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お父様が出された処分

 帰りの馬車は大変でした。なにせ皆苛立っているのが馬車の中からでも伝わってきましたから。


「なんでお嬢が罰を受けなきゃいけないんだよ!!!」


「…それはさっき説明したよ。」


「あれじゃあ納得いかねえだろ! なんで旦那様はあんなこと…」


「まあ、客観的に考えてお嬢様が邪魔だったんでしょうね。」


「…そうね。そう考えるのが妥当だわ。言いたくはないけれど…」


「はあ!? 意味わかんねえよ。なんで…」


「私たちだって分かんないつーの! あんたもなんでなんでって子供みたいに騒いでないで少しは自分で考えたら?」


…ふう。ワタルは、信頼していた師の考えていることが分からなくなり混乱。アイサはかつて自分がいた家の件で私に迷惑をかけたと思い気が立っている。あとの三人はそんな彼らの気持ちを察するがあまり何も言えず、これから起こることへの不安で押しつぶされそうになっている。…とまあ、こんな感じですわね。


「…申し訳ありません。黙らせてきます。」


エリが怖い顔で、走っている馬車のドアを開けようとします。…いつもと変わらない様子だと思ったのですが、この子もだいぶ気が立っているようです。


「大丈夫よ。どうせ帰ったら騒ぐ間もないくらい忙しくなるのだから、今くらい好きにさせてあげましょう。この時間帯はまず危険を避けて、通る馬車はいないでしょうし。」


「…はい。ですがこれ以上騒がしくなるようでしたら、気絶させ馬に固定させます。」


…本当にしそうだから怖いわね。


「…お嬢様は一体何をお考えなのですか?」


しばらく沈黙があり、ふとエリが俯きながら私に問いかけました。


「ん?」


「今回の会議でルドルフ様が提示された件。お嬢様はあれらをすべて論破されることができたはずです。娼館は本来お嬢様の所有物であり、それはあそこの者たちも理解済みです。正直言って、ルドルフ様よりもお嬢様の方が信頼されていますので、あの場でシャーロット家の所有するものだと主張するのはおかしいはず。お嬢様はお止めになりましたが、あの場にミキを連れて来させ証言を訂正させればそれは立証できました。二件目のお金ですが、あれは大臣が出してきた条件です。それを立証するものはこちらの手の中にあります。それで大臣を脅せば済む話だったのでは? 最後の暗殺貴族ですが、あれは騎士団が証明してくれるではありませんか。お嬢様が暗殺の対象になっていたのは、証言ですでに分かっている事実。なぜそれを言及されなかったのですか?」


声を荒げるエリを見たのはこれで二度目ね。どちらも私の身を案じたとき。この子は本当にいい子です。


「…あなたが怒るなんて珍しいわね。」


「…失礼しました。…ですが…あまりにも納得がいかないのです。最近、ルドルフ様のご様子がおかしいということは気づいておりました。ルドルフ様でしたら管轄内であのような事件、発生する前になかったことにするなど容易いことでしょう。私にはわざと見逃していたかのように思えてならないのです。それに、ルドルフ様はお嬢様をギルド長に命じられた張本人です。ルドルフ様はお嬢様の性格も行動パターンも把握していらっしゃいますし、自分が不利益なことをわざわざするとは思えないのです。」


「そうね。私も同じ意見よ。だからわざとのってみたの。お父様が何を目的としているのかさっぱりだったから。お父様は我がシャーロット家の歴代当主の誰よりも勝る手腕の持ち主。あの方がなさることすべてが何かを完成させるピースと考えて間違いないわ。今回のことで一つ分かったことがあるの。」


「…ルドルフ様があの宗教集団と手を組んでいる可能性が高いということですか…?」


あら、さすがエリ。言わずともそこは分かっていたのね。


「お父様はどうしてもこの件に関して手を引くことができない理由、かつどうしても守らなければならないものがあったということよ。…そう考えると自然に分かってくるでしょう? お父様がそうしてまで守らないといけないものが。」



☆☆☆☆☆☆


 そして、アレスタでお父様の便りを待つこと数日。


「後のことは任せたわ。なにかあったら連絡を頂戴。」


私は顔が涙でぐちゃぐちゃになって見送りをしてくれた子たちの頭を撫でて、馬車に乗りました。


「あら? ごきげんよう。追放令嬢。まさかさっそく来るとはさすがの私でも想像できなかったわ。」


「こうなると無様以外の言葉がないわね。のこのことなにもできず、国外追放を受けるなんて。」


…なぜあなた方が乗っているのでしょう。馬車の中にいらっしゃったのは、セナ・ルクエアと

マリーヌ・ノッテ姫。二人とも面白いものを見るかのようににやにやとしていらっしゃいます。


「…訂正いたしますと、国外追放ではなくてただの社会勉強ですわ。」


「あら? しばらく頭を冷やして来いの間違いでは?」


「言えてるわね。それか、もう二度と顔をみせるなってことよね。」


…くっ。


「…そんなことをいうために来たの? ずいぶん暇なのね。」


「そんなわけないじゃない。あなたのためにわざわざ道案内をしてあげるのよ。感謝なさってね。」


「私はあんたの顔を見に来たの。思った通り滑稽な顔だわ。」


顔を見合わせて笑い合う二人。…今までにないくらいいい表情ですわ。


「ノッテは退屈しないいいところよ。あなたたちが来た時よりも、面白いものがさらに増えたのよ。ふふっ、あなたたちの間抜け面が目に浮かぶわ。」


 こうして私は生まれ故郷のアルデヒドを発ち、友人マリーヌのところでお世話になることになったのでした。


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