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旧作品群

ハイビーム

 サぁ――――、と流すようにして、澄んだ夜の空気を切り、自転車で疾走する。

 や、ただ家に帰っているだけなのだけれども。


 陸上部の先輩と、カラオケに行った帰り。同級生に一六歳がいたから七時に追い出されて、そのまま解散。自転車で一五分の場所にある僕の家までは、白木丘池の畔を十分、そのまま踏切を超えて五分。

 池の畔は、アスファルトで舗装されているものの、街灯すら立っておらず、正直、自転車のライトくらいじゃ心許ない。

 別に怖いとかじゃないけど。怖い話とか超好きだからむしろ暗いところ興奮するんだけど。


 じゃあ何が心許ないのかと言えば、溝だ。


 池の畔には当然柵が立っていて、立ち入り禁止になっているのだが、なぜか柵から道路を挟んで反対側にある溝のところに、柵がついていないのだ。おまけに道幅も細いものだから、うっかりしていると滑落する。骨折が二回、捻挫が一回、打撲が数えきれない回数……、いや、別に落ちてないよ。落ちてないの。

 と、自分に言い訳しながら通るのが通例となるここは、普段より三倍増しで気を付けながらペダルをまわす。

 気を付けて気を付けてビーケアフォー。英語の発音は中学校の時に矯正されたから自信あるけど、何も常に「th」に気を付けたり「v」で下唇を噛んだりするわけではない。

 そんなどうでもいいことを考えつつもビーケアフォーで、畔を通過する。学校の帰りだと毎回引っかかる踏切も、この時ばかりは大人しい。


 踏切を渡るときに、後ろから迫る光があった。


 乗用車のライト――ハイビームだろう。なんだってこんな張り切って光っていやがる。眩しいでしょうが。



 しばらく走って、おかしいと思うようになった。


 ハイビームが、ついてくる。いやまあ、僕と帰る方向が同じだという可能性も否定できないのだけれど、僕の家は複雑な曲がり角の奥まった行き止まりにあって、それこそこんなところまで来る車はめったになかったり……

 特に気にも留めなかったから、振り向いたりもしなかったのだけれど、家まであと一分というところになって、さすがにおかしいと思って振り向いてみた。

 ハイビームは依然僕の後ろをついてくる。


 でも。振り向いて見た背後には、ただ闇に染まるアスファルトがあるだけだった。


  

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