TAKE14:小春
真っ暗だった視界に光が差し込んだ。
ゆっくりと目を開くと京介が泣いていた。
視界が妙に光っていると思っていたら、体全体が光っていた。
ゆっくりと体を起こし、うつろな目で京介を見た。
「あたしぃ・・・消えるんだぁ・・・」
不器用に作り笑いを見せながら首を傾けた。
「・・・小春なのか?」
今もまだ信じられないと言う表情の京介。
「んっ・・・」
あたしが答えると京介はそれ以上聞かなかった。
辺りを見ると、そこはあたしが最初に苺として訪れた公園だった。
「はは・・・懐かしいなぁ・・・」
そう言いながらまた京介のほうを振り返る。
「ゴメンネ。京介・・・ムキになんかなっちゃって」
泣いていた目を服の袖でぬぐって京介は首を振った。
「俺のほうこそ・・・ハッキリ言えずにさ・・・ホントガキだよな・・・」
掌で自分の顔を抑えて悔やむ京介。
「やだなぁ。京介―。許すに決まってるじゃない。幼馴染でしょ?」
姿は苺。中身は小春。そんな状況に戸惑いながらも本音を言う京介だった。
小春の腰の部分まで消えてきた。
「1つだけ・・・聞きたいことあったんだぁ」
「何だ・・・?何だよ・・・?」
小春の消える状況に焦りながら聞く京介。
「京介さぁ・・・あの時何て言おうとしてたのかなぁ〜・・・??」
あたしは京介のひざに頭を乗せて目を閉じた。
京介の涙らしき水滴が頬に落ちてきたのを感じた。
ハッと息を飲んだり、鼻の頭を触りながらもようやく答えてくれた。
「お前がよく分かっているだろう?」
「やだなぁ〜疑問系。アハハハ・・・・」
自分でも笑いが棒読みだと感じた。
うれしいけど、もう本当に無理なんだ・・・。
さっきまではそばにいれたんだけど、これからは永遠に無理。
「あたしもだよ――――――――・・・」
目に水滴がたまった。
それはしょっぱくて、もう2度と味わうことのできない味だった。
「普通にいて、普通に話して、普通に笑い合えて、普通に騒いで、
普通に遊んで、普通に告白して、普通に付き合って、普通に手ぇ繋いで、
普通にとなりにいて、普通にそばにいて・・・普通に生きていけたら・・・
良かったのになぁ―――――――――――――――――――」
その言葉に自分で寂しさを感じた。
こんなに生きることについて考えるなんて、空前絶後だった。
目の前から光景が消えたと思ったら、また目の前に暗闇が戻った。
京介がいない。
京介はどこ??
探して探すうちにやっと理解できた。
あたしが消えたんだ――――・・・。
「小春っ!!小春・・・」
自分の元からいなくなった小春。
京介もやっと理解できた。
小春が消えたことを。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
その声は、公園の敷地以上にこだました。
小春が消えた。