯気が立ち上ってはいるが、完全に乾いている。

「本当に風呂で頭洗って来たか?」

「そりゃ当然!……あ、シャンプー使っちゃダメだったか?」

バツの悪そうな顔と共に聞いてくるのに、笑いが出た。

「なんというか、如月はぶれないな!昨日からの仲だけど、そんな気がする。」

「そりゃどうも……というか、目が赤いけれども、泣いたのか?」

心配してくれるのはいいが、正直プライドが傷つくというか、指摘しないで欲しかった。

「まぁ、少しな。」

それだけ返した後に、俺は布団の中に入る。

「もう寝るのか?今何時だ。」

如月はそう言って、壁に掛けてある時計を見たみたいだ、「もうこんな時間か。」と呟いていた。

「とりあえずこれから寝るけれども、電気消したいから、入り口の所に行ってスイッチを切ってくれないか?」

俺がそういうと、如月が扉の所にまで行き、電気を消す音が聞こえてきた後に、青白い光が見えた。

何だろうかと思い、起き上がり如月がいるであろう方向に目を向けると、手のひらの上に光の球を浮かべている如月の姿が浮き上がって見えた。

「うん?どうかしたか?」

不思議そうな顔をした如月に、そのままの気持ちを伝える。

「光が見えたから、気になって。」

「そうか、まぁ、ベッドまで行くのに危ないからな、少し光の炎を使っているだけだ。

ベッドまで行ったらすぐ消すから、気にしないでくれ。」

言いながら、如月は寝っ転がっていたベッドのところまで歩いて行き、手のひらの光を握って消した、その後にごそごそという布ずれの音が聞こえて来て、如月が横になったのが分かった。

「それじゃ、おやすみなさい。」

如月から、声が聞こえてくる、それに

「うん、おやすみ。」

と声を返して、俺は眠りに落ちた。

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