新ギルド長の改革
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「…………………俺らを雇いたい!?」
目の前にいる先程まで暴れていた奴らが声を揃えて驚いた声を出した。当たり前だ。荒くれ者を雇うやつなんていないからこいつらは冒険者になったのだ。
「ええ。このギルドはまだまだ不安定なところがあり、それをここの住人及び冒険者たちで補っていくというのがうちの方針となります。」
まあ、俺達だけじゃ人手が足りないからな。暴れるだけの力が有り余ったこいつらなら適任といえば適任か。
「そ、それで………アニキたちは一体何者なので?」
いつの間にかアニキ呼ばわりされてしまった。まあ、あれだけ叩きのめせば当然かと苦笑いする。と言ってもほとんどトウヤと姉ちゃんがしたことなのだが。
「俺達は新ギルド様にお仕えする者だ」
「新ギルド様?」
「じゃあ、貴族なのか??」
「だけどよ……」
俺の言葉にざわざわとなる冒険者ども。
「新ギルド様のことは後後分かる。それよか、雇われるのか?雇われないのか?」
「雇われます!!!!!!」
声を揃えての即答だった。
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「そう。雇われたのね。」
私はまずは突破できたことにほっとしました。
「まあ当たり前っすよ。奴らの居場所なんてギルド以外にないんですから。」
「それでも今まで自分たちを放置してきたギルドからのお誘いに簡単にのってくれるのかしらと心配だったのよ。」
これで表面でのギルドの安定は確かなものとなりました。冒険者の名簿はエリがまとめてくれましたし、受付嬢の手配は済んでいます。怖いくらい順調ですわね。…ですがこの荒れ具合に関して少々気がかりですが。
「よし、次の問題ね。」
次の問題。それは住人の暮らしについてでした。ここ何年かの作物量をみているとどれも僅かなものでした。原因は栄養のない土と近くにない水源。土はともかく水は、飲み水もまともに確保できていないという状況でした。私はそれをマリカに伝え、マリカにあることを頼みをました。
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朝。アレスタの住人たちは変わりのない飢えととても期待出来ない作物に一喜一憂する失望感に苛まれながらのそのそと家から出た。そこで彼らは信じられないものを目にした。
「なななななんじゃこら!?!?」
「たたた大変だ!!魔物が攻めてきた!!」
彼らの目には昨日寝る前まではなかったはずのみたこともないほどの大きな『何か』といくつかの畑が写しだされていた。
「ギ、ギルドへ行くんじゃ!!」
「その必要はありませんわ」
突如現れた、妖艶な雰囲気を持つ女はいかにもおもしろそうに言う。
「そ、それは………魔物ではなく…………『びにいるはうす』というもの………です」
とその女の後ろに隠れる子供がぼそぼそと言った。
住人達は顔を見合わせて、その初めて聞く『びにいるはうす』というものに首をかしげた。
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「そう。ちゃんと説明してきたのね。ありがとう。それでどうだった?」
私はマリカとシュウに問いかけます。今私がマリカに頼んだことの報告を聞いています。マリカに頼んだ事とは、住人達が安定した暮らしを送っていけるようにまずは作物を作れる環境にすることです。私はマリカに栄養の無い土の改善と長く丈夫なパイプ作りを指示しました。
まず私はここから何キロもある水源へと行き、水質調査をしました。水質は問題ないようだったので、アレスタからここをパイプで繋ぎ、水を確保しました。そして井戸を作りそこに水が貯めれるようにしました。これで水の問題は解決です。
さて、次の問題です。次に私は各場所に畑区域を作りました。その区域に高さ三十センチの長方型に掘り、そこに栄養豊富な土を入れました。これで完成です。
ええ、これを1晩でやるのは大変でしたとも。ですが、これはあくまでのお試し。住人の皆さんが気に入っていただけるか分かりませんから。さて、皆さんの感想は……と。
「泣いて喜ばれました。」
「そう。では、今度は皆さんと一緒に作っていきましょうか。マリカ、シュウ頼みました。」
「「はい!」」
ふう。これでまずはひとまず安心でしょうか。
「お嬢様!!!!」
ほっと一息つこうとしたところで、慌ただしく入ってくるアイサ。なにごとでしょう?
「ここから2キロほどあるところで暴動が起こっています!どうやら新ギルドに対する不満からのようです。」
まだまだ安心はできなさそうです。