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ギルド長会議後(2)

 そんなこんなでセト様オススメの料理を食べ終えた私は、そろそろ来るであろう本題を待っていました。


 「…それでだね」


先程とは打って変わった表情で切り出して来られるセト様。やっと来ましたか。時間的にもここしか話すタイミングはありません。さあ、時間はたっぷり与えられていたのですから、こちらは準備OKですよ。


「…………黒いマントの男のことを調べるのは止めなさい」


しかし、セト様から発せられた言葉は私の予想するものとは違うものでした。紛争の軍事資金の依頼では無かったようです。商業ギルドの話をされたので私の中で確定してたのですが……。まあ、いいでしょう。そちらから黒いマントの男について話題を持ちかけてくれるのですから。


「……………その理由をお聞かせくださいますか?」


「……………理由はいえない。大人しく手を引いてもらいたい。」


有無を言わせない物言いで圧力をかけてくるセト様。よほど何かあるのでしょう。もしかして…グルなのでしょうか。そうだとしたら大変なことですわ。国の王が悪事に加わっているだなんて…。ですが、逆にそうだとしたらなぜ私に釘をわざわざ刺したのでしょうか?………………ここで決断を下すのはあまりにもリスクが高いというもの。そうそうに引きましょうか。


「セト様……っ!」


急な高い魔力の濃度を感じ、私は思わずセト様の腕を引っ張りました。その途端、セト様が座っていらっしゃった椅子は粉々に吹き飛び、その衝撃で私たちは壁に体当たりする羽目になりました。


「なっ!?」


そして再び高濃度の魔力を感知し、私は叫びました。


「第二波が来ます! 衝撃に備えて!」


それと同時に部屋が吹っ飛びました。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



朝早くにお嬢はギルド長会議へと行ってしまった。俺ら使用人は同室することが出来ないためその間お暇をもらったが、正直やることが無い。それに昨日のこともある。完全にお嬢を狙っての犯行だった。きっとまた狙ってくるだろう。


「なぁ、姉貴。お嬢午前中には終わるって言ってたよな?」


隣の姉貴に聞くが姉貴は呆れた顔で、


「大事な会議なんだから、時間通りに終わるわけないでしょう?」


と手にしている双眼鏡から目を離さずに言う。俺はいつもより近くにある太陽を肌で感じながら心配していることを口にした。


「お嬢時間にうるさいから、イライラして反感買ってねぇかなー?」


「馬鹿ね。ワタルじゃないんだから。……私が心配なのはあのエロ親父に言い寄られていないかということよ!お嬢様、美人なのに無防備なんだから!」


自分がされたセクハラの数々を思い出しているのか、双眼鏡を握りつぶしそうな勢いの姉貴。姉貴が言っているのは……確か……魔術で有名なあの…国の奴だったか。


「そうよ! あいつの手が早いっていうのは有名なんだから! 私の時は我慢してあげたけど、お嬢様に手を出してご覧なさい。後悔させてあげるんだから。魔術を作ったカイン様の子孫だろうが、最高峰の魔術師だろうが知ったことではないわ!!」


その姉貴のすごい剣幕に久々に顔も知らぬ相手に同情したぜ。それにしてもお嬢が無防備?あのお嬢様だったら問答無用で相手を焼きこげにしそうだけどな。


「あっ、出てきたわよ。」


姉貴の言葉にお嬢を探すと、開放感を感じられる顔をしているお嬢を発見した。やはり会議はあまり居心地がいいものでなかったようだ。よかった。これでお昼にありつけるぞと思ったが、


「ん?誰だあのおっさん。」


どっかの国のおエライさんらしいおっさんに、お嬢は旨い匂いのする店へと連れられてしまった。…俺が飯を食うことが出来るのはまだ後のようだ。


「………………ええ。それはこちらも確認したわ。…………分かった。気をつけてね」


姉貴はほかの奴らと連絡しているようだ。こういうのを見ると魔法って便利だなと思う。俺には一生使いこなせる気はしないが。


「エリが怪しい奴らがいないか周囲を確認してるわ。私たちはこのまま待機だそうよ。それと1つ。気づいていると思うからいうけど、お嬢様に殺気を向けた彼らには手出し禁止よ。」


「…………へーへー。りょーかいっと」


………ちっ。先に釘を刺されちまったか。


「お嬢様の前に座っている人は砂漠の国デザールの王様だそうよ。彼らはその王様を守る親衛隊のトップ四人。なかなかの強者ね。」


それは面白そうだ。最近満足できるような強敵と戦っていないからな。


「はいはい。その殺気はしまいなさいね。今護衛中なの忘れないで。」


…………この姉にはつくづく敵わない。ため息を付きながら適当な返事をした。


「はいは1回!」


……手厳しいのはここに1人いたわ。


「はーい!あー! 暇ー。あいつら誰かから襲撃でもされねぇか……」


その時どこからか破裂音がし、次の瞬間お嬢が居た部屋が吹き飛んだ。



☆☆☆☆☆☆☆☆



「大丈夫ですか?セト様と護衛の方々」


私たちがいた部屋から火が出ているのを近くの丘から確認し、私は尋ねました。


「あ、ああ。」


呆けた顔をする彼らはひとまず置いといて。まずはマリカに連絡をとりました。


「お嬢様。ご無事で何よりです。今からそちらに向かいますわね。それと襲撃者に関してですが、既に全員捕獲致しました。店の主人も無事に避難させましたのでご心配なく。部屋の弁償金も払っておきましたわ。」


……せっかく短いながらも休暇をあげたというのに、どうやら彼女達は私をずっと見守ってくれていたようです。対応が早くて助かりました。


「ありがとう。お疲れ様」


ということは、私が今すべきことはこの状況の説明と言ったところでしょうか。


「急な襲撃でしたので手荒だとは思いましたが、みなさまをここまで避難させました。襲撃者は、既に私の者が全員捕獲致しましたので、ここへ連れてきていますわ。店の主人も無事だそうです。」


「…………ちょ、ちょっと待ってくれ! ここからあの店までどのくらい離れていると思う!? 陣も無しでそんな無謀、許されると思っているのか!? 失敗し王に何かあったらどう………」


「そんな失敗ありませんわ。私はその時の最善の策をとったまでですから。そうしていなければ、今頃皆仲良く消し炭となっていましたわよ? 私はそんなのごめんなのでお薦めはしませんが、今すぐにでもあの部屋へ戻してあげましょうか?」


にっこりと微笑むと、つり目の男は言葉に詰まりました。………うふふ。もちろん冗談ですよ。これは私に殺気を向けたお返しです。


「な、なにを…」


「止めなさい。先にいう言葉が違うだろ。アルーシャ君、私共の命を救って下さってありがとう。」


「いいえ。私はギルド長。自分の責務を全うしたまでです。」


セト様とのお話は襲撃者によって中断させられましたが、意図せず恩を売ることができたので結果はまずまずと言った所ですね。よし。おそらくセト様の敵方であるあの襲撃者たちを引き渡して、早々とこの国を後にしましょうか。色々気になることもありますしね。



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