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事件後のこと

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「…あー! めんどくせえ!!! なんでお前らこんなに汚したんだよ!」


ワタルが手にしていたモップを放り投げた。


「言っとくけど、あなたたちがちゃんと屋敷に入る前に片づけておかないのが悪いのよ! 一体何やってたのよ!」


朝になって、想像した通り屋敷の外も中もひどいあり様。昨日の見回りほんとは適当にして、さっさと眠ってやり過ごそうと考えていたのにまさかのドンピシャ襲撃。本当私って運がないよねぇ。


「俺もあんな退屈なのじゃなくてもっと楽しみたかったんだぜ? でもよ、トウヤのやつ、修行に行ってたとかでいなかったんだよ。」


「はあ!? ほんともう信じられない!」


「最近、部屋に帰って来ねえし…。そんなにショックだったんかな…」


こいつが言っているのはおそらくお嬢様とあのぼんくら大臣の息子の未遂キス事件のことだろう。そこで私は気になっていたことを切り出した。


「……ね、もしかしてさ。トウヤってそうなの?」


「は? そうってなにが?」


「だーかーらー! お嬢様のことそういう意味で好きなのかってことよ!」


「なっ!? なんで知ってんだ!?………やべ!」


ふっ。というかふーん。あのトウヤがねぇ。エリあたりが聞いたらキレそうよね。


「…他のやつらに言うなよ。…あいつ結構マジなんだからさ。」


使用人と主人との恋ねぇ。面白そう。


「いつから? やっぱ拾われたときから? そういや私あいつにこてんぱにやられてここに入ったんだったな。……うふふふ!!」


「……ほんとに止めろよ…」


 お屋敷の清掃はまだまだかかりそう。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「あんたこんな辛気臭いとこに住んでんの? 趣味悪」


「別に私がどこに住もうがあなたに関係ないわ。放っておいてちょうだい。」


「はあ!? 何よその言い方。この私がせっかく先日のお礼を言いに来たのよ。感謝しなさいよ。」


「…お礼を言いに来たとは思えない態度ね。」


 昨日の事件後、やっと一息をついていた時、いきなり押しかけて来たセナ。すっかり調子を取り戻したようで、私の部屋を物色しながらお得意の毒舌を披露しています。


「ふん! というか別にあなたが来なくても私一人であんな奴ぼっこぼこにできたわよ。」


「…半泣きでしたくせに…」


「目の錯覚よ。それにしても、あんたのところの商品ってだっさい容器使ってるわね。外側にも気を配りなさいよ。」


…話逸らしましたわね。


「容器よりも中身を大事にしているのよ…と言いたいけれど、確かにそうね。考えてみるわ。」


「ふふん! 私への感謝を込めてひざまずいてもいいのよ。」


得意げにいつものセリフを口にするセナ。…完全に復活ね。


「あなたも変わらないわね。」


「アルーシャも変わらずいい性格してるわ。パパを引き込むなんて。」


「あら? それがあなたの依頼だったのではないかしら?」


「まさか本当にできるとは思わなかったのよ。できませんっていうあなたが見たかったのに」


「それはそれは。ご期待に沿えず申し訳ありませんでしたわ。」


 今回のことについて私が行ったことを時系列に沿ってご説明いたしますわ。


 まず、王族禁じ手である暗殺貴族と呼ばれる方々がこの事件に関わっていると分かったとき、私はまず表からの潜入は無駄だと分かりました。ですから、私はシャーロット家が所有しているとある娼館を訪ねたのです。そこはシュウがいた場所でもあります。長くなるので割愛しますが、簡単に言うと、シュウを引き取る際にその娼館もおまけでついてきたのです。


「ええ。これ私のお客さんですね。…この方のところに一緒に? 可能ですよ。あいつ結構いい趣味していますからそうですね……エリさんならばっちりですよ。明日の正午に待ち合わせしていますが、行きます?」


そこでミキと交渉しました。エリをミキの後輩として連れて行ってほしいと。快く引き受けてもらってよかったです。


「だって面白そうじゃないですか。それに…いえいえ。なんでもありませんよ。お礼だってもらえますしね。楽な仕事です。」


これで内部の状況を把握できます。


 次に、裏付けや証拠を集めました。そのあたりは前にご説明した通りです。こればかりはお金を使わなければなりませんでした。時間もありませんでしたし。必要な出費だと自分に言い聞かせましょう。


そして、それと同時進行でセナの元に行くという荒業をしなければなりませんでした。これはアラム様のご協力がなければ不可能でした。協力する代わりに何故かデートをこじつけられましたが…。あの方が何をしたいのかよくわかりませんわ。エリに手紙を頼み、それをセナやルクエア夫人に読んでいただき、正式にギルドに依頼してくださる返事を書く時間がどうしても必要だったのです。そうでないと動けませんから。


とまあ、あんまりしつこく説明をしてもあれですから、このような形でまとめましょうか。


「ふん! あの天然の取り巻きの手を借りたっていうのがすごい癪に障るけど。今回堅物のあいつといい取り巻きの手借りすぎじゃない? 天下のシャーロット公爵家の令嬢様がそんなんで大丈夫なの?」


「ふふっ。あなた機嫌いいのか悪いのかはっきりしたら?」


「悪いに決まってるじゃない。」


「…そう言えば、海に落ちたときあなたの言う堅物団長にずいぶんお世話になったそうね。どうでしたの?」


「何が言いたいのやら。」


そっぽをむくセナ。セナがアーベルの頬を思いっきり叩いたと聞いたのだけど、その様子じゃまた素直になれなかったのね。やれやれ。アーベルもアーベルでそういう浮いた話は苦手ですから、この二人は会うたびにこのような結果になるのですわ。


「その件に関して、アーベルからセナへと渡してくれと言われていたのですけど。」


「えっ!? …あ…。…ふーんそう。」


笑いをこらえながら、セナに包みを渡しました。セナは嬉しそうな表情を隠しながら、大事そうに手に持っています。この手のことに一番慣れてそうなのに、そうではないところがセナの可愛いところです。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆


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