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突然の客人

その婚約パーティは2ヶ月後。それまでに終われないといけないことは沢山あります。そんなバタバタな時に必ずと言っていいほど、面倒ごとは舞い降りてくるのです。



☆☆☆☆☆☆



今日はいつもの通りお嬢様のお側で仕事をし、おやつと紅茶のおかわりをもってこようとした時。えらく裏門が騒がしいので、私はまずそこへと向かいました。


ここギルドの建物の表は一般用入口なのですが、裏門はお嬢様であるアルーシャ・シャーロット様へ用がある方専用入口。そこが騒がしいのはメイド長を任せられている身としてはいただけません。


「だから言っているだろう! アルーシャを出せと!! 俺を誰だと思っている!」


顔を拝見した途端吐き気を催しました。その方はなんとまあお嬢様を傷つけたあのおダメ従兄妹のクソお兄様ではございませんか。何故貴方は連絡なしに他人の家しかも自分より位の高い家へ無理やり入ろうとなさっているのでしょうか?まったくこれだからダメ従兄妹(以下略)は。ですが、このまま放っておくわけにはいかないでしょう。それに対応をしているあの子が可哀想です。


「申し訳ございません。こちらは貴族用入口。ギルド長が認めた方でないと入ることが出来ないのです。用があるならば表からどうぞ。」


私はあの子に持っていたティーセットを渡しながら目で合図し、お嬢様にこのことを伝えるように言いました。


「俺に平民たちと同じようにしろというのか!? この無礼ものめ!」


無礼なのはどちらなのでしょう。………おや?もう1人いらっしゃいますね。キュリオス様と同じ金髪で少し面影はありますが、この方は緑色の綺麗な目をしておられます。怒鳴り散らし放題のキュリオス様のお隣でオロオロと今にも泣き出しそうな顔をされています。小さい頃のシュウを思い出しますね。………今とあまり変わっていないのは気のせいでしょうか。


「おい! 聞いているのか!! 俺を誰だと思っている! まったく。だからアルーシャのやつのところへ行くのは嫌だったんだ!」


…………" やつ"?かなり腹が立ちました。


「……失礼ですが、貴方様はどちらのご貴族様でございましょうか?」


「俺の顔を知らんとはなんとも無知な。ここは召使いの教育もできていないのか。俺はキュリオス・キャンベル様だ。分かったらそこを通せ!」


私を押し退けようとなさったので、私はその腕をつかみ、再びこの方の前に立ちふさがります。


「なっ!? 無礼な!」


「申し訳ございません。ですが、キャンベル家の次期ご当主様になられるキュリオス様でいらっしゃるというのに側近一人見当たらないというところにいささか疑問があるのですが?」


「なっ!? お、俺が偽物と言うのか!?このっ!! お前などここで切り裂いて…………」

「なんです、騒々しい。」


凛とした声でこの場を制されるのはこの家の客人リリー様でございます。私は一礼をしました。


「申し訳ございません。」


すると何を勘違いしたのかこのクソは下卑な笑いを私に向けます。


「おば様お久しぶりです。」


リリー様はキュリオス様を一瞥して、


「アルーシャの所へ行くのでしょう?私に付いてきなさい。」


とスタスタと歩き出します。その綺麗な後ろ姿に思わず見惚れそうになりますが、私はメイド。一礼をして見送りました。すると、キュリオス様のお隣にいられたお方はとてとてと何故か私の方へ来て


「………お兄様がごめんなさい。」


とお辞儀をされました。


「おい!何をしている!グズグズするな!」


とキュリオス様が怒鳴られ、慌てて行ってしまわれました。あのお方………確かルートゥ様でいらっしゃったか。なんともまあ、同じ親から生まれたととてもじゃないけど思えない。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



エリが紅茶のおかわりを持ってきますと部屋を出てしばらくすると、慌てたようにノック音がし、入ってきたのは新しく入ったばかりの子。


「お、お嬢様!!あの、キャンベル家の次期ご当主様とその弟様がいらっしゃいました。」


……………ん?


「キュリオス様とリートゥ様がこられたと?」


「は、はい!今玄関の方でエリさんが私の代わりに対応を………」


よりにもよってエリですか…………。何かやらかさなきゃいいけれど……。まあ、エリだから大丈夫ですね。それにしても何の用かしら?そんな連絡なかったと思うのだけれど……。


考え込んでいると、上品なノック音がし、おばあ様とキュリオス様とリートゥ様が入ってこられました。


「アルーシャ。お客様ですよ。」


「おばあ様、わざわざ申し訳ございません。客人にご案内などさせてしまい……」


「いいのよ。エリが大変そうだったから。私も暇だったしね。」


そう言って退出されるものと思っていたのですが、ニコニコと部屋の隅に立たれたおばあ様。


「お嬢様。エリ、アイサ以下並びに4名入ります。」


と、エリといつもの5名が入ってきました。…………ん?私呼びましたっけ?みんな私たちを囲むように部屋の隅に並びました。………ん?なぜ武器をそれぞれもっているの?………みんな殺気を出すのはやめなさい!


