ギルド長国際会議3
そして、円形のテーブルに六名が座られました。それぞれなにか思われることがあるようですが、とりあえず収集をかけた国の代表として私が挨拶等をするのが筋というものでしょう。
「今回急な収集にも関わらず応じて下さり、感謝申し上げますわ。そしてお初にお目にかかります。アルデヒド王国ギルド長に新任いたします、アルーシャ・シャーロットでございます。では、さっそくで申し訳ないのですが、今回の会議の趣旨についてご説明させていただき……」
「まあまあ。焦らない焦らない。とりあえずさ、自己紹介でもしませんか?なーんか場の雰囲気が暗いしね。」
あなた先ほどのご自分の言葉覚えていらっしゃるのでしょうか?あなたの発言でみなさまピリピリしていらっしゃるというのに。噂どうり読めない人ですわ。ですが、少しヴェルという方に興味がでてきましたわね。
「まあ、確かに。では、私は…」
はい。ここからは先ほど紹介した方々は以下省略とさせていただきますわね。同じことを何回も言うのはあまり好きではありませんの。
「私は砂漠の国デザールのギルド長代理のセト・フィラオという。君とはいろいろと話してみたいものだな。よろしく頼むよ。」
砂漠の国デザ-ルは今、国内紛争が激しい国だとお父様がおっしゃっていましたわね。代理ということはギルド長として信用に足る人物がいないか、何らかの理由で出席することができないかということですか。まあ、わざわざ王様自身がこちらへ赴かれているということは前者でしょうが。
「…緑の国ウォレストのギルド長ウォレス。」
この部屋に入られた時から気になっていたこの方。なんと全身鎧なのです。室内なのに。息苦しくないのかしら?カルチャーショックの再来ですわね。ウォレストの国は緑豊かな国ということだけ知られていて、この方のように謎に包まれた国。機会があれば視察と称して観光にでも行ってみたいですわ。
「あれ?そういえばあとのお二方は?協定違反なのではないですか?」
わざとらしく首を傾げるヴェル様。ギルドとは元々まとまりのなかった国々を一つの組織としたもの。これらの国々をまとめて同盟国と呼んでいます。八か国の同盟国が集まりそれぞれ助け合い、平和と繁栄を築いていくのを約束し合い合った国々です。それらの約束を協定として、破ったらまあそれなりの覚悟が必要ですね。このギルド長会議もこの協定に記されており、今回の会議はそれに当てはまるのです。ですから、普段大雑把にしている会議であっても、今回はみなさん真面目に来られているのです。
「お二方とも特例で欠席すると伺っております。この会議が終わり次第連絡いたしますので、ご心配なく。」
「よかったよかった。では、会議の趣旨を話してもらってもいいよね?アルデヒドのギルド長さん」
「ええ。では…」
…やっと、会議を進めることができますわ。そして時には質問もはさみながら話すこと数十分。みなさん先ほどとは打って変わり真剣な面持ち。最初に口を開かれたのはルーカス様でした。
「……まさかとは思ったが、話を聞く限りほぼ間違いないだろう…。魔王が…姿を現した」
「ああ。だが、それだけではないだろう。これは我々に対する宣戦布告とみてよい。この先戦争を仕掛けてきてもおかしくはないな。」
「だが、腑に落ちんことが何点かある。我々も調べてみよう。曖昧な情報は混乱を招くだけだ。このことはトップシークレットだ。」
古株のお二人の会話を聞き、うなずく方々。まだ情報が不足しているということもあり、会議はここでおひらきということになりました。
「情報は共有し合おう。分かったことがあれば、私に。それでは…」
「少しよろしいでしょうか。」
会議終了の言葉を遮り、私は姿勢を正しました。
「今回の会議の趣旨とは関係のない話かもしれませんが、少しお聞きしたいことがありまして。みなさまは黒いマントの男についてご存知でしょうか?」
「ああ。確か道中貴族を襲う盗賊だと。それが何か?」
「いえ。少々気になるものですから。みなさまほどの方ならなにかご存じではないかと。」
「誰もその顔は見たことがなく、黒いマントに身を包んでいることと男であるってこと以外は謎。けっこう国際的に動いているから、多分もうすぐ国際手配になると思うよ。狙った獲物はすべて殺しているってこと、そいつがそこら辺にいそうな夜盗と一緒に行動していることから騎士団も手を焼いてるんだってさ。だから、どんな能力、どんな属性を持っているのかもわからない。もし生き残りがいたってなると、結構有力な手がかりになるんじゃないかな?まず、それを探してみることから始めたら?」
さすがヴェル様ですわね。知りたいことを的確に教えてくださいましたわ。それにしてもこの方の表情といい言い回しといい、まるで私がその生き残りであると言っていらっしゃるよう。この方を少々甘く見てましたわね。気を付けましょう。
黒いマントの男の情報はほぼないと言っていい。これさえ分かれば十分な収穫です。