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私について

 さて、自己紹介がまだでしたわね。私の名前はアルーシャ・シャーロット。親しい者からはアルと呼ばれていますわ。シャーロット公爵家の第一令嬢でございます。なかなか高い身分でしてよ。そしてここから少し別の話。私はなんと前世の記憶というありきたりなものを持っております。それに気づいたのは三歳の時。その頃やんちゃだった私は木に登って落ち、それがきっかけで様々なことを思い出しました。まぁ、それが普通の人と違っていることでしょうか?


「アルーシャお嬢様。失礼いたします」


今私は自宅謹慎中。すべての判断はご当主であられるお父様が握っていますので、今はそれ待ちということです。


「紅茶をお持ちしました。今日のおやつはお嬢様のお好きなケーキでございます。」


この子の名前はエリ。私が小さい時に買った少女。前世の記憶が戻ってすぐ、思わず家を抜け出したところ倒れていたエリを見つけたの。エリは奴隷のように扱われていたので、持っていたお金をそこの主人に全部あげてエリを家に連れて帰りました。もちろんお父様からこっぴどく怒られてしまったけれど後悔はしてませんわ。……名前を前の記憶に引っ張られてつけてしまったのはちょっと後悔していますが、本人が気に入っているのでよしとします。


そんなエリにありがとうと微笑み、紅茶を1口。久々のエリが入れる紅茶はとてもおいしく、上品な味。そしてケーキを切り分けて口に入れます。これこそ至福のひと時ですわね。


「………………許せません。」


短かった髪を今では二つ分けて三つ編みをし、メイド服に身を包んでいるエリを見ます。そして驚きました。いつもはあまり感情を露にしないエリが目の前で怒りをあらわにしていたのです。端麗な顔立ちのこの子が怒ると他の方が怒るより迫力がありますわねと、私は冷静に紅茶を口に含みました。


「なぜ事に全く無関係なお嬢様が婚約破棄及び学園追放されないといけないんですか!? 横暴です!!」


目を吊り上げて怒る顔は前世の私の妹と重なりました。実は絵里(エリ)というのは前世の妹の名前。最初見た時驚きました。瓜二つなんですもの。


「横暴でも相手は王族。しかも他国の王族もいる中でそんな痴態は晒せないでしょ?」


「それでも! ………お嬢様が背負われる必要はなかったのではないかと思います。」


納得がいかないという顔に思わず微笑んでしまいます。ようやく私の居場所へと戻ってきたのだとほっとしますわ。


「ふふっ。ありがとうエリ。」


「それにキュリオス様もキュリオス様です!! 何故従兄妹であるお嬢様をお庇いにならなかったのでしょうか!」


その言葉にあの時の彼の顔が思い浮かぶ。明らかな嫌悪の感情を向けられ、最後まで他の取り巻きの方々と共にその感情を崩すことはありませんでした。


「…………あの方は、エリザ様にご執心でいらっしゃいますから」


「あんなろくでもないご子息早く廃嫡されればよろしいのに…………お嬢様の前での不適切な言葉。まことに申し訳ありません」


私がわざと眉を上げると謝るエリでしたが、あくまでも前半の言葉を撤回する様子はないようです。


「シャーロット家のほうが身分が高いとはいえ従兄妹のお兄様よエリ。それに口が悪いし、せっかくの可愛い顔が台無し。私は貴方の楽しそうな顔が一番好きなのよ。」


「………はい。申し訳ありません。ですが、お忘れにならないで下さい! 私達はいつでもお嬢様の味方でございます。」


「ええ。分かっているわ。でもあまり私に縛られなくてもいいのよ?」


「私は12年前に拾われた時から貴方様のもの。貴方様の幸せ以上に喜びなどございません。」


もう何度目かになるであろうやりとりなのに、相変わらずの答えを言うエリに私は苦笑しました。


「……………ありがとう、エリ。」


「はい。ではおかわりはいかがでしょうか。アルーシャお嬢様」


にっこりと微笑むエリに私も笑いかけました。すると、エリがふと思い出したように口を開きました。


「私としたことがつい怒りに任せて、大事なことを忘れておりました。おかえりなさいませお嬢様」


私はエリの言葉にぽかんとなりましたが、エリの言葉に今までの疲れが一気に吹き飛びました。


「ええ。ただいまエリ」


そしてそれから30分後にお父様からの呼び出しがかかるまで、楽しくエリと談話をしました。


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