TAKE13:未練
京介の横を歩いていると気づく。
目の前に広がる景色が輝いて見えた。
道路、市役所、郵便局、警察署、公園、山、進学塾、人の笑い声、車の音、すずめのさえずり、信号の音、自然のにおい。
汚くっても、汚れていても、この世のものはみんな、あたしにとっては宝物になるんだね。
2度とここに来ないわけじゃない。来ないかもしれない。
でもこの景色を忘れたくない。
家族、友人、先生、親戚・・・・・・好きな人。
自分がやっと手に入れたものを、失くしてしまうんだ・・・。
ねぇ・・・あたしの声届いてよ。
神様―――――――・・・。
京介に連れられて店に入り、あたしはゲームセンターに連れてこられ、京介だけ1人でどこかへ行ってしまった。
ハァハァ言いながら戻ってきた京介は手ぶらだった。
何しにいったんだろうと思いながらも店を出た。
ニコニコしながら隣で歩いている京介を見てムッとした。
あたしもうすぐ消えちゃうんだよ?分かってる?
クッと、京介の洋服の裾をひっぱった。
それに気づき、京介はあたしの手を大きな掌でにぎってくれた。
あたしは京介のそばに少しでもいたかったから、苺としてここに来たんだ。
それだけ?
あたしの未練はそんなに単純じゃなかったよ。
伝えたかったことがある。
でも簡単には言えないような。
あたしの全存在をかけて。
「俺、そろそろ学校行かなきゃな・・・」
え?
「小春が事故あってから俺9日間も行ってねぇや。どうしよう、苺」
前を向いたままあたしに問いかけてきた。
「え・・・兄ちゃん・・・。学校行ってないの・・・?」
そういや朝から京介を見ない日なんてなかった・・・。
「あいつがいない教室に戻るのが怖くてさ・・・。あいつがいねぇところなんて、俺の居場所がねぇんだ・・・」
気がつくとあたしは京介の手から自分の手を抜いていた。
「京介は・・・もっと強い人だと思っていたのに!!弱虫!!」
あたしはわけも分からず京介に言葉を浴びせると家に向かって駆け出した。
「ちょっ・・・京介って・・・苺!!待てよ!」
陸上部の足で追いつき、あたしの腕をつかんで止めた。
「離してよぉ!!バカぁ・・・」
必死で抵抗して振り払おうとしたけど京介の手は離れなかった。
「あのっ・・・だからぁ・・・苺ぉ・・・」
「離してって!!」
手ごたえのある音であたしの意識ははっきりした。
あたしが京介を車道側に押してしまった。
交差点のすぐ脇からあたしの倍の倍以上あるトラックが走ってきた。
あたしには背筋を冷たい物が走った。
すぐにあたしの足は動いた。
この光景。前は逆だったけど、結果は同じにしなくてはいけない。
肩を押さえて倒れこんでいる京介の前に出た。
トラックと京介に挟まれた。
京介はハッとした声を出した。
「おい!苺?何やってんだよ?死ぬぞ!!」
焦っているのは分かってる。
でも後には引けない。
両手を広げて目の前の巨大化するトラックに構えた。
「苺!」
京介に肩をつかまれて余計に力が入った肩を震わせて京介に嘆いた。
「あたしはもう死んでるよ?」
ププー!!
今更気づいたのか、トラックの運転手があわてている。
「は・・・?死んで・・・?」
理解不能な京介の目がよがむ。
「京介っ・・・バカ・・・」
涙した顔で京介の顔を見た。ハッとした表情を見せ、一瞬震えた口を開いた。
「小春――――――――――――――――――っ!!」
懐かしく響く名前の叫び声に、あたしは意識をなくした。