TAKE5:おかしな共通点(2日目)
「―――――――――」
んー・・・。
「――――――ご」
・・・お母さん?
「――――――ちご」
あと5分〜・・・。
「っ・・・苺!!」
バッ!!
「はいぃ!!?」
気がついたらここはどこ?
あたしは誰?
目の前にいるのは・・・。
京介!!
自分の手を見る。
・・・小さ。
やっぱ・・・夢じゃなかった・・・。
「何でお前が俺の布団にいつの間に寝てるんだよー」
「・・・・・・」
眠い・・・。
「まだねぼけんのかっ!」
「いてっ!」
頭を一発こづられた。
あたしはしぶしぶ布団から出て京介の部屋を出た。
「あら、ここはあなたの部屋かしら?」
「っ・・・」
あたしは血の気が引いた。
目の前の杏奈はまばゆい笑顔で仁王立ち。
こめかみにはうっすら血管が浮き出ていた。
ダッ!!
「あ、ちょっ・・!」
バタンッ!!
「こは・・・じゃない、苺!!」
へ・・・部屋近くて良かった。
あのままいたら殺されてたよう・・・。
クローゼットを開けるとカラフルに並んだ小さな洋服がずらりと並んでいた。
青のストライプのワンピースをつかむとすぐに着替えた。
ガチャ
「苺ー、着替えたか?っと、着替えチュー・・・」
「っ・・・!!ノック無しに入ってこないでぇ!!」
「えっ・・・」
バタンッ!!
あたしはすぐにドアを体で閉めた。
着替え終わるとドアを開けて廊下に出た。
そこには京介が立っていた。
「あ・・・」
「っく、幼稚園児がそんなデリカシー持つなよな。ほら、買い物行くぞ!!」
買い物!!
買い物なんて久々に感じる。
服買ったりコスメ買ったり・・・。
やった―――――――――!!
手を上げて喜んでいたら京介に体を抱えられて車に投げ込まれた。
来たのは市でも大きいほうのショッピングセンター。『ジュスコ』
杏奈は幸い美容室に行ったようだからあたしと京介と京介のお母さんの買い物になりそうだ。
「じゃあお母さん食材買って来るねー」
京介のお母さんは買い物かごを持って食品売り場に向かった。
「・・・あれ?お前行かなくていいの?」
「・・・え?」
「100円分の菓子選んでくりゃいいのに」
「〜〜・・・・!!あたしだって行きたい店あるもん!!」
「えっ・・・」
あたしは京介の腕を引っ張った。
それはあたしが“小春”として生きていた頃に行きたかった店。
大人向けのかわいい洋服屋さんでかわいい小物もあり1度も買い物をしたことがなかった。
でも、いざついて中に入ろうとすると、
「あほ、お前が来る所じゃねぇ」
と、頭に1発。
中に入らないあたしたちに気づいたのか、店員さんが駆け寄ってきてくれた。
「彼女さんにプレゼントお探しですか〜??」
10分ぐらいその店員さんに薦められた。
ネックレス、リング、ブレスレット・・・。
全部ペアだったけど。
『喜びますよ』
『お勧めです』
『かわいいですね』
の言葉を連発していた。
それを聞くたびにあたしは思った。
あたしが隣に“彼女”としていても、誰もそうとは見てくれないのかな?
あたしが仮に京介に気持ち伝えたらどうする?
消えるだけ。・・・損だよ。
誰も、あたしを京介の“恋人”としては見てはくれないんだ。
あたしは下を向いていた。
京介は何かを掴むとレジに持って行き、清算を済ませて戻ってきた。
「・・・兄ちゃん??」
店の外へ出ると京介はさっきの店で買った物の袋を破り、小さなものを取り出した。
「ほらっ」
首に冷たいものが触れた。
苺のネックレスだった。
「指輪とブレスレットはお前みたいなサイズなかったからさ、それがちょうどお前にいいと思って」
“優しいお兄ちゃん”の姿はとてもまばゆかった。
「ありがと・・・きょ、じゃない・・・兄ちゃん!!」
あたしは思わず京介に抱きついた。
「お前こんな“ちゃっちい”のが好きなのか?ホント、お前等似てるよな」
小声でつぶやいた京介の独り言は聞き取れなかった。
「お前等??誰!?」
「いーの!気になるな!」
京介は軽く流した。
苺のネックレスを見ると、たちまち笑顔がわいてきた。
食品売り場に行って京介のお母さんを見つけた。
かごに入ってる食材からして今日はハンバーグ??
「苺!菓子コーナー行くぞ!!」
「うん!」
さすが、三歳児のような体は食品棚もでかく見せる。
あたしは生きていた頃好きだった商品を探した。
生きていた頃には届いたけれど、今は届かない高い段にあたしの目当ての商品はあった。
「くそ・・・あたしだったら・・・」
ジャンプして見せたけれどもすんごい空回りした。
「バカかお前は・・・」
京介がひょいと取ってくれた。
頼めばよかったんだ・・・。
「えぇ??『イチゴミルクキャンディー』??甘ったるそー・・・」
「いいじゃんべつにぃー!!」
「てかこれ・・・はは・・・まさか」
え?どうしたの?
「お前、小春と味覚も一緒かよ」
も・・・じゃあさっきの似てるよなっても、小春のこと??
「しゃーない、コレ買うか」
あたしのこと、やっぱり覚えててくれてたの?
さっきのネックレスのよりか笑顔が出てきた。
うれしいっ・・・。
ただ、それだけが溢れ出る――――・・・。