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おない年の兄妹  作者: 沙悠那
PEACH SMOOTHIE
7/66

Episode7 運命の悪戯


 とうとう今日は金曜日。

 有未香の彼氏から遠海学園の男の子を紹介してもらう日。

 朝からそわそわして落ち着かない。授業なんて聞いているのかどうなのか、わからない感覚でペンだけノートに這わせている感じだった。

 6時限目の授業中、携帯がブルって有未香からメールが届いた。

『瑠花~もうすぐだよ~緊張してきたぁぁ』

 絵文字いっぱいのメールだ。

『なんで有未香まで緊張すんの』

『なんでかな。なんとなく』

『はあー、意味わかんない』

『瑠花は?』

『それ聞く? めっちゃ緊張だよ』

 こんなやり取りを授業の間じゅう繰り返していた。




 待ち合わせは街なかにあるカフェで。

 あたしの住んでる町って、田舎に毛が生えた程度のものだから繁華街ったってしれている。このあたりでいちばん若者らしい街にカフェがあった。だから学校が終わる時間あたりから、カフェは席取りのために修羅場化する。

 そのことを承知していたあたしたちは、学校が終わると即効でカフェへと向かった。約束の時間まではまだ30分以上あった。とりあえず席は確保できたので、あたしも有未香もほっとしていた。お水が運ばれてきてメニューをもらった。そのころあたりからまた緊張がぶり返してきた。

「どうする? 先にドリンクたのんじゃう?」

 有未香があたしに意見を請うてきた。

「どうしよう。お水あるし待ってようか」

「そだね」

 ふたり同時に水の入ったグラスに手をやった。

「なんか緊張すると妙に喉かわいちゃうね」

 有未香はグラスの水を飲み干してそう言っている。

 あたしは有未香の彼氏とも初対面だし、もっと緊張しているよ。どうしよう……。

 帰りたい……。祥大……。

「あっ。きた! あそこっ」

 有未香の指差す方向をみたけれど、このカフェってば無駄に広いし、立って席をさがしている人とかもいて、よくわかんない。

 有未香がどこにいるかわからないあたしたちの所在を探している彼氏を迎えに、店の入口のほうへと歩いていった。あぁ、ほんとうに緊張してきた。


 暫くして有未香が戻ってきて後ろには遠海の生徒がいるらしかったけど、店員が横切って制服が僅かにみえるだけ。どうかかっこいい人でありますように。最後にもう一度願掛けしてみた。

「そっち座って」

 有未香がそういっているけれど、あたしの脳内はとてつもなくパニックになっていた……。

 どっちが有未香の彼氏? ねえ、どっち?

 有未香が自分の目の前に座る遠海の生徒を手で示して言った。

「こっちがあたしの彼氏の田中祥大くん、それでこの子があたしの友達の田中瑠花ちゃん。あれ? そういえばふたりとも田中って、おんなじ苗字だったね。まあよくある名前だから不思議はないか」

 祥大!! なんであんたがここにいるのよ。あたしは祥大の目を見て目でしゃべりかけていた。

「ああ、こいつさ……」

 祥大のつれてきた友達がそう言いかけた時、カタンッて硬いフロアに何かが落ちる音がして話がさえぎられた。

「あっわりい。晴哉(はるや)それ拾って」

 祥大がすかさず言ったけど、あたしはちゃんと見ていた。わざと机に腕を這わせて携帯を落としたのを。

 それってあれでしょ。苗字が変わったことを言わせないためでしょ。

 友達は知っているの? おない年の兄妹ができたこと?

 有未香には知られたくないからなんでしょ?

 あたしたちはお互いに知らないふりを続けた。ここで真実をうちあけてもどうしようもない。そうしたって待っているのは、まわりを不愉快な思いにさせることだけ。そのことをお互いにわかっていること。

 だけど祥大は有未香を守りたいただそれだけなんでしょ。だったらあたしもこのままだまっててあげるよ。

 祥大がつれてきてくれた友達は、有未香がお願いしてくれた通りに美形の男の子だった。名前は『木本晴哉』くん。彼も紹介を期待していたのだろうか、終始テンションが高かった。あたしは祥大以外の人と恋愛するために、かっこいい人を紹介してもらえるように間際まで祈っていたはずなのに、その通りのことが起こっているのに、ちっとも嬉しくも心がどきどきすることもなかった。

 ただ別の意味で心が騒がしいだけ……。


 目の前にいるのは、

 友達の彼氏……

 あたしのおない年の兄妹……

 あたしの愛しい人……祥大




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