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TAKE10:真相


「教えてやるよ。何で小春が死んだか」

京介の目はキリッとしていて真面目を通り越す表情だった。

ずっと知りたかった事件の真実。

あたしに教えてくれるの?

ゴメン、突き飛ばされたことしか覚えていない。

でも、1つだけ覚えてる・・・。


『ガキッ!!バッカじゃないの!?』


あの日あたし、怒ってた――――――――・・・??





「すっ・・・好きです!」

何事もなかった1日、俺はいつものように学校の門で小春を待っていた。


小春は生まれた時からの幼馴染。

家も割りと近くて何より親が同級生の親友。

だから、親の血がつながっているのか、小春とはすぐに仲良くなれた。


『京くん大きくなったらなにになんのー?』


『ぼく“けーさつかん”になりたいなぁー??』


『“けーさつ”??』


『うん!いっぱい強くなってみんな守る!』

ぼくは胸の前で拳をグッと作った。


『すごーい!!かっこいいよぉ!じゃー小春のことも守ってくれるんやね!』

小春はパッとした笑顔で聞いた。


『もちろん!』

ぼくは誓った。


でも俺の前に現れたのは小春じゃなかった。

黄色のネクタイ・・・。同じ学年だった。

でも顔も名前も知らない。

そんな“やつ”が、俺に告白してきた。


「あの・・・誰かな?」

俺が聞くとその子はハッとしてカバンから1つの手紙を取り出して俺に差し出した。


「さっ・・・さっき言ったとおりです!!これ読んでくださいっ・・・!」

俺が端をちょいとつまむとパッと手を離し、走り去っていった。


『酒井 雛』

名前・・・?


「ふ〜ん・・・モッテモテじゃない旦那」

その声に俺の肩はビクッとした。


「こ・・・小春」

おそるおそる後ろを振り返ると仁王立ちの小春の姿。


「酒井さんかぁわい〜よねぇー。返事はどぉすんのかなぁ〜??」

ニヤニヤしている笑顔が俺の背筋をゾクッとさせた。


「はっ?!何言ってんだよ?」


「返事は!?どうするの!?」

真面目に怖い小春の顔。


「しねぇよ!そんなもん・・・」


「ハァ!?あんたそれほっとくつもりなの?そしたら酒井さんかわいそーじゃない!!」

だんだんいらつきが膨張してくる。


「めんどくせぇ」

俺は思わず捨てるように言葉を吐いてしまった。

すると小春の表情がますますシワを寄せた。


「ガキッ!!バッカじゃないの!?男のけじめくらいいい加減つけなさいよ!断るんだったらハッキリ断ればいいじゃない・・・・・・」

お前ほど物をハッキリ言えたらな・・・。

途端に小春はツカツカ早歩きで歩き始めた


「おいっちょ・・・小春待てよ」


「だって・・・京介が悪いんじゃんっ!!だいたいっ・・・京介の好きな人って・・・・・・」

顔を火照らせてこちらを向き、顔を隠す。


「えっ・・・」


「だって、幼馴染・・・でしょ?好きな人ぐらい教えなさいよっ・・・」

そしてまた俺に背中を向けた。

しばらく俺は考えて口を開いた。


「俺の・・・好きな人は・・・・・・」


「え?」

首だけこちらに回転させて前を見ていなかった小春に、トラックが猛スピードで走ってきた。


「バカッ・・・!!小春!!」

俺は陸上部の脚で走った。

これでも県大会に出場したエースだった。

トラックのスピードに勝って小春を安全な歩道に押し出そうとした。

だが、バランスが崩れてトラックと小春の間に入った。

目の前のトラックが巨大化する。

もうダメだ・・・。

でも、あの日の約束、俺守れるのかな・・・??


『すごーい!!かっこいいよぉ!じゃー小春のことも守ってくれるんやね!』

守るよ。小春。

俺は目をつむってジッと構えた。

突然グイッと後ろに押し倒されて目の前に影ができた。


「京介っ・・・バカ・・・」

目の前には小春が背中を向けて両手を横に大きく広げていた。

もうトラックはすぐそこにいる。

でも小春までの距離は意外にも遠かった。

頭の中がぼーっとし、今何が起きているのかも理解ができない。





「っ・・・・・・・・!!!小春――――――――――――――――!!」




目の前で大きく弧を描く小春の体。

血しぶきと共に地面に倒れた。


「いや――――――――!!」

そこを通りかかった女性の声で俺の意識は戻った。

小春が救急車に運ばれている・・・。

血だらけで、動かない。

俺は何をしていた?

ただここにいただけ。

約束・・・守るって・・・守れなかった。

俺が・・・小春に、守られた。






「これが小春の死んだ真相さ・・・誰も知らない。俺だけ。警察は単なる事故としか思ってないけど、真実を語る余裕なんて、俺にはなかった。でも・・・先に逝っちまったな・・・。ケンカしたままで・・・。俺の好きな人、聞いてもらえなかったな・・・」

涙を流して笑っていた。

何で・・・??


「小春の死は俺のせい・・・俺のせいだ・・・。守るって、ガキの頃の約束だけど。俺はちゃんと本気だったんだ。約束、守るどころか小春に守られて・・・」

笑っていた表情がだんだんと落ちていった。

そして顔を手で隠した。


「兄ちゃん、好きな人って・・・?」

そうだあの時、なんて言おうとしたの?




「小春・・・・・・」




一瞬時が止まった。






「俺はただ逃げる為だけに何かを守ろうとしてた・・・。でも、本気で、いつでも守るっていうなら、“好きな人”しかいねぇだろ・・・小春ぅっ・・・」

顔を抑えている手に力が入った。

あたしは喜ぶどころか、悲しい・・・。

こんな形で聞くことになるなんて。

京介、ここにいるよ。

あたしだよ?小春だよ?

京介が好きで“妹”になっちゃった。


「っ・・・・・」


また京介の側で生きることで、何かが得られるものだと思っていた。

でもそれは、悲しみを歌うことと、同じだった――――――・・・。





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