TAKE6:体の鼓動
「正直に答えなさい、小春――――」
フリルがいっぱいの杏奈の部屋であたしは正座をして青覚めていた。
「その首にかかっている苺のネックレスは何かしら?」
笑顔だけれど怖い。それが杏奈の怒りの象徴。
「これは〜あの・・・京介が」
「あら〜そう」
「アハハ〜そう♪」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「渡しなさーい!!」
突然杏奈が飛び掛ってきた。
「やだぁ―――!!」
あたしは急いで杏奈の部屋を逃げ出してリビングに来た。
「苺、お前は忙しいなぁ・・・」
京介・・・お前のせいぢゃ。
そこに、1つの電話が鳴った。
最初に取ったのは京介のお母さんだった。
「・・・・・・はい。そうですか」
それだけいうと切った。
「小春ちゃんのお母さんからよ」
その途端京介は飛び上がった。
「何て!?何て言ってた!?小春意識―――――・・・!」
「まだ、戻っていないそうよ」
京介のお母さんは呟くように言った。
そして京介の肩が下がった。
「心配しなさんなって。小春ちゃん元気に戻るわよ」
京介のお母さん・・・まぢありがとう。
でも京介の表情は戻らなかった。
「何で・・・杏奈の話は出てこないんだろ・・・」
「そりゃーあたしはもう死んだからよ」
げっ、杏奈。
「しばくわよ」
そっちこそ人の心読まんといてくださーい。この・・・おっと危ない危ない。
「京介はあたしが死んでから小春の心配ばっかりしてる」
寂しそうに京介を見つめながら呟いた。
「あたしだって体が生きていたら京介は心配してくれた。何か・・・死んだ人間はもうさよならって感じ・・・」
それだけ言うと部屋に戻って行った・・・と、思ったが。
「ネックレス渡せぇー!!」
「ぎゃ―――――!!」
京介は部屋にこもったまましばらく出てこなかった。
あたしは決心して京介の部屋に静かに入った。
「何か用?」
ムスッとしたのが丸分かりの京介の声。
ちょっと足がすくんでしまった。
「あのさっ・・・小春ちゃんさ・・・」
手まぜを激しく繰り返しながらゆっくりと喋った。
「何だよ・・・もう何もいらねぇよ・・・」
は?
「お願いだから・・・」
京介・・・どうしたの??
「何にもいらねぇから小春を生きさせろよぉ!!―――・・・」
この時、あたしは何を思っただろう・・・。
「兄ちゃんしっかりしてよ!!」
京介の体がビクッと反応した。
「だって・・・あたしさ、小春ちゃんのこと何も知らないけど・・・これだけは言えるよ!!」
京介はぼーぜんとしてあたしを見ている。
「小春ちゃん喜んでるよ。だって京介兄ちゃん生きてるんだもん!!絶対思ってる・・・」
最後を言うほど声が弱々しくなり言いにくくなった。
「そうかもな・・・」
え?
「だぁってさぁ!お前小春の分身みてぇなもんじゃん!お前がそう言ってるなら、小春もきっと――――――・・・」
それ以上は言ってくれなかった。
小春は思ってるから。
信じてね。
“あたし”は、ここにいるから。