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裏切りの査問会

☆☆☆☆



「…旦那様。ご準備ができました。」


シャーロット家執事長、セバスチャンの声と共に席から立ちあがる、シャーロット家当主ルドルフ・シャーロット。彼は曇天の空を眺めていた。これから起こるであろうことを暗示するかのような空にルドルフの心もなんとなく沈んでいった。だが、彼は当主。切り捨てるべきものは切り捨てなければならないし、また守るものはその命に代えても守らなければならない。いままでそうしてきたし、これからもそれは変わることはない。狐だ狸だと呼ばれても、たとえ悪魔だ鬼だと罵られようともだ。


彼、ルドルフ・シャーロットには守るべきものがあった。それこそ彼の生きている意味でもあるといってもよいくらい。


「…今行く。馬車に荷物をのせておけ。」


これから彼は、最大の賭けをすることになる。その賭けはまず誰も救いはしないだろう。もしかしたら失敗するかもしれない。しかし、今まで賭けてきたもののためにも彼は賭けなければならなかった。この時のために彼は今までBETしてきたのだから。どんなものを代償にしても大切なものの未来のために、彼は書斎を出た。



☆☆☆☆



私の元にある一通の手紙が届きました。その手紙の内容はバリー商店の件についての査問委員会の呼び出しでした。…やはり動きましたか。私はそれを要求した人物の名を冷静に見つめ、そして私はエリたちと共に王都へ向かいました。


「それではアルーシャ・シャーロット。今から貴殿の査問会を始める。貴殿はただ正直に話せばよい。」


査問会は王、国の主軸の大臣三名、お父様、騎士団長のシューベル・シャンボルト様、それに査問の対象である私の七名で行われました。


「では、今回この会を要求したルドルフ・シャーロット。貴殿がこの会を要求した理由を申せ。」


「はい。では…」


この件でお父様が私を問いただしたことは三つほどでした。一つ、シャーロット家のものを無断で使用した件。二つ、秘密裏に動いたお金の件。三つ、秘匿で暗殺貴族を使用した件。


一つ目の件は娼館のことです。この件に関して、ミキから聴取していたようです。お父様の言い分は、シャーロット家のものを当主に無断で使用し、それを客を欺く形で利用するということは営業を妨害するものであるとともに所有しているシャーロットの名を落とす行為だと。


「この件に関して申すことはあるか?」


「ありませんわ。」


「…では、次の件へといきましょう。」


 そして二つ目、秘密裏に動いたお金の件。これは目の前の大臣も関わっていることですので、上で検討するという結果になりました。つまり私に責任を押し付けて、もみ消すということでしょう。


 最後の三つめ、秘匿で暗殺貴族を使用した件。これに猛反発したのは、シューベル様でした。騎士団の報告は使用していたのはバリー商店側で、アルーシャ側はただ襲撃されただけだと。


「大体この場に、マーダーがいないのがおかしいのだ。この件に関して、どう考えてもアルーシャを責め立てるのはおかしい。そもそもこの会議自体異常だ。ルドルフお前、自分の娘を失脚させる気なのか! 何を考えている!?」


「愚問だな。私はこの国の未来を任せられている身。自分の子供だろうが親だろうがそれに勝るものはないと考える。私はただこの件に対して白黒つけたいだけだ。白ならば共に安堵し、再び苦楽を共にしよう。しかし黒であった場合は…」


「黒であるはずがなかろう! この子は道を外す行為が最も恥すべきことだということを分かっておる。この若さでシャーロット家に誇りを持つということも理解しておる! それは一番他ならぬお前がよくわかって…」


「シューベル殿。情に訴えるのであれば余所でやっていただきたい。これがどういう人柄だったのかは、今回の件に関係ない。」


「その通りですな。大体シューベル殿は少々肩を持ちすぎでは? グリアム様との婚約解消の件はご存知でしょう? その件から察するに、今回のことも同様なのでは?」


「同感ですな。ルドルフ殿も娘が可愛いのは大変結構ですが、こうも厄介ごとを引き起こされますのは、さすがの私共も迷惑極まりないですな。私共も暇ではありません故。」


これにかちんとこられたシューベル様。当のお父様は素知らぬ顔。


「何を言う! 偉ぶりばかりして大して仕事もして…」


「今回の…」


私が口を開きますと、途端に皆さま口をつぐまれました。私が会議の中で、初めて自分から発言した瞬間でした。


「今回の件、すべて私の不始末で起こったこと。責任はすべて私にあります。どのような処置でもお受けしますわ。」


「なっ!? アルッ…」


「よかろう。では、アルーシャ・シャーロット。貴殿は今回の事で処罰される身。しかし、商業ギルドやギルド長では見事な功績を残し、わが国に貢献しておる。よって貴殿の処置はルドルフに任せと思う。異論はないな。」


「寛大な処置に感謝の言葉もありません。」


「うむ。では、今回の査問これにて終了とする。」


王の言葉でこの会は締めくくられました。お父様は淡々とした口調で私のそばを通り過ぎながら言いました。


「お前の処罰は後日伝える。それまでアレスタにおれ。…シューベル、あの件について話がある。」


「お前と話すことなどないわ! 離せ!!! わしはアルと…」


「承知いたしました。」


お父様は結局私と顔を一回も合わすことなく出ていかれました。シューベル様がお父様に引きずられて行かれるのがわかります。


「…お嬢様。馬車の用意はできています。」


「…ええ。そうね。」


最後に残ったのは私だけです。早く出ていかなければまた、あることないこと勘ぐられてしまいます。出ましょうか。


「アル! ちょっとどういうこと!? なんでこんな風になってるの!? どうなってるの?」


いきなりお供もつけず部屋に飛び込んでこられ、私にタックルをされたのはこのアルデヒド王国の第一王女アントワーヌ様でした。


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