「アルちゃん、入るわよー」


なんとまあ、お母様まで。部屋はぎゅうぎゅうです。


「…………それでキュリオスお兄様。今日は一体なんの御用で来られたのですか?」


私は本題へとうつります。早くこんな状況から抜け出したいのです。


「…………………父上が連絡されているはずだが?」


………バグータ様からですか?そんなもの来ていませんが。


「まあいい。」


いえよくありませんが。


「父上から休暇をここで過ごすように言われたのだ。お前の住処に行ったが、誰もおらずこんなところまで来てしまった。ですが、おば様とフラー様にお会い出来たのはとてもよかった。」


………………はい、何もわかりません。と言うより、それはバグータ様よりも実際にやっかいになるキュリオス様が連絡を送るべきなのでは…………?


「………エリ。あっちの屋敷の余り2部屋の清掃は?」


「はい、出来ております。」


流石優秀な子。ニッコリと微笑む。


「それではキュリオス様とリートゥ様をご案内差し上げて………」

「おい、アルーシャ。こいつは礼儀がなっておらん。躾なおしておけ。おい、赤毛。お前が案内しろ。」


エリに顔をしかめたキュリオスお兄様は近くにいたアイサを連れて部屋から出ていこうとされふと、自分に付いてこないリートゥ様に気がつきました。


「おい!リートゥ!!ぐずぐず………」

「あ、あの!!」


ずっと黙っていらっしゃったリートゥ様は緊張され、がちがちでした。


「リ、リートゥ・キャンベルです。お久しぶりです。アルーシャお姉様!!」


その様子はまるで小さい頃のシュウでした。思わずくすっと笑って


「はい。お久しぶりですね。元気そうで何よりです。リートゥ。」


と言うと、ぱぁーっと笑顔になりました。


「お姉様もお元気で良かったです!それに…………あの…………さらにお綺麗になられました…」


顔を真っ赤にして言うリートゥが可愛くて、ウィルもこんな時期があったとふと思い出しましたわ。


「リートゥは大きくなって。挨拶もきちんと言えますのね。すばらしいですわ。」


私の言葉に更に笑顔になるリートゥ。


「おい!リートゥ!もたもたするな!」


キュリオス様がいらいらとした様子でリートゥを呼ぶ。リートゥは思い切ったように私の方を見て、


「あ、あの!アルーシャお姉様はいつもどこで寝ておられるのですか?僕……あ、私お姉様にギルド長のことや商業ギルドのお話について聞きとうございます。なので、お姉様と同じ建物にいとうございます!」


と叫んだ。それに驚いたのは何故かキュリオス様です。


「………は?リートゥ。お前何を言っている。商業ギルドにギルド長? そんなものこいつに聞いてどうする?」


おや?キュリオス様はお知りになっていない?次期当主であるキュリオス様が何故でしょう。私のことはごく一部の人間しか知らないとは言っても、従兄妹であるキュリオス様は知っておられると思うのですが…………。


「えっ? お兄様、父上がおっしゃってたではありませんか。お姉様のところで勉強しろと」


可愛くこてんと首を傾げるリートゥ。


「だから、何故それと商業ギルドが………」

「ギルド長はお前の目の前にいるアルーシャ・シャーロットです。この部屋にいる時点できづかなかったのかしら? 商業ギルドはこの子が作ったものなのですよ。いくら極秘にされているとはいえ、キャンベル家次期当主ともあろう者が知らなかったのですか?」


おばあ様の鋭い声が部屋に響く。キュリオス様は驚いたように私を見る。


「お、お前が………?」

「ギルド長である前に、シャーロット家公爵令嬢にお前とはなんです?先程から思っておりましたが礼儀がなっていないのではありませんか?」


今度はお母様の鋭い声。私でもビクッとなりそうになるほど迫力がある。


「………も、申し訳ございません。では、失礼します。」


気まずいような顔をして、アイサの案内で外へ出るキュリオス様。…あーこら!武器を光らせないの!


「…………アルーシャお姉様。ごめんなさい。僕お邪魔でしたか?」


そんな中泣きそうな顔で私を見るリートゥ。キュリオス様はともかくリートゥは私との休日を楽しみにしていたようです。


「いいえ。来てくれて嬉しいわリートゥ。」


私が微笑むと、リートゥも嬉しそうにニコッとしてくれました。

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