私にも一応友人と呼べる者はいるのですよ
私の友人の話をいたしましょう。私が学園にまだ在籍中の話ですわ。私はこの通りエリザ様のように人に好かれるような顔立ちも生き方をしていません。ですから、私はみなさんが考えているような状況でした。しかしながらまあ、そんな学園生活も悪いものでありませんでした。人間とは似たようなもの同士くっつきあう生き物であり、わたしたちも例外ではありませんでした。他の友人たちについて紹介したいのはやまやまなのですが他の機会に(忘れてしまいそうですが)話すとしましょう。そして今回の事に関係のある友人、セナ・ルクエアについてお話ししましょう。
彼女はある企業に成功したルクエア家の一人娘で、腰まである金髪に端麗な顔立ちから発せられる強烈な一言でみんなから疎まれておりました。彼女の容姿に騙されて、人間不信になった方もいるほどです。…それでも男性からの人気はあったようですが。セナのその毒舌っぷりは私たちでも引いてしまうほどです。そんな彼女の父、バリー・ルクエア様はその会社を一代で築き上げた凄腕。一見そんな方なので怖くて厳しいイメージを持つ方も多いかもしれませんが、本人は全くその逆。優しくて温厚な方で、家族をこよなく大事にされる方です。家にお邪魔したとき、娘と仲良くしてくれてありがとうとお礼を言われ、そのあとセナから強制退場をさせられたことは当時セナの鉄板のからかいネタでしたわ。そのお人柄と人望でどんどん利益を上げていかれたバリー様は、今では知らぬものがいないほど有名企業となりました。それが他でもないバリー商店です。
「……それでは…ごきげんよう…と。」
…さて。大体書き終えましたね。
「お嬢様、ご友人へのお手紙は私が出しておきます。」
「ありがとうエリ。」
便せんに入れた手紙を渡し、一息つくと自然に机の上に目をやりました。
「…ついでに他のにも目を通しましょうか」
私が留守にしていた分プラス忙しくて溜まりに溜めてしまった分の招待状の束。あの結婚披露パーティからそれまで一通なかった招待状の数は段違いに増えてしまいました。面倒ですわ。貴族って暇な方ばかりねとつくづく思います。
「あら?」
そのなかで一通異彩を放つ手紙が。宛名は懐かしい名前。
「…マリーヌ・ノッテですか。あ、今はノッテ王国の姫君とお呼びしなければならないのでしたか。」
中を慎重に開けて読んでみますと、長い建前のあとただ短く箇条書きに指定された日にちと時刻、そして場所が記されてありました。とりあえず罠らしきものはなかったので安心しました。彼女はたまに遊び心だと言って手紙に巧妙な魔法をかけて送ってきたりもするのです。ああ、ラブレターだと偽って送った男性が目の前で蛙となってしまった出来事には今でも笑いが止まりませんわ。
「エリ。マリカを呼んで頂戴。明日王都に出かけますわよ。」