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おない年の兄妹  作者: 沙悠那
PEACH SMOOTHIE
8/66

Episode8 どうして……

 祥大は腕時計を覗くと「これからバイトがあるんだ」と言って席を立とうとする。

 あたしは晴哉くんからたくさんの質問を浴びせられ、それに答えるので精一杯だった。

 うっかり珍答とかしたら家に帰ってから、おもいっきり祥大にバカにされるのが分かっていたから。慎重に言葉を選んで答えていた。

 晴哉くんがあせったように、あたしに携帯の番号とメアドの交換を要求してきた。

「とりあえず晴哉おまえのを教えとけば? 彼女にも選択の権利はあるわけだし」

 そんな風に祥大が助言している。助け舟のつもり? 晴哉くんは確かにイケメンだったけど、強引につっぱしりそうなタイプだったし、メールや電話攻撃されそうなのはなんとなく予想がつく感じだった。

 駅までの道、あたしは有未香と、祥大は晴哉くんと並んで歩いていた。

「切符買わねーと。あれっ? もしかしてみんなプリカ? だっせ俺だけかよ切符買うのって。ちょー待ってて」

 そういいながら晴哉くんは券売機のほうへ走っていった。

 改札を入るとあたしだけが、有未香たちとは反対側のホームだった。祥大は有未香を送るだろうし。

「晴哉がいちばん先の駅だったよな。有未香わりい。俺バイト遅れっからこっちいくわ。晴哉、途中まで有未香のことを頼むな」

 そういうと祥大は、あたしとおんなじ階段のほうに歩き出そうとしている。

「じゃあ、瑠花、また来週」

「うん、バイバイ」

 晴哉くんにも手を振って祥大の後に続いた。

 有未香と晴哉くんを乗せた電車は、あたしたちと反対方向へと進んでいく。こっちのホームにも電車がまもなく到着しますとアナウンスが流れた。

 なのにどうしてか祥大はあたしの手を掴んで、もと来た階段のほうへと引き返そうとする。

「ちょっと、どこ連れてくのよ。電車くるじゃん、乗れなくなっちゃうよ」

 無視して強引にひっぱっていく。祥大なに考えてんの? あんたバイトはどうすんの?

 言葉を口にさせてもらえないほどにひっぱっていかれる。手痛いよ、祥大。

 ぐいぐいと強引な祥大がやっと足を止めた場所は、さっきまで居たカフェだった。どういうこと!?

「この、季節のミルフィーユショコラフォンデュ添えってのを4つ持ち帰りで」

 入口のレジ横にあるケーキのショーケースを指して祥大が注文していた。これからバイトあるくせに何してんの。だけどあたし……。

「はいっ、おまえが持てよ」

 ぶっきらぼうに祥大があたしにケーキのはいった紙袋を手渡してきた。

「なんで……わかったの?」

「おまえドリンク頼むときに、ドリンクのメニュー見ずにあのケーキの写真ばっかみてただろ。バイト代はいったしおごってやるよ」

「4つも食べていいの?」

「ばーか。家族4人分だろ」

 あたしの頭は祥大のおっきな手で覆われてた。

「祥大バイトは? 遅れちゃうよ」

「今日はバイト、はいってない」

「え? うそついたの」

「うそついた。晴哉必死だったし、ああでも言わねーとおまえも疲れるだろ」

 祥大、あたしに優しくしちゃだめだよ。いつもみたいにムカつかせてよ。

「晴哉のやつさ、おまえのこと超可愛いってさ。ぜってー彼女にするんだって言ってたぜ。おまえはどうすんの?」

「どうしよっか。祥大どう思う? メールしたほうがいいのかな?」

 祥大が決めてよ。あたしは決められないから。

「おまえがどうしたいかだろ。俺に聞かれてもわかるか」

 冷たいんだね。

「じゃあ、メールしてみようかな」

 そうだよね、祥大には有未香がいるし、わたしたち兄妹なんだもんね。

「メールすんの。晴哉のこと気にいったんだ」

 じゃあどうすればいいのか教えてよ!

「だって……」

「俺は瑠花のこと好きだよ」

「またぁ、からかおうとして!! 兄妹としてでしょ」

「俺は瑠花が好きだ。兄妹としてじゃなく」

「だめでしょ。あたしたち戸籍上の兄妹なんだよ。だめに決まってるじゃん」

 祥大が息を噴出して笑っている。なにがおかしいっての!

「おまえ本気でそう思ってんの? 俺の戸籍はおまえとは違うよ。苗字を変えただけだって。それに血縁ないんだから結婚だってできるんだぜ。知らなかったの?」

 そんなの知らないし、なによその過激な発言。

 祥大にこんな風に告白されて、あたしたちこれからどうなってくのかな。

 有未香はあたしの大切な友達。傷つけるわけにはいかない。


 どうして、あたしたち出逢ってしまったんだろう。

 どうせならもっと別の出逢いかた……したかったよね。



*** PEACH SMOOTHIE * end ***




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