魔法実習の時間中に起きたことで、怒られたこと
「次、神道影理!」
そう言われたから、痛みを耐えながらみんなの前に出るが、それをクスクスと笑ってみている人がほとんどだ。
「つい先ほど教えた魔法は使えるようになっているのだよな?」
「……まだです。」
正直に答えたが、とりあえずやってみろと言われたからやってみることにした、先生がやっていた手順を踏んでから、魔法を唱える。
「ファイアーウィップ!」
しかし、何も起こらない。
「神道、またか……。」
「ごめんなさい……。」
「このままだと、俺の査定に響くからやめてくれよな~。」
その言葉と共に周りが笑いだす、そして、他の人達が次々と成功するのを横目に見て、何で俺にはできないんだとか、いっそのことここから消えたいとか、そんなことが頭の中に浮かぶ、そんな感じにぼんやりしている内に最後の人が終わり、先生がこの時間の終了を告げる。
「つい先ほどの練習で、魔法を使えないものは次の時間も練習で、使えるものは模擬戦を行う!それじゃ休憩!」
それを聞いた生徒たちが一斉に体の力を抜いた声がした、しかし、俺にはそんな時間はない、先生がこっちに歩いてきて、その目はつい先ほどの呆れを含んだ目だったからだ。
「神道、できなかったことを怒りたいわけじゃないんだ、分かるか?」
「はい。」
「魔法を使おうとしている人の邪魔をしたら危ない、これはいつも言っていることだろ?」
「はい。」
「それと、ローブには魔法を防御する魔法がかかっている、これも毎回言っていることだ。」
「忘れたわけではなくって、毎回誰かに盗まれたって言って信じますか?」
そう真実を告げるが、恐らくこのあとの反応はいつもと同じだろう。
「信じるわけがないだろう、お前、もしかしてそもそもローブを持っていないのか?」
持っていないわけでは無い、正直お金はないが、買えないわけでもない、買っても無くなるから買っていないだけだし、その内返ってくることもある。
「…………。」
結局黙ってしまう俺が居た。
その後もずっと怒られているが、その間も火傷したところが痛む、それに、体操服も一部分が焼けてしまっているから、買い替えになるだろう、しかし、説教中は保健室に行かせてもらえないなんて、本当にどうかしている。
本当に、嫌になる。
そのまま授業が再開となるが、傷が痛いままだから、先生に保健室に行って言いか聞くと、誰か付き添いをと言ってきたから先生に断って一人でいくことにした。
………
保健室で、適当に処置をしてもらっている間に授業が終わってしまった。
「ある程度の処置はしたけど、治ったわけじゃないから、暫くは様子を見るように!
もしも状態が悪くなったなら病院に行くことも推奨するけど。」
そう言ってくる養護教諭の女性の先生にお礼を言ってから、教室に戻ろうと扉を開ける、とりあえず、体操着を買い替えなければいけないから、後で購買によらなければとも思うが、一先ずは教室に戻って制服に着替えるか。
そう思いながら廊下を歩いていると、透明な何かとぶつかった。
「痛ってぇぇぇぇええええ!」
全身がぶつかり、火傷したところが強く押されてすごく痛い、突然の事で尻餅をつくと。
「あれ?神道。」
そこには何も、誰もいなかった筈なのに、いつの間にかに黒い髪をした如月がその場に立っていた。
「大丈夫か?立てるか?」
そう言いながら手を差し出してくる如月の手を取ると、彼は力強くその手を引っ張って立たせてくれた。
「とりあえず、すごく痛い。」
とだけ返すと、如月は苦笑いしながらそれは大変だと言って、俺の体操着を見て息を飲んでいた。
「一体なにがあったんだその体操着、ボロボロというか、溶けているじゃないか。」
指をさされながら理由を聞かれたから、事の顛末を話そうかと思って、やめた。
心配されたくないし、なんとなくそんな事をしてはいけないと自制がかかったからだ。
「これは、術を失敗したからこうなったんだ、傷はそれほど気にしなくても大丈夫だと思う。」
それで話は終わったつもりだったが、如月は呆れた顔をして話を続けた。
「術暴走か、この学校のやり方は知らないけれど、やり方があんまりよろしくはなさそうだな。
なんだったら、ダンジョンに術部屋を設けるから、そこで練習してみるか?」
という提案だったが、流石に悪いと思ってその提案を却下しようと思った、しかし彼は強情だ。
「そこまでの火傷をしている術失敗者を見捨てておけない性質だからな、ついでにどういったダンジョンを作ろうか悩んでいたところだったんだ。
だから、やらせてくれないか?」
「そこまで言うなら……」
悪い話ではなさそうだから、とりあえず乗ることにした。
「もし、その事を悪いと思うなら食事をさせてくれ、それでチャラにするから。」
対価も要求されたが、仕方ないと思って了解した。
「よし!それじゃ、俺は部屋に戻りたいけど、お腹減っているから、この辺りに無料で食べられそうな店がないか教えてくれないか?」
「それはないと思う。」
そんな軽口を叩きながら歩き始める、教室のある階にまで付いたら、いつの間にかに如月は透明化の魔法を使って、透明になっていた。




