婚約披露宴パーティにご招待
「お母様におばあ様!? どうしてこちらに。」
「どうしてって、アルちゃんに会いに来たにきまってるじゃない! ね、お義理母様♪」
上機嫌のお母様。
「ええ。愛する孫娘にね! あらやだアルーシャますます美人になったんじゃなくて? フラーに似てきたわねー」
「嫌ですわお義理母様! お義理母様に似てきたんですよー」
仲睦まじい嫁姑。あらいけない。紹介しますわね。
こちら我が家の奥様でいらっしゃる私の母、フラー・シャーロット様。とても端麗な顔立ちに淡いブルーの髪のお母様は社交界では『魅惑の青い薔薇』と呼ばれるほど有名で、花形でいらっしゃいます。
そしてこちらがおばあ様のリリー・シャーロット様。この方はお母様の前の代の社交界の花形でいらっしゃり、その淡いブロンズの髪で社交界に名を馳せていたと言われています。
そんなおふたりがアレスタへ来られるのは分かりますが、何故そうもうきうきはつらつなのかは分かりません。
「だから貴方に会いに来たのよ。商業ギルドの新製品なんて、すでに頂いていますもの」
さらりというおばあ様。おばあ様とお爺様がご結婚なさる時多くの男性がむせび泣いたとかというのを聞きました。しかし、こうして花形の座から引退をなさった今でもおばあ様は男性から贈り物を頂いています。…………商業ギルドの新製品を贈り物に頂くおばあ様って……。改めておばあ様の凄さがわかりましたわ。
「そうよ! 全く、ルドったら私とお母様がいない間に勝手に話をすすめちゃうんだもの。嫌になっちゃうわ!」
ルドルフ・シャーロット様。お父様のことです。お母様とおばあ様はお友達のところへ海の向こうへと旅行に行かれて、つい先日戻ってこられたようです。
「そうね。全く。そんなところグレゴリオにそっくりだわ。」
グレゴリオ・シャーロット様。私のお爺様のことです。
「大事な一人娘を辺境の地だったところへと送るなんて!! でもあなたすごいじゃない。アレスタすごい評判よ! 商業ギルドも貴方が作ったのですって?」
「ええ。ですがお母様、そのことは社交界では…………」
「分かってるわよ。貴方は謹慎中の身ですものね。そうそう今日はその話もしにきたのだったわ!」
そう。アレスタも商業ギルドの名前も表にでているのですが、私の名前は伏せてあるのです。あくまでも私は謹慎中の身。表に名前が出ることも、私の姿が表に出ることも禁じられています。
「王妃様が貴方に是非今度のパーティに来ていただきたいのですって」
…………………へ!?
「ま、待ってくださいお母様。私、今謹慎中ですよ!?」
「知ってるわよそのくらい。でも貴方何もしてないんでしょ?それに王族に貸しを作っちゃうなんてさすが私とルドの娘。」
「ふふふ。そして私とグレゴリオの孫娘ね。流石に謹慎中の身とあっても王族からの…しかも王妃様のじきじきのご招待よ。断るわけにもいかないでしょう?」
そ、そうですが……………。私は渡された手紙を開く。確かに王妃様の名前と王家の紋章…………ん?
「お母様、これって……………婚約のお披露目パーティってことですか??」
つまり婚約破棄された私がその相手の婚約パーティに来いというもの。
「………………………ちょっと見せてご覧なさい」
お母様とおばあ様は私の手から奪い取った手紙をお二人でまじまじと見ています。それはもう鬼の形相で。
「……………ふぅ。王妃様も何考えているのでしょう。」
「あの方のことだから何かお考えがあるのでしょうが……これはあんまりですわねぇ。」
…………あぁ、そのお姿を見てわかりました。お二人は私が心配で来てくださったのです。旅行で疲れているだろう体でここまで馬車を走らせてきてくれたのです。
「お母様、おばあ様。私そのパーティに参加させていただきますわ。」
私はもう心配いらないとばかりにめいいっぱい微笑んだ